4話「台風の化身テュポーン」
ドライアドのユピテル。
彼女の緊急事態の報告で幹部が全員集められた。
「テュポーン?」
「その怪物自身が台風と言っても過言ではない。何重にも施された
封印が何者かに解かれた形跡がありました」
「誰かが意図的にこの国を潰そうとして、封印を解いた?」
ユピテルは小さく頷いた。一大事だ。窓は全て閉められているが
窓や扉が小刻みに振動している。風の音が中にまで聞こえる。
この強風はテュポーンが暴れている証拠だという。
「あまり時間は無いようですね」
ベアトリスの言葉に頷く。ここから更に風が強くなったら家屋が
吹き飛ぶかもしれない。それだけは避けたい。
敵は一体、しかし恐ろしいほどに巨体で一人では太刀打ちできないだろう。
「レイドバトルか…」
「普通の魔法でもダメージを与えるのは難しいのでは
無いでしょうか…?」
ユピテルはテュポーンの事を知っているのだ。
「そこは…無いわけじゃないけどやったことが無いんだよねぇ…。
いや、迷ってる時間も勿体ない。一か八かやるしかない…!」
即刻、国民全員を一度避難させる。テュポーンの位置はユピテルが
確認済みだ。
「―!ドロシー様」
サルビアは彼女に声を掛けた。
「テュポーンのいる場所の近くに何者かが潜んでおります。この辺りの
住人らしくない…何処か禍々しい妖気を感じます」
敵か。味方か。判断に悩んでいるのはドロシーもそうだがサルビア自身も
ハッキリと答えが出せずにいた。サルビアはもっと深く相手を探りようやく
答えを出した。
「テュポーンを飼い慣らしているのは、この娘か…!」
「飼い慣らす!?」
サルビアの分身から見える景色。目を閉じると同じものが見えた。
長い黒髪に白いロリータドレス。かなり目立つ服装だ。彼女は杖を
握っている。それに彼女がいる場所はテュポーンの肩の上だ。
「その杖が怪しいですね。何かしら仕掛けがあるかもしれません」
「森に住まう魔獣たちも凶暴になっているのです。それに関係が
あるかもしれません」
「となると、少し分担したほうが良いのかな」
この少女を捕まえる、杖を破壊する。
テュポーンの討伐。それらを同時に進める。
「その少女は俺に任せてくれませんか」
「オルビスさん。良いんですか?」
「構いませんよ。少しは役に立たなくては」
オルビス・エルンストの実力が見られるかもしれないが残念ながら
それは出来なさそうだ。ドロシーはテュポーン討伐に集中しなければ
ならない。
「じゃあ、そっちは任せた!」
「丁度相手もテュポーンから離れた。俺がその近くまで送ってやる」
サルビアとオルビスはその少女の元へ。
そしてドロシーたちはテュポーンと戦うために怪物がいる
場所へと向かった。