17話「新たな魔王」
敵本軍は全てバルカンが担当することになった。
より魔王化を確実にするためだ。ドロシーは国の屋敷、そこで
待機をすることになった。
「さて…動くとするか」
これだけ巨大な結界を張るには装置を使う必要がある。
東西南北に四つ。人間への手出しは禁止、ただし今回は相手が
先に手を出してきたと言う事でそのルールは不要。
人間を殺してでも装置を破壊する。
「気を付けてね」
ドロシーは彼らを見送った。拳聖組が暫くはドロシーの護衛に
就くことになった。全員が部屋を出て行った後、沈黙が
流れた。
「あの人は何処か人を避けているように見えないか?」
レグルスはドロシーたちにそう聞いた。バルカンは周りと比べて
人を、特にドロシーたちに妙な気を遣っているように感じられた。
「ドロシーの父親の弟…だとしたら人間だったのかもな」
「だった?」
「何かしらがあって種族が変えられた、とか考えられないか」
そんな術があるのだろうか。無いと決めつけるのも良くないか。
それが正しかったのなら、元人間の魔族ということになる。
デフテラ王国軍。その本陣には国王の姿も窺えた。
「勝利が見えましたな!リカルド国王!!」
クラウス枢機卿はリカルド国王にそう言った。国王は
頷いた。この国の富をついに手に入れられる!我らの勝利だ!
そう確信しているのだ。
外の様子など見えていない。そう言う術に嵌まっているのだ。
テントの中に足を踏み入れる男。
「な、何者だ!!?儂を誰だと―」
投げ捨てられたのは首だった。
「こんな腐った奴の脳みそ、食っても美味くないからな。
あぁでも安心してくれ。他の奴らでこれから百年ぐらいは
腹を空かさなくてもよさそうだ」
ペロリと口の周りに付いた血を舌で舐めとると男は
笑みを浮かべた。
「なぁ、オズを襲ったのはお前らだろ?こっちはしっかり
リコリス正教会に話を付けて国として認められてるのに。
勝手な事をして良かったのかぁ?」
「な、なな、何を根拠に言っておるんじゃ!!そんなことが
あるわけが無いだろう!!」
「そうだ!魔物の国などみみ、認めるわけ…!!」
斬り落とされたのは片腕だった。しっかり丁寧に止血まで
されている。落ちた腕を拾って眺めるも彼はそれを
踏み付ける。
「やっぱり美味そうには感じられないな…こんなのを食ったら
腹を壊しそうだ」
「そ、そうだ…!フェリックスはどうした!?奴はおらぬか!!?」
「あの魔法使いか?ちょっと齧ったけど、他の奴に任せたよ。
お前らを上手く使えば、国は滅亡する。だから生け捕りにするように
命令はしたぜ。お前らも生け捕りにしてミッションコンプリートだ」
人魂が幾つも浮遊して男の体に吸い込まれていく。ついに魔王が
誕生する。リカルド国王、クラウス枢機卿、二人は転移魔法で
オズに存在する牢獄に自動的に繋がれた。
バルカンが魔王になるとき、ドロシーの身にも変化があった。
「―ドロシー!!」