表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者になりたい!  作者: 花水木出雲
第1章「オズの怪物討伐編」
2/35

2話「使者と無冠の拳聖」

魔物たちも多いと言う事で名前は広がっており、他国とも

多少繋がりがある。

小国イグノア王国の国王は間者よりオズ連邦国に新たな

国王が即位したという報告を受けて、使者を送る。


諜報部隊よりイグノア王国の使者たちが来ているという報告を受けて

慌ててドロシーは身支度をして出迎える。


「貴殿がここの国主か」

「はい。ドロシー・マーテルと申します」


目上の人への態度ならば大丈夫だ。使者たちも頷き

微笑を浮かべる。


「我らはイグノア王国、国王より直々に命令を賜り

ここへ至りました。国を見回っても?」

「それは構いませんよ」


国の様子の視察だろう。怪しさは無い。何かあれば鬼人サルビア率いる

諜報部隊がすぐに駆け付けるはずだ。それも無いと思うだろうが…。

彼らを見送ってドロシーはフゥ…っと息を吐いた。


「お疲れ様です、ドロシー様」

「ベアトリス。えっと…何時からそこに?」

「つい先ほど、息を吐かれたところで駆け付けました」


メイドのベアトリスはエルフ。彼女は神出鬼没な部分がある。

たまたま通りかかったのではなく、別の用件があってここに

来たようだ。


「彼もまたイグノア王国より来たようですが、使者の方々とは

全く面識が無いようです。よく分かりませんが、私の目でも

悪意は見つけられませんでしたので警戒しつつ案内しました」


警戒しつつ…、もしもの時に備えているようだ。

ベアトリスの察知能力は高い。最大限の警戒は現在、使者たちの

方へ何人かまわしているので難しいが何人かを警護に就かせている。

彼女曰く、「戦闘になったら少々厄介かと…」らしい。

集会所、来賓の間にやって来た。


「(確かに、ベアトリスが警戒するのも無理はない)」


ドロシーだって人を見る目がある。いたのは一人の男だった。

人間だ。それならば何があってもどうにかするのは楽だろうが、

ただの人間ではない。武器の類は見たところ所持していない。


「(確か―)」


あることを思い出し、ドロシーはそれを口にした。


「オルビス・エルンスト…!」

「はい。そんなに警戒しないでください。俺は別にこの国に悪事をするために

来たわけではありません。寧ろ逆ですよ」


オルビスはドロシーの前で片膝をついて首を垂れる。

オルビス・エルンスト、四人いる拳聖と同等の実力を持ちながらも

拳聖を名乗らない無冠の拳聖という異名で知られている。

人間たちの世で知られている勇者伝説。人間を一方的に苦しめる

最低最悪の魔王を勇者は討ち取った。その勇者に積極的に協力した

武闘家は勇者の活躍もあって最初の拳聖として知られるようになった。

人間達の中で最強の四人が現在の拳聖。元を辿れば彼らは勇者に

従うのが相応しい。


「…でも、私よりもオルビスさんが仕えるに相応しい人は

いると思います」


とても謙虚な言葉だった。その言葉を聞き、オルビスは微笑を

浮かべた。


「お話で伺った通りの人ですね」


オルビスは向かい側に座っているドロシーの後ろに控える

人物に言う。黒髪、右耳には金色のハートのイヤリングが見えた。

名前をリーベ。彼は人間では無く魔導人形。先の国王の感情の一部を

強く引き継いでいる。その感情の名前が彼と言う人形の識別名

(シュリンガーラ)


「ドロシー様、貴方は不思議な方ですね。何処までも謙虚で欲が

少ない。もっと欲張っても良いと思いますよ、様々な国王を

見て来た私からすればね。だけどここまで多くの国民に広く深く

愛されている国王は少ないでしょう」

「当たり前です。ドロシー様よりも優れた王などいません。

とても慈悲深く、誰にでも平等に接してくれる。決して傲慢にならない

謙虚な人柄…だからこそ皆、彼女を慕い彼女を守りたいと思うのです」


ベアトリスがそう言った。本心からの言葉だとすぐに分かる。

彼女の目は本気だ。だからこそ嬉しくて、少し恥ずかしかった。

きっと魔物たちにとって自分はかなり弱々しく見えているだろう。

そんな奴をそんなにも思ってくれている…。


「そんなに良いことを聞いてしまっては、退くにも退けませんね。

私は粘りますよ?」

「え?」

「貴方が私を従者として迎えてくれるまで、ここで粘りますよ」

「えぇー…」


冗談では無いようだ。マジで椅子から動こうとしないんだけど!?

困ってベアトリスとリーベを交互に見やる。

良いんじゃないですか?というような視線を送って来た。


「わ、分かりました!はぁ~…」


イグノア王国の使者たちが国を見回っている間、こんなやり取りをして

この国にオルビス・エルンストという頼もしい存在が正式に

入って来た。



オルビス・エルンストのモデルは実は…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ