1話 【初めての人】
そこは、教会であった。育ての父がうんえいをしている教会だ。
私は、工藤優3つ子の真ん中で、長女だよ。
そして私には、誰にも言えない秘密が2つあるの。特別に教えちゃう。
1つ目は、怪物が見えること。父さんにも、兄にも、弟にも見えないものが見えるのだ。それらは、やさしかったり、意地悪だったりするけど、一緒に遊ぶととても楽しいの。でも、父さんの前とかで話しかけると、「誰に話しかけてるんだ?」って聞かれるの。此処にいるのに。でもそれを言ったら、「もう寝なさい」って言ったから、それからは誰にも言わないようにしてるの。もう遊ぶのもやめた。それに、いつの間にかみんないなくなってたし。
2つ目は、寝て起きると、手に真ん丸な石を持ってるの。それとなく、兄に聞いてみたけど兄は持ってないんだって。なんだか怖くなっていたのだけど、今は怖くない。だから検証してみたの。寝る時に何か持って寝ると朝石は持ってなかったの。それがうれしかった。これでみんなと同じになれるって思ったから。でも違ったの。そうして寝るようになって、1週間くらいたった日に、公園に来た友達と喧嘩しちゃって、「もういなくなってよ!」っていちゃったの。いつもなら、「何よ!」って言い返してくるんだけど、その日は、「わかった。」って。急に怖くなって私は言ったの。「嘘だよ。」って。そしたら、「そっか。」って。その日、お布団に入った時涙が出そうだった。私の言ったことがすべてみたいだったから。怖かった。その時いろいろ考えたんだ。石を持ってなかったから?って。それしか思いつかなくって。だから、その日から、寝るときは何も持たずに寝て、朝は石を持ってるの。そしたら、さっきみたいなこと起こらなかったから、やっぱりこれが原因だったんだなって。
「はい、私の秘密言ったから次はあなたの番!」
「わ、私には、名前なんてないの。みんなと違うから。化け物だから。だから私にかかわらないほうがいいよ。」
「じゃあ、私がつけてもいい?」
ほっとけなかった。初めて見つけた同じ人だもん。
「………つけてくれるの?」
「君がいいなら。」
「つけてほしい。自分の名前が欲しい!」
「わかった。じゃあ、コンね。」
なんとなく頭に浮かんだ名前を言った。その子は、キツネみたいな尻尾と耳をしてたしね。
「…コン。」
「嫌…だった?」
そう私が聞いたら、彼女…コンは首を横に振った。それを見て私は嬉しくなった。友達ができたと思ったから。
「じゃあ、私と、コンはもう友達ね。」
「うんうん。違うよ。」
どうして…?
「私は、あなたの式神。友達じゃないです。」
式神?私は、きょとんとして首をかしげていたと思う。
「式神は、主を守護する存在。対等ではないし、私はあなたを主と仰ぎたい。」
そんな存在がいるなんて初めて知った。
私は、コンが意見を変えてくれるかもしれないと思いコンの顔を見た。それは、兄さんが絶対に意見を変えない時に見せる顔だった。だから、私は、せめてと、妥協をした。
「せめて、敬語はやめない?」
「ダメです。」
「そっか。」
私は、コンが生き生きしてるのを見てやめさせることをやめた。だって、コンと初めて会った時、コンは絶望しているような顔をしていたから。だから、コンが生き生きとした表情を見せてくれたことがうれしいの。
それから、コンは私と一緒にいた。今は、私以外に見えないみたいで一緒に帰っても何も言われなかった。(私にも見えなくすることができるけど、それは寂しいから私には見えるようにしてもらってるの)でも、ごはんとか気になって聞いてみたの。どうしてるのって。そしたら、「コンは、何も食べなくてもお腹が減らないのです!」って。それは、とってもびっくりしたの。でも、見てるだけじゃつまらないから私がご飯を作るようになったら、食べさせてあげるの。