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騎獣転生  作者: 赤月 朔夜
第02章 護送任務
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第008話 試乗会

「試乗してみますか?」

「お願いします」


 ジナルドが口笛を吹く。その指示に従って立ち上がる。

 大人しく鞍を付けられた後、緑髪が私の上に乗った。馬に乗り慣れた人なのか動きが軽やかだった。

 緑髪の操縦に従って軽く庭を駆けてからジナルドたちの元へと戻る。


「馬よりも速く小回りも利きますね。乗り心地も良くてうちにも欲しくなるくらいです」

「ルセルリオでも育ててみますか? 上からの了承がもらえれば育成のコツなどお伝えできることはお伝えしますが」

「また落ち着いた時にでも上に提案してみます」


『この前お借りしたゴルフクラブ、とても使いやすかったです』

『それは良かった。今度一緒に買いに行きませんか? クラブ選びのコツなんかもお話できると思うので』

『家内に相談して許可をもらえた時にはぜひお願いします』


 ジナルドたちの会話を聞いて、前世で本社の人が支社にやってきた時にしていた世間話を思い出して何だか懐かしくなった。

 いい職場だったなぁ。みんな元気にしてるかな。


 それはそうとして、緑髪は満足そうだった。

 私の気分も良くなる。


 騎手を気遣ってあまり揺れないようにしているし出された指示にもすぐに反応している。

 急停止も急発進もしない。

 少しでも信頼して欲しいからね。


 私としても手綱の扱いや乗り方が安定していて乗せて安心できた。

 乗り慣れてない人や緊張している人なんかは乗り方もぎこちなくて心配になるんだよね。


 乗り方が分からないなくて緊張しているならともかく、本当にこいつは大丈夫なのかと疑われながら乗られるのはあまりいい気分じゃない。


 その点、彼はこちらを信頼して体を預けてくれていることが分かる。

 ガルたちはどうか知らないけど私は嬉しい。


「じゃあ次は俺が乗ります」


 茶髪の腕前はというと平凡な感じだった。彼からはやや戸惑いを感じた。

 ガルかギルなら振り落としていそうだ。グルなら我慢してくれそう。

 若い人だし騎手としての経験がまだあまりないのかもしれない。


「馬と比べて違和感はありますが乗れないことはないです」


 まぁ乗り心地は違うだろうね。


「では私も」


 金髪を背中に乗せる。茶髪よりも戸惑いが少なく乗り方も上手かった。でも緑髪ほどではない。

 走らせ方は普通で基本的な指示を試したりというくらいで、茶髪のようにスピードを出してみたりということはなかった。


「私も試してみて良いですか?」

「えぇどうぞ」


 執事さんはすぐに私に慣れて緑髪と同様に乗り方が上手かった。


 彼が私に乗るシーンは第三者視点で見たかった。きっとカッコいいはずだ。

 いやでも、執事服と恐竜は合わないかな?

 鎧でなく服であることもあって彼は軽かった。


「言うことを良く聞いてこちらを気遣った走りをしてくれるのでとても乗りやすかったです」


 そう言って執事さんは私から降りて私の体を撫でた。


「レクシス様はどうされますか?」


 ジナルドはエルフさんに問いかけた。様付けで呼んでいるということはジナルドよりも立場が上の人なのだろうか。


「可能であれば乗ってみたいです」


 レクシス様の声を聞くに男性のようだ。その声は声優の梓川あずさがわ 隼人はやとさんのように聞きやすくてかっこいい。

 執事さんの声も素敵だけどレクシス様の声が1番好みだ。

 あくまでも5人の中ならね。


 もっと声を聞きたいなと思っていると彼が私の上に乗った。


 いや軽いなレクシス様。まるで羽のような、という形容詞が頭に浮かぶくらいに軽かった。

 そして彼の腕前はというと普通以上ではあるという感じだった。金髪と同じくらいで緑髪と執事さんほどではない。


 そんな感じで5人を乗せて走った後にジナルドは果物をくれた。


「当日はよろしくお願いしますね」


 驚いたことに執事さんは私に近付くとそう言って微笑み体を撫でてくれた。


「ククッ」


 なので私も了解という意味を込めて鳴いた。


「返事をしてくれましたよ」

「『分かった』そうです」


 執事さんが嬉しそうにジナルドに言うとジナルドも私の体を撫でながら翻訳してくれた。


「偶然でしょう?」


 疑わしさと見下したような、若干バカにしたような声音が聞こえたのでそちらを見ると嘲るように口角を上げた茶髪の顔が見えた。


 イヤな感じ。

 でもそれくらいで怒ったりはしない。

 言葉が通じ過ぎていると不気味がられるかもしれないからね。


「偶然かもしれないが偶然でないかもしれない。どちらにしても問題のある内容ではないのだから、士気を下げるような発言は止めなさい」


 緑髪に注意をされる茶髪。

 良い気分はしなかったので茶髪が注意されたことで溜飲が下がる。


 やーい、注意されてやんの。


 怒らないとは言ったけど根に持たないとは言ってない。


「あ、こいつ今笑いましたよ!」

「偶然じゃないか?」


 すっとぼけた調子で緑髪が茶髪の言葉を返す。茶髪は不満げな顔だ。


 そんな2人のやり取りを見てレクシス様が小さく笑い、金髪は苦笑いしていた。

 レクシス様が笑ったことで茶髪は少し気まずそうに頭を掻いたのだった。


 ジナルドたちが城へ戻るのを見送ってからルナの近くで体を横にする。

 とりあえず今日会った5人は探知魔法を使った時に判別できるようにラベルを付けておいた。


 これで探知魔法を使った時に彼らが範囲内に居たら脳内マップにラベル付きで表示されるようになった。

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