14話 【夕の非日常】
陰陽学園を見上げたまま何秒か過ぎた時、少し進んだところにある裏門が開いた。
「よく来たね。」
出てきたのは芦屋道希。僕に法皇になれといった人だった。
「こんにちは、芦屋さん。」
「道希でいいよ。」
「敬語は使わない。でも、さん付けはするよ。年上だし。」
それを認めないなら敬語に直そうかな?
「……今はそれでいい。ただし、法皇になったら下の名で、呼び捨てにするんだよ。いいね。」
僕の気持ちが伝わったのかな?あっさり諦めてくれた。法皇になったら直せと言われたけど。まあ、それくらいは僕が妥協しなきゃだね。
「わかった。」
「じゃあ、行こうか。」
「どこ行くの?そっちは入り口じゃないよ?」
道希さんが行こうとしたのは、初めて来たとき(つまり、試験を受けに来た時)とは違う道だった。
「今日からは学園に用があるんじゃない。その先に用があるんだ。だからこっちであってるんだよ。」
納得した。
僕は、道希さんについて行った。そしたら、1つの扉の前に来た。その扉の前には一二段の小さな階段があった。道希さんは、迷わず、階段を上がり、扉を開けた。
「さあ、ここだよ。靴は履いたままで大丈夫だよ。」
そう言って、道希さんは扉の中へ入っていった。僕はその背についって行った。
建物の中に入ると長い長い廊下があった。その廊下の床には、赤いカーペットが敷いてあった。まるで、外国の宮殿にいるような感じがする。
「ここは?」
僕は何かわからなくて道希さんに聞いた。前に来た陰陽学園であってるはずなのに、学園って感じがしない。本当に同じ建物とは思えない。
「陰陽学園だよ。ただ、ここにはいれるのは限られた人だけ。ここには法皇の部屋がある。だから限られた人だけしか入れないのさ。例え、今のように法皇がいなくともね。」
法皇の部屋………
「ここは、十二神将以上が集まって会議をする部屋がある場所。此処から君の試験は始まる。準備はいいね。」
「はい!」
「まあ、でも挨拶が先になるけどね。」
誰にだろう?道希さんはそこから話さなかった。長い廊下を静かに歩いていく。静かに歩く足音だけが響いていく。コツンコツンと。その間僕は、決意を固めていた。僕は、僕の目的のために法皇になると。そして、この陰陽師という機関を変えてみせると。
「着いたよ。」
そう言った道希さんは大きな扉の前で止まった。扉はアンティークな扉だった。まるで、本当に外国の宮殿の中にいるようだった。
道希さんは扉を開け、僕に入るように促した。
僕は部屋に入った時、中に1人の人がいたのに気付いた。誰かは、逆光で分からなかった。
「どうぞ?」
中にいた人が促していた席は座っている席の会議テーブルをはさんだ真ん前だった。僕は、その席に座った。そして、道希さんも中にいた人の隣の席に着いた。
「初めましてだね。僕は陽皇の安倍聖来。よろしくね法皇候補君。」




