桜と友達 【月夜譚No.176】
彼の強運には、驚かされてばかりだ。
商店街の福引きの特賞に当たるし、欲しい商品が最後の一個だったりするし、財布を拾って届ければ持ち主から毎回お礼を貰うし……。もう一年近くの付き合いになるが、今も慣れることなく驚いてばかりだ。
まあ、友人である僕にもお零れがあることもあるので、感謝はしているのだが。
大学からの帰り道、隣を歩く彼の頭に桜の花弁が乗るのを見ながら、僕はぼんやりと考える。
ここまで強運ならば、宝くじでも買えばすぐに億万長者になれるだろうに。彼の家は決して裕福でなく、兄弟も多くて、大学だって奨学金を借りて通っているのだ。
だが、彼は決してそういった賭け事はしなかった。
強運に任せて裕福になったとしても、きっと幸せにはなれないだろうから、しないのだと彼は言う。
そんな彼だから、神様は強運を与えたのではないだろうか。
そして、そんな彼だから、僕は友達になったのだろう。凛としたその姿が、とても恰好良かったから。
「どしたの? 行くよ」
いつの間にか立ち止まってしまった僕を振り返って、彼が手を振る。
僕は笑って駆け寄り、彼の頭の桜を指で摘まんだ。