27話「下準備を終わらせて」
フィネストラ公国。女王エミリアはジェラートを通じて
オズの要請を受け入れた。
「ドロシー様も狡猾ですね。裏をかく敵の裏をかくなんて」
「それもドロシー様にしか出来ないことかもしれませんね」
シモン・レオンハートの言葉にエミリアは頷いた。
一カ月という期間に違和感を持ち、相手の動向を予測。
そしてその行動の更に先を準備する。
用意周到だ。
「こちらも頼られているのですから、頑張らないと!」
フィネストラ公国に頼まれたのはギルドの細かい調査。
部屋だけはそのままに残されていた。
「さて、どうでしたか。エクレア。グランドマスターの部屋の
過去を見聞きすることは出来ましたか?」
「はい。貴方様と、そしてドロシー様の予想通りに彼は元より
グランドマスターという地位を隠れ蓑に計画を進めていたようです。
そして副グランドマスターのルエルはやはり魔王だったようです」
エクレアと言う女性の言葉は事実。ルエルは魔王だったが
自ら精神体になって彷徨っていた。ナインと出会い、彼に忠誠を誓って
現在の肉体を得ている。
「彼により、ギルドマスターに選ばれていた人間の調査は
どうでしたか。ショコラ」
エクレアよりも小柄な少女ショコラ。
「一通り術は解除しましたよ。やっぱり言霊による洗脳を
受けてました」
グランドマスターに任命されると言う事も彼の術によって
起こったことだった。エミリアは自分の不甲斐なさに
押しつぶされそうになっている。
「気にすることはありませんよ。彼の悪事を止める、そのために
私たちはオズに協力することを誓ったんですよ」
「…そうね。女王がしょげてちゃあ、周りだって動かないわよね!」
シモンの言葉でどうにか普段通りの心持を取り戻した
エミリアの顔に不安はない。
「ドロシー様は抜かりがありませんね…本当に…」
シモンは驚嘆していた。ドロシーのトンデモな裏をかく作戦に。
一か月まであと半分となった頃。いよいよ作戦は大詰めに入る。
「…ですが、ドロシー様。何故貴方はそこまで分かるのですか」
「ちょっとしたスキルでね。勇者として覚醒したときに
託されたのかな。それとこれのおかげ」
ドロシーが見せたのは手鏡だった。取っ手が付いている。
それもまた魔法を一つだ。
「抱擁の星―海王星。この鏡は未来を映す。だけど
それは不確実でしょ?参考程度にするだけなんだ。で、代わりに使うのが
敵の力を測ることが出来るんだ。だからこの能力は自分の目にも付加してる」
「そんなことも出来るんですね」
ユベルは驚いた。その魔法を頼りに、ナインの実力を測って
起こるであろう未来のために出来る範囲で対策する。無駄になることも
承知でエミリアは承諾してくれたので有難い。
「ある程度手は回した。後は頑張って戦うだけだよ」
一カ月が経過し、予定通りに戦争が行われた。




