14話「どうか無事で」
念話。
誰でも良い、兎に角繋がってくれ!その願いも空しく
誰にもつながることは無かった。
「…駄目だ。何かしらに遮られて繋げられない」
「反魔法結界かしら…」
諦めかけた時にブツブツと途切れながらも声が聞こえた。
『…様…ドロシー様。ご無事ですか!?』
「サルビア!良かった~、繋がらないかと思ったぁ!!!」
サルビアから返答があった。
「どうなってるの?皆は無事!?」
『死者はいません…ただ…ただ、人間の国の侵攻で大半が
怪我を負っております。幸いグリンダが術を使ったようで』
ユベルたちも言っていた。グリンダは守ることに特化していると。
周りの騒ぎ様に眠ったままのグリンダも気付いたのだろうか。
「死者がいないなら良かった…あ、ちょっと待ってね。
エミリアさんが伝えたいことがあるって」
ドロシーを通してサルビアにエミリアの声を届ける。
「私の使者をすぐにそちらへ送ります。どうか、他の
方々にも顔つなぎをお願いします」
『承知いたしました』
「サルビア。私もすぐに帰る。サルビアたちは周囲を警戒しておいて」
『分かりました。他の者たちにも伝えておきます』
通信を終えてドロシーたちは帰る支度をする。
「ジェラート、貴方はドロシー様たちをしっかりと送り届けなさい。
そのあとはオズの皆様を手伝うのよ」
「承知いたしました」
ジェラートが壁に触れるとそこに扉が現れた。隠し扉だ。
そこは抜け道となっていて領地の外に繋がっている。
「ドロシー様」
名前を呼ばれて彼女は振り返った。何処か不安そうに、しかし
微笑を浮かべてエミリアは彼女たちを見送る。
「どうか、お気をつけて下さい」
「ありがとう、エミリアさん」
「あ、待て待てドロシー。俺とシリウスも付いて行くぜ」
「えぇ?」
拳聖二人の言葉に周りは驚いている。
「友達の国のピンチだ。手伝って何が悪い」
「そうかもしれないけど…二人は拳聖でしょ?勝手にこういう
集まりから抜け出して大丈夫なの?」
「その件ならば私たちにお任せを。女王エミリア・フィネストラ
直々の命令により、急遽別件で動くことになったという
口実で誤魔化しますので」
シモンがそう言った。女王の命令となれば、周りも
頷けるだろう。
「ありがとうございます!」
再度、ジェラートたちと共にドロシーは自国に帰る。
扉が再び隠された。
「さぁ、私たちは戻るわよ」
「はい。しかし女王陛下、ドロシー様に送られていたこの
手紙の差出人は…」
「魔王、ね…その魔王が意図を引いているのでしょう。彼だけでは
無いように私は感じられます」
「と、言いますと…」
「これを言っていい物か分かりませんが、今回の招集は
ギルドが担っている。つまり手紙を出す出さないを最終的に
決めるのはグランドマスターだけなのです」
エミリアの予想が的中しているとすれば、国はその者の
悪意に染められている。それが外れてくれれば…彼女たちは
そう願うのだった。




