17話 【妖憑】
来奇さんに言われた良いことって何だろう?早く放課後にならないかな。そうじゃないと良いことが何かわからないからね。
「ねえ、優。今日遊ばない?」
「あ、ごめん。今日はちょっと。」
来奇さんに言われたしね。
「え~!優は最近付き合い悪いよ。どうしたの?」
「嫌、ちょっと用事が。」
「ふ~ん」
「ごめん。また誘って?空いてたら遊ぶからさ。」
「うん。次は遊ぼうね。」
「うん」
良かった。納得してくれたのかな。
「姉さん。用事って何?」
「理志!居たの?」
「うん。ねえ、用事って何。姉さん。隠し事してないよね。」
「う、うん。してないよ?」
「本当?」
「ほんとほんと。」
「お~い理志!あ!優も!帰ろうぜ!」
「兄さん。」
「ごめん。兄さん今日も2人で帰ってほしいな。」
「また友達の家に行くのか?しょうがないな。」
「うんよろしくね。」
「また?友達?本当に友達の家に行くの?姉さん。」
「そうだよ?」
「でも…」
「ほら、理志は帰るぞ!じゃあな、優!」
「うんまた後でね。」
「あッ!待ってよ兄さん!」
兄さんが来てくれなきゃ大変なことになるとこだった。僕はやっぱり言えてない。父さんたちも僕のことを化け物だとみてくるかもしれないと思うと怖くて。それに、今は集中したいんだ。今はいびつな形になってる陰陽師の組織を変えることに。変えられるかわからない。でも変えなくちゃいけない。僕ができるところまで行ってみたい。陰陽師の最初の正義のように、妖たちと共存していくためにも。
さて、行きますか。
着いた。今日は誰かに会うのかな?
僕はいつも通り入って行った。そしたら、人影が見えた。来奇さんが良いことが起こると言っていた良いことって誰かに会えることなんだ。
「あの!」
「何、って君は。」
「僕、工藤優です。」
「君が、法皇候補の。」
そう言ってお姉さんは黙ってしまった。何か考え込んでいるようだった。
「あの?」
「ああ。私は、勘解由 由岐四天王の一人だ。」
勘解由さんは、できる女って感じだ。片目を前髪で隠してるのもカッコよさを引き立ててる。
「君に忠誠を誓う前に見せてもらいたい。君の実力がいかほどなのか。たとえ人物としてできていても弱いやつには従わない。陰陽師というのはそういうものだ。」
そっか。会って終わりじゃなかったんだ。さっきまで忘れてた。
「わかった。」
「そうだろうな。じゃあ、学園のほうに行こう。呪術部屋へ行こうか。」
僕は黙ってうなずいた。その部屋に入るのは2度目だ。一回目は実技試験の時。だからついって行ったほうが確実だから。一番近い呪術部屋に入った。建物自体があまり大きくないからすぐについた。
「じゃあ、ルール確認。これは呪術体術何でもありの呪術戦。本来は呪術のみにするところだけど私が体術のほうが得意なんだよね。だから入れさせてもらうけどいいよね。」
「うん。」
「質問は?」
「無い…「式神も参加しても?」…コン!」
「別にいいよ。」
「よくない!すみません。少し待っててくれませんか。」
「わ、分かった。」
そう言われてすぐに今を連れて隅に移動した。
「コン!何で出てきたの!?」
「優様!の危機とあらば、このコンめはどこへでも現れますとも!」
「危機じゃないし!」
「ですが、何でもありの呪術戦式神が参加してもおかしくはありますまい。」
「でも、ダメ。」
「ですが!」
「コン!僕は、君を利用するために式神にしたんじゃないんだ。わかっているだろ。」
「ですが、コンめは不安なのです。優様は何でもお一人でやられてしまいます。コンめは不要なのではと。思ってしまうのです。」
「コン。」
「おい。コン。こいつはそんな奴じゃねえってわかんねえのか。」
「貴様!いい加減優様を敬んか!」
「こいつがこれでいいって言ってるんだ。お前に指図される覚えはねえよ」
「私は式神の先輩だぞ!」
「そこまでだよ2人とも!」
僕が強気に言うと2人とも静かにしてくれた。
「さあ、戻ってて。また夜話そうね。」
「ちょっと待って、」
コンとハクを返そうとしたら勘解由さんから待ったがかかった。
「はい?」
「式神、2つ?」
「2人です!」
「2人?」
「はい!」
「君は、式神を、妖憑を、人として扱うんだね。」
「当たり前!だって妖にだって心がある。妖にあるのに、妖憑にないなんて言えるわけない!」
「そうなんだ。……うん、合格。」
「え?」
合格?まだ呪術戦してないのに
「式神を2人も従えてるんだ。それも、どちらも自立型。実力は問題ないと判断したんだよ。」
「2人の力で受かったみたい。」
「いいじゃねえか。それでいいって試験官殿が判断してるんだから。」
「式神の力で判断したんじゃない。君の力を見た。」
「でも、戦ってない。」
「式神を見ればわかるものだから。私は四天王。そこらの上級陰陽師ではないの。式神は術者の力が漏れ出ているもの。そのコントロールができていればいるほど力は強い。」
「おい、ちょっと待て。ならおかしいぞ。俺はお世辞にもコントロールができてると言えない。なのにどこをどう勘違いしたんだ。」
「そういうことじゃない。コントロールしきれてないのは、霊力が多すぎるから。ちょうどいい量に調整できればあなたは完全にコントロールしきれる。違う?」
「……違わねえ。」
「ごめん!多すぎたの!?」
「いや大丈夫だ。害はねえ。」
「でも。」
「本人が大丈夫と申しているのです。気にしなくとよろしいかと。」
「おめえは俺をねぎらえ!」
「ハッ!これしきの量コントロールできなくてどうする。」
「おめえ!」
「はいそこまで!」
2人はいつも喧嘩ばかりだ。仲良くしてほしいのに。
「忠誠の儀は最後にするよ、というところだけどやるよ。」
「え?」
「私、勘解由由岐は、次代の法皇候補たる工藤優に忠誠を誓います。」
え、何で?最後にするんじゃないの?
「これからは、由岐でいいよ。」
「最後に忠誠の儀をするんじゃ?」
「忠誠を誓いたかったから。それに君の行く先に行ってみたくなったの。・・・忠誠を誓ったんだから私の秘密、教えてあげる。」
そう言って、由岐さんは前髪を上げた。隠れていた瞳は、まるで猫の目のようだった。
「私は、猫又の妖憑。これからよろしく。」
「よろしくお願いします!」
「敬語はなし!いいね?」
「はい!じゃなくて、うん‼」
「よろしい。」
これで3人。後、4人。
「あ、明日此処に来れそう?来れるなら、都合のつく四天王を連れてくるけど?」
「大丈夫。探すのも試練だから」
「?違うよ。認めてもらうだかだもん。まあ、連れてくるね。じゃあ、また明日。」
「え、ちょっと!」
さ、さすが四天王。結界のある呪術部屋での霊移をするなんて。いつか僕も、できるようになるかな?
「優様?」
「優。そろそろ帰んねえとやべえぞ。」
「アッ!ホントだ!帰ろっか。」
「はい!」「おう!」
僕らは呪術部屋から、陰陽学園の敷地内から出た。そうしないとまだ霊移ができないから。
「お帰り。姉さん。」
「た、ただいま。」
一難去ってまた一難とはまさにこのことだと僕は思ったのであった。




