1話 【黒い炎】
こんにちは!
この話から祓魔師編です!
亀の歩みより遅いペースで書いています!
初めましてかな!俺は工藤怜!もうすぐ卒業する中学三年生だ!
「兄さん。行くよ。」
「おう!」
声をかけてきたのは、理志。俺の三つ子の弟だ。俺は兄弟の中で一番上なのだ!
理志は賢い。高校は、聖ミナティア学園(聖学)に入るそうだ。聖学は、都内有数の進学校だ。すごいよな!・・・俺?俺は就職だ!どこか料理ができるところにでも行くつもりだ。
「兄さん。あと少しで卒業なんだから気を抜かない。」
「わかってるよ。」
次に声かけてきたのは優。こいつも俺の三つ子の妹だ。優は、小学生のころからなんか変わったんだ。何が変わったか俺はわかんねえ。でも、優だからいいかなって思ってる。それに優とこうして会えるのはもうすぐ終わりだからな。優は、関西の高校に入るんだ。確か、いんよう学園、とか言ったっけ?関西のほうだから寮に入るんだって。寮にはきっと門限とかもあるだろうから、今みたいにすぐ会うことはできないだろうな。
「「兄さん?」」
「わかってるって!」
・・・いつもと違う。何かが確実に違う。その何かがわからないけど。なんて言うんだろう、こう、心地いい?いや、重い?なんかわかんねえ!
確実に違うって言えることが一つある。それは力を出しすぎちゃうことだ。ずっと昔に制御できるようになったと思ったのに。まるで、制御できない頃に戻ったみたいだ。これじゃあ、誰か傷つけちまう。今日は何も触らないようにしないと。そうしないと全部壊しそうだ。
さあ、行かないと。2人に心配はかけられねえからな。兄の意地ってやつだ。
「兄さん本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって。心配すんなよ優!」
優は鋭い。体調が悪くてそれを隠してる時、最初に見つけるのは優だ。だからこそ、大丈夫ってわかってもらうためにいつも通りに、明るく。
「いいならいいけど…無茶はしちゃだめだよ。」
「わかってるよ。」
今日で3月。あと何回学校へ行けば卒業なんだろうな。そういえば挨拶をしてないのに気が付いた。三つ子だからか2人も同じように思い返したらしい。3人一斉に振り返って、
「「「行ってきます!」」」
この挨拶を3人そろって言うのもあと何回だろう。優も関西に行かずにここから通えるとこに行けばいいのに。そうすれば3人でいられるのに。みんな変わっていった。俺だけが変わらない。変えられないのか。この本当の親はいないけど楽しくやれている生活が楽しいからか。もし、2人が本当の親に会いたいって言った時俺はどうするんだろう。一緒に探すのか、止めるのか。いや、止められはしないか。どんどん変なほうへ行く思考をリセットするかのように自分の頬を力強くたたいた。
「兄さん!?」
「すっごい音したけど大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。」
本気の力でたたいたのに真っ赤に腫れることはなく、ほんのり赤くなる程度だった。こういうのを見ると俺自身が怖くなる。まるで化け物みたいで。もし、俺が化け物でも2人は違うといい。そう考えてしまう。本当のことはあまりわからない。でも、2人が幸せになってくれるなら俺はそれでいい。俺はずっと思ってる。2人の不幸せは全部自分のにして俺の分の幸せを2人で分けてほしいなって。唯一の兄弟たちだから。離れ離れになっても俺は2人を守っていきたい。だからこそ俺は学校に行かない。学校に行かないほうが助けに行けるだろ?
俺がそんなことを考えてると悟られると怒られるだろうから、悟らせないように、いつも通りに、明るく。
「行こうぜ!遅れるぞ!」
「ちょっと兄さん!」
「わかった競争だね!」
俺が走っていくと、優が乗ってくれる。優は誤魔化したらそれ以上聞いてこずに乗ってくれる。だから助かってる。理志は、真面目過ぎるからごまかしてくれない。たまには柔らかく考えてくれてもいいのに。優みたいに。
そこからは本気の競争になった。勝敗はいつも通り俺が一位だ。二位が優。最下位が理志。兄弟の中で一番体力がないのは理志だからな。それでも、体育とかでは活躍してんだぞ?理志も。優の体力はどこで付けたのか今でも不思議だ。俺は生まれつきってやつだな。でも、走るのは好きだぜ?本気を出してもいいんだからな。
「じゃあ、また放課後ね。兄さん。理志。」
「うん。姉さん。」
「おう!後でな!」
この中学は2クラスしかない小さい中学だ。だから、優だけクラスが違う。3人一緒にしてくれたらよかったのに。
「兄さん。午前中だけしかないとはいえしっかり集中するんだよ。」
「わかってるって。」
「ほんとかな?」
そう。今は卒業前の3月。3年生は午前中で終わりなのだ。しかも、ちゃんとした授業はなし!これほどうれしい期間はねえよ!でも、どんどんと違和感が増してく。朝から感じてる違和感。わかんねえ。父さんや兄弟たちの反応を見るに俺だけが感じてるようだった。心配かけるかもしれないから父さんにも話してない。それは正解だったのかもしれない。強くなっていくなら原因があるかもしれねえ。もし、家族に何かあるかわからねえから確認しとかないとな。放課後探してみるか。午前中だけの学校だから時間はある。夕飯の準備の時間前に帰れば問題ないだろう。
よし、放課後だ。ちょっくら探してきますか。
「おい、理志。今日2人で先帰っててくれよ。」
「どうしたの兄さん。珍しい。」
「いいじゃんか!たまには。」
今いるのが優だったら誤魔化されてくれるのに。でも理志だからな~。
「一緒に行くよ。」
「いい。一人で行きたい気分なの!」
「兄さん。今日ちょっと変だよ。」
やばい。この目をした理志は問い詰めることを諦めない。言われる前に逃げる。それが最善だな。
「じゃ、そういうことで。また後でな!」
「あちょっと!…父さんに伝えとくか。」
何で父さんに言うんだろう?そこまで問題児だと思われてんのか?実の弟に!?ショックだ。こうなったら意地だ。絶対違和感の正体を探り当ててみせる!そう決意した俺は走り始めていた。もう止まれない。穏やかな楽園を壊すスイッチを全力で押してしまったのだから。俺は気づかなかった。
本気を出して走っているからむすぐ学校から出る所まで来てしまった。学校を出た時、何かが欠けた音が聞こえてきた。それがなんとなく気になり足を止めた。止めてしまった。その瞬間、空が変わった。校舎も変わっていた。まるで廃校になって数十年たったかのように荒れている。俺は訳が分からなかった。まるで俺だけが異世界に移動したかのような状況だったから。俺は走った。家に帰りたくて。でも、変わり果てた家を見たくなかった。だからあと少しのところで違う道に入った。そこまで行く道にも誰もいなかった。活気があるはずの商店街も駅前も。全部。誰もいなかった。そのことを確認するとどんどん怖くなっていった。だから、裏道に入ってすぐのところにうずくまってしまった。そこは俺だけの秘密基地だ。兄弟にすら教えてない秘密基地。せめて知っているところに居たかった。ここは誰もいないのが普通だから。俺が一人だけなのを思い知りたくなかったから。それに、何か体が熱くなっていくんだ。まるで何かが燃えてるみたいに。怖いよ。助けてよ。兄弟たちには迷惑かけられない。でも、一人は嫌なんだ。誰か、優、理志。一緒にいてよ。そばにいてよ。
俺は祈った。信じてもいない神に。俺を一人にしないでと。その祈りが効いたのか誰かが来る気配があった。俺はすがるような気持ちで顔を上げた。だが、そこにいたのは知らない人だった。しかも、人じゃない。それしかわからない。誰なのか、何なのか。何一つわからない。わかるのは、耳がとがっていることだけ。
「お迎えに上がりました。怜さま。」
その人(?)が言ったのは意味が分からない言葉だった。僕は何も答えずに黙ってそいつを見た。警戒を解いてないのをそいつは驚いてみていた。
「なぜ警戒なさるのです?同胞を警戒する必要はございませんよ。」
「同胞?俺は人間だ。」
「あなた様が?これはこれは面白い冗談ですね。」
「冗談なんかじゃねえ。」
「なるほど、教えられていないのですね。信用されてないのですね。」
そいつはそんな言葉で俺が傷つくとでも思ってんのか。痛ましそうに面白そうに俺を見てきた。
「まあいいです。教えて差し上げますよ。なので行きましょうか。」
そいつは俺のほうに寄ってきた。
「行かねえよ。」
つかまれた腕を振り払うように手を振った。
「なぜです?」
心底不思議そうに見てきた。だから、睨み返した。
「俺は帰る。お前のとこにはいかねえ。」
「帰る?あの人間どもの下へ?」
「そうだよ。」
何がおかしい。
「あなたは教えられていない。それが意味することはただ一つ。家族ではないということです。隠し事をたくさんする家族というのはおかしいでしょ?あなたが家族だと思う人間はこう思っているはずですよ。家族ごっこは大変だと。」
俺は俯いた。そんなことないってわかってる。だけど考えたことないって言ったらうそになるから。でも、分かってる。優の優しさは本心だし、理志が小言を言うのは俺が心配だから。父さんが俺に何も言わないのはきっと俺が未熟だから。だから、こいつの下へは行かない。
「さあ、行きましょう!あなたがいるべき世界は我々の世界だ。」
「……うるせえ、うるせえ!俺がいるべき世界?そんなもん俺が決める!俺の意思は兄弟たちの下にいることだ!」
「なら、その兄弟とやらを殺してきましょう。そうしたら心置きなくこちらに来れるんですから。」
そんなことさせない!兄弟たちは俺が守るんだ!そんな気持ちでいると心の中に声が響いた。“こいつが居なくなれば兄弟たちが傷つく可能性はなくなる”それもそうだなと同意した。そうしたら、突然黒い炎に包まれた。近くにいたやつにも燃え移った。俺には燃えることなくただ眺めてるだけだった。しかし、奴は黒い炎に焼かれてる時笑い声をあげた。
「アハハハハハ!御子が目覚めた!我らの時代だ!」
そう言いきったら消えた。燃えたんじゃないと思う。そして、空が元に戻った。灰色じゃなくて夕日の赤に。もう夕方になっていたのか。そんなことを考えているときでさえ黒い炎は燃えていた。俺はどう止めればいいのかわからなかった。俺には害はない。でも、近づいたら燃える。何事かと見に来た鳥が一瞬で燃えたんだ。そのことに何もうかばなかった。このままじゃ帰れねえな。どうすればいいかな。
「おや、気になって来てみればあなたでしたか。」
急に現れたなにかは奴と同じものだった。耳がとがってるからあたりだろう。俺はまた燃やそうか、そう考えた。その思考がわかったんだろう。そいつは慌てた様子で、話しかけてきた。
「ちょっと。待ってくださいよ。私は君の味方ですよ!」
「知らない奴にそんなこと言われても。」
「君、家族以外にはたんぱく過ぎませんか?まあいいでしょう。私は、ジン。ジン・フラム。どうぞお見知りおきを。」
どこかで聞いた覚えのある名前だな。
「さて、その炎を抑えましょうか。」
「消し方を知ってるのか。」
「消し方はありません。制御すること以外は。ですが外に出ないよう、攻撃しないようにする方法はあります。これに触りなさい。」
そう言って差し出したのは、黒い石だった。もともと丸だったのだろうか、少し欠けている。それに、自然にこんな石ができるのか?
「さあ!」
一定の距離から近づかないでジンは言った。そして、石を投げ渡してきた。俺が石に触れた時、黒い炎が石に吸い込まれていった。・・・これで帰れるな。
「さて、君に選択肢を上げます。このまま私から逃げるか、私につかまって処刑されるか。どっちがいいですか?」
「どっちもよくないに決まってるだろ!」
何でどっちかなんだ!
「君は黒い炎の後継者なのですよ。処刑は当たり前でしょ。」
「その、黒い炎の後継者ってのは何だよ。」
「ですが、そのちぐはぐな感じ。面白い。」
ジンは俺の話を聞いてない。面白いってなんだよ。
「いいでしょう!第3の選択肢、祓魔師になるというのも足してあげましょう!あ~!私はなんて優しいのでしょう!」
どこがだよ。お前のは押し付けだろ。兄弟たちだったらそれでも優しいと思えるがお前はダメだ。
「さあ、決めてください。あ、私のお勧めは第三の選択肢ですよ。」
そう言われて俺は真剣に考えた。まず、一つ目。これはなしだ。だって兄弟に会えなくなる。もう一つは、俺が死んでも兄弟たちが安全に過ごせるなら構わない。でもその保証はないからな、保留。もう一つは、デメリットはないと思う。メリットもないだろうけど。なら、
「わかった。3つ目のにする。」
「そう言ってくれると思ってましたよ。では、聖ミナティア学園でお待ちしてますよ。」
そう言って人は帰ろうとした。でも、聞き捨てならないことを言われた気がするから引き留めた。
「なんです。」
「俺、試験受けてないぞ。」
「あー大丈夫です。」
「でも、高校に入学するには試験を受けないといけないだろ。」
「試験を今から受けると?それこそ非現実ですね。大丈夫、私はその学園の理事長ですから。」
「そうなのか?」
「ええ。だから、今から一人増えたところで大丈夫ですよ。」
「そうなのか!」
「あと、寮に入ってもらいますからよろしくお願いしますね。」
は、は~~~!!!「聞いてない!」
「もう了承は取っているので大丈夫です。だから、次は4月2日に学園に来てくださいね。」
俺はもうどうすればいいのか考えているうちに帰っていった。断ることもできなかった。断るにしても一回聖学のほうに行かなきゃいけないってことか。
とりあえず帰ろう。心配かけてるかもしれないしな。
ばれないように、いつも通りに、明るく。
「ただいま。」
「お帰り兄さん。ご飯作っちゃった。」
「おう、ありがとうな優。」
優で良かった。もしこれが理志だったら大変なことになっていたかもしれない。
「おう、お帰り。怜、どこ行っていたんだ?」
「別にどこでもいいだろ。おい優。食べるときに呼んで。」
「うん?わかった。」
「おい!」
大丈夫大丈夫。今は反抗期だから。大丈夫大丈夫。まだ、ばれてないはず。




