9話 【ハク】
「俺は……式神になる。」
「うん。わかった。」
「優様!?こんな奴を式神にするなんて!」
「コン。この人の考えがあってのことだから。…でもね、一つ聞いてもいいかい?」
「なんだよ。」
「式神になれば私の命令には従わなくちゃいけない。それでもいいのかな?」
「ああ。こっちのほうがいいって思ったからこっちにしただけだ。」
「そうなんだ。なら、名前を教えて。名前を知らないと登録もできないからね。」
「名前?そんなもんお前がつけろよ。今までの名は捨てた。」
「親がつけてくれた名前だよ?」
「もう呼ぶやつがいねえんだ。心機一転ってやつだ。」
「わかった。なら、知っててほしいと思ったら言ってね。ハク。」
「はく?」
「そう。白いから。」
「安直じゃね~の?」
「貴様!式神となったからにはもう容赦しないぞ!」
「どうぞどうぞ。先輩さま?」
2人で喧嘩を始めてしまった。なんか賑やかになったな。でも、楽しいな。こんな日々が続くといいな。
「優様?」「優?」
「うんうん。なんでもない。」
私はこの時は知らなかった、私がまいた種がもうすぐ芽吹くことを。新たに仲間になったハクが一波乱の渦中にいることを。
私は忘れていたのだ。陰陽師の仕事は命がけだということ。妖がどれほど憎まれているのかということ。そして、人は憎いものにはとことん邪悪になれるということを。




