24話「黒幕の断罪」
ナイン・クラストスは驚いていた。
「ジェガル、どうやら過去に仕留めそこなったみたいだね。
今回はしっかり自分で尻拭いをしてもらうから」
ジェガルと呼ばれた紳士風の男は深々と頭を下げていた。
自身の情報収集が足りず、あの男…ストリウスを確実に
仕留めることが出来なかった。
「にしても不老不死って凄いよね。何だか憧れちゃうな~」
「しかしその男はもう不老不死ではないのでは?種族も
変わっているのでしょう?」
副グランドマスターの女性、ルエルの問い。それは
ナインにとって愚問だった。
「種族が変わっても彼はずっと死と言う概念の外側さ。
僕も君も知らないような太古の呪いなんじゃないかな。
ジェガルの覚醒も失敗しちゃったし…」
「彼が上手くいくとは思っていない。そうですね?」
無慈悲ともいえる本心だ。部下であるジェガルは死ぬ、
それを彼らは確信している。
「新しい魔王の誕生と同時に厄介な勇者も覚醒した
みたいでさぁ。どうも、計算外な事ばかりが起こってるんだよね」
ナイン・クラストスは天才。以前までなら彼の掌の上だった。
彼の予想通りに周りは動いていた。しかしその計算が今になって
狂い始めているのだ。
「ナイン様の計算を狂わせるとは…忌々しい…!」
ルエルは拳を握りしめて怒りを露わにしていた。
それに対してナインはこの状況を楽しんでいた。初めての
事、楽しみだ。
ジェガルは歯を噛み締める。自身の失敗がついに巨大な
誤算となって姿を現したのだから。
「殺してやる…殺してやるぞ…ストリウス・マーテル!!」
最早彼は計算など無視して動き出す。それはかなり焦っているように
見える。焦り過ぎだ。だから彼は死ぬことになる。
それも因縁のストリウスの手によってではなく、彼と同時に
勇者として覚醒した人間の手によって。
その強大な力を感じ取り、オズでは警戒網が敷かれていた。
「この妖気…間違いない。魔王ですよ。バルカン様にはかなり
劣りますが」
カーラの辛口コメント。そして誰も否定しない。そういうドロシーも
そこまでの脅威には感じられなかった。
その魔王といち早く対面していたのはストリウス、いやバルカンだ。
「俺が戦うまでも無いな」
「何…?では貴様は逃げるか?滑稽だな!!」
高笑いをするジェガルに対してバルカンは嘲笑した。
「悪い魔王は勇者が退治するに相応しいだろう?劇が大好きな
お前の良い祀ろじゃねえか。部下を人形のように操って来た
男の滑稽な末路さ」
更に彼は挑発を続けた。
「この国の童話にするのも良いかもな」
「貴様…黙っていれば戯言を…!!!」
「戯言かどうかは今から分かるさ」
姿を現したのは堂々とした少女。ドロシー・マーテル。
この世界に現れた新たな勇者だ。
「俺たちの大事な国を潰そうとしたお前を今日、
公開処刑する!」