15話 【正義】
「よろしく。」
ここから始まる、法皇になるための試験。僕にできるか不安だけど、やってみよう。
「君の話を聞かせてくれないかな?」
安倍さんは、微笑みながら言った。それが少し怖かった。
「何の話を?」
「そうだね。例えば、陰陽師になった理由とか、妖について思うところとか、何で法皇になりたいと思ったのかとか?」
あの時のように威圧を感じ、空気がダンと重くなったように感じた。僕は、はじめから3つの質問に対して答えていこうと思った。それが安倍さんに対する誠意だと思ったから。
「僕が陰陽師になろうと思った理由は、ある人に憧れたから。その人と会ったのは偶然だけど、必然だと思った。そして、この人のように、みんなを守れるような人に、みんなから頼られるような人になりたいって思ったの。何度も考えて決めた。コンには反対されたけどやっぱりなりたかった。これが陰陽師になった理由。妖については、僕らみたいだと思うよ。良い子も悪い子もいる。話せばわかる子もいるんだ。優しい子だっている。もちろん話も聞かずに傷つける子もいる。でも、それは僕ら人間も同じじゃないのかな?僕らも人それぞれ。だから、僕は妖と人間は似ていると思うんだ。最後に、僕が法皇になろうと思った理由だけど、今の陰陽師を変えたかったから。さっきも言ったとおり、僕は妖と人間は似たようなものだと思ってるんだ。だけど今の陰陽師は、妖だからってその妖1人1人の本質を見ようとしな人が多すぎる。今のまま進んでいったら、いずれ妖をすべて滅ぼそうとする組織になってしまう。そんな組織にしたくない。だって僕が憧れたのも陰陽師だから。未来で、僕ら陰陽師のことを見ても憧れてもらえるような組織じゃないなら僕にとっての陰陽師はなくなったということだから。僕は、僕の思い描いたかっこいい組織のままでいてほしい。結局自分勝手な我儘さ。でも、これだけは言える。昔立てた妖たちとの共存という目標。達成してるの?今やっていることは僕ら陰陽師が見下してる祓魔師と同じじゃないの?そんな現状で本当に共存が僕ら陰陽師の正義といえるの?」
そこまで言うつもりはなかった。でも、どんどん気持ちがあふれていって止まらなくなった。これでも最初のほうは冷静に話せていたんだよ?2人は僕の話を止めることなく静かに聞いていた。お陰なのかそのせいなのかわからないけど沢山話した。僕の思っていたこと全部。
「そうか。僕はそれで、その想いでもいいと思うよ。だけどね、それが不安という人もいるんだ。正式に法皇になる前に君何が欠けているのか探してごらん。僕の忠告はこけれだよ。君にかけてるものは何か、それがわかれば文句なしに法皇になっていいと思うんだ。頑張ってね。」
認められたということだろうか?陽皇に。でも、課題も出されてしまった。僕に欠けているもの。今は何かわからない。でも、探してみせる。そして欠点をけってんじゃなくする。…そういえば、時間を見ずに話していたけど今何時何だろう?時計時計。!?もうこんな時間!?父さんたちが心配するかも!
「すみません。そろそろ帰ります!」
「また来るんだよ。」
「はい!」
この部屋から霊移で学校近くの路地裏に向かった。
「どういうつもりかな。君が法皇候補を連れてくるなんて。」
「別にいいだろ?」
「僕が連れてきた法皇候補をことごとく却下したくせに。」
「今までやつらが法皇になるなんて考えただけで吐き気がする。俺は、あの子に素質があると思ったから連れてきたんだ。お前だって、認めたじゃないか。」
「それはそうさ。今の陰陽師の現状をよくわかっているからね。とても小学生とは思えないね。」
「ああ。術を使うとき小路と同じような気配がした。でも、少し違う。悪いものではないと思う。何かわかるか?」
「…きっと神の類だろうね。彼女の先祖は。」
「なるほど。」
「それと、神の力をもし宿しているのなら危ないかもしれない。神の力は霊力とは違う。それは君も知っているだろう。」
「わかってる。神の力は成長する。体が耐えられなくなる前に封印するか、制御を覚えさせなくては。」
僕が家に着いた頃こんな不穏そうな会話がしていたなんて僕は気づかなかった。




