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勇者になりたい!  作者: 花水木出雲
最終章「オズの伝説編」
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29話「神を倒す拳」

「―刺されるか!」


放たれた蹴りに対して自身も蹴りで相殺した。

タナトスの前に立ちはだかったのはオルビス・エルンストだった。


「お前が出張ってくるか。オルビス」

「任されたんだから、それに応えるのが今の俺の仕事だ」

「俺にボコボコにされたのはどこの誰だったかな?」


嘲笑するタナトスに対してオルビスは平常心を装う。

ここで怒ってもどうにもならない。ゆっくりと呼吸し、

息を整える。一度、タナトスと戦ったことがあった。

今回のような大戦だったのを覚えている。

そして無力であることを思い知らされ、自ら拳聖の座を

返上した。

風に流されるように旅をする自分がついにここに辿り着き

ドロシーと出会った。


「前回の二の舞になるつもりは無いよ。リベンジしたくて

仕方なかったんだ」

「ほぅ?ならば前のようにはいかないぞ。二度と立てぬように

してやろう」


リベンジがしたい。ドロシーは自分の願いを叶えてくれた。


『訳が分からない魔法なんてないんだよ。必ず何かしら

弱点があるんだ。オルビスさんならきっと見抜けるよ!』


ドロシーの言葉に不思議と励まされた。少し焦り過ぎていたの

かもしれない。一方的に今は甚振られているだけだ。


「どうした!?さっきまでの威勢は!!?」


反対側に見えたのはユベルが目を覚ましたところだった。

少し強引に相手から距離を取った。オルビスは地面を蹴り、

拳を振るう。闇雲に振るう拳ではない。しっかりと型に

沿いつつ尚且つ、実践的な動き。元よりオルビスは強くなるための

努力をしてきた。心身を鍛え、そうして拳聖となれるだけの

強さを得たのだ。


「―神様よぉ、人間を舐め過ぎるんじゃないか?」

「起きていたのか。ハーフ」

「ハーフって名前じゃねえんだけど…」


うなじ辺りから赤い液体が現れ、ユベルの手元に集まっている。

その液体の正体は彼自身の血液だ。それは槍の姿に変化し、

固体となる。ふら付きながらも立ち上がり、槍を投げる。

しかしその軌道は逸れてしまった。


「外したな?純粋な吸血鬼であれば、また違っていたかも

しれないぞ。血液操作を半端者が扱いきれるわけがない!」

「半端者で良いじゃねえか。お前にも見せてやるよ、半端者を

拾った奴があの諸悪の根源に打ち勝つ瞬間を―」


微かに「しぃッ―」と小さく細く息を吐く音がした。気付いて

振り返ったときには槍が体を貫き、きつく拘束されていた。


「神は無敵じゃない。何時までも自分が無敵だと思い込んでると

喰われちまうぜ?―」

「なっ―」


タナトスの右頬を綺麗に打ち抜いたのはオルビスの素早いパンチ。

神タナトスが人間に事実上敗北した。


「よっ、お疲れさん」


ユベルは拳を前に突き出した。その拳にオルビスも自身の拳を

軽くぶつけた。一種の挨拶みたいなものだ。再び白星を上げた。





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