23話 【次にやること】
昨日、法皇になれないことが決定した。その夜は少し泣いちゃった。だから、朝ご飯の時に父さんたちに心配かけちゃった。怖い夢を見たって誤魔化したけど。
ご飯を食べ終わって学校へ行く用意をしてる時、からすが来た。鴉は真っ白で目立つ。でもみんな見えてないかのように存在を無視するんだ。本当に見えてないから。鴉は式神だ。十二神将以上の用事に使われる式神。僕は十二神将でもないのに何だろう。鴉の足に紙がまいてあった。その紙をとると鴉が消え、人形だけが残った。そしてひとりでに人形は燃えた。
紙には、“今日の放課後学園に来ること”と書いてあった。きっと失格の知らせなんだ。でも、これが区切りだろうから行かなきゃだよね。少し、憂鬱だ。
「姉さん準備できた?」
「あ、うん。」
「じゃあ行こうぜ。」
「そうだね。」
「「「行ってきます!」」」
「おう。行ってらっしゃい。」
今は学校に集中。今の僕は小学生の僕なんだから。
はあ、放課後になってしまった。いやだな。行ったら本当に終わってしまうんだから。でも、行かないって選択肢もない。は~。行こうかな。
「兄さん。先帰ってて。」
「おう!分かった。」
「また後でね姉さん。」
「うん。」
僕は足が重く感じながら歩いていた。いつもの路地に向かおうと。そこで思い出した。その場所は兄さんたちに見つかっていたのだと。また探さないと。
そう言えば、学校の中に霊脈があったね。その霊脈をたどってどこに行くか見てみようかな。
ビンゴ!やっぱり大きな霊脈があった。行こう。覚悟はもう決まってる。
「ようこそ。工藤優君。」
「こんにちは。」
「こっちです。」
何で敬語?僕は法皇になれなかったのに。まだ報告が言ってないとか?
案内されたのはまだ一度も入ったことの無い部屋だった。その部屋はどの部屋の扉よりも豪華な扉がある部屋だった。
「ここです。」
道希さんは扉を開けて言った。まるでエスコートするように。部屋に入ってまず目に入ったのは、十二神将以上が全員いる光景だった。その次に、部屋の家具だ。とても高級そうに見えた。そして、扉を閉めた道希さんも、僕の前に並んだ。
「我ら、一同。もう一度。あなた様に忠誠を誓います。」
「我らはあなた様の盾。」
「我らはあなた様の矛。」
「我らはあなた様の手足。」
「我らはあなた様の目。」
「「我らがあなた様の下へ就くことをお許しください。」」
「我らの主としてお立ちしていただくことを我らは望みます。」
「「「「「「「「「許しを得ることができましたら、我らはあなた様を支え、助けていけます。どうか許しをくださいますようお願い申し上げまする。」」」」」」」」
「我ら陰陽師を導く」
「明星となっていただきたく。」
「「今ここに忠誠を誓わせていただきます。法皇、工藤優様。」」
「え?!」
法皇!?僕が?僕は失格したんだよ!?
「ここは許すといわないと終わりませんよ。」
コン。
「いいのか?この格好のままで。まあ、俺はおもしれえからいいけど。」
いいわけないじゃん!でも、
「さあ!」
ああ~もう!
「ゆ、許す…?」
「「「「「「「「ありがとうございます。」」」」」」」」
「あの、何で法皇になれたんですか?」
「敬語を。」
「君たちが辞めたらやめます。」
「…全員が賛成したからだ。君が法皇になって変わっていく陰陽師を見てみたいと。」
「そっか。」
嬉しかった。だってだめだと思ってたんだもん。
「ここは法皇の部屋。今、この瞬間から君部屋だ。」
僕って本当に法皇になったんだ。そんな実感がわいてきた。その時、何かの声が聞こえた。こっちに来てと。その聞こえたほうに目を向けてみると丸い石があった。その石は黄色で自然にはできないような石だった。僕はその石に触れなくちゃいけない。そんな気持ちがあふれていった。
「優君?」
呼び止められたのにも気づかないほど頭が回らなかった。ただ、その石に触らなくちゃ。その気持ちだけが頭の中にあった。
その石を持った時、青い光が放った。炎のような氷のようなそんな青だ。光が収まった時、手の中にあったのは石じゃなかった。それは扇だ。とてもきれいな扇だった。
「やはり、神器を使えたか。」
そんな言葉は耳に入らなかった。でも、だんだんと頭が正常に戻っていくのを感じた。そういえば、法皇になってやりたいことがあったのだった。
「まずはさ、霊視をできても陰陽師になれない人がいる。それをどうにかしたいんだけどうすればいいと思う?」
僕が法皇になって最初にやりたいのは、快のことをどうにかすることだから。やっぱり兄弟子だもんね。




