11話「怒りの人形」
「へぇ、リーベってそんな能力も持ってるの?」
事が一段落してからすぐにアルゴたちも自国に帰った。
そのあとにドロシーはリーベに聞いた。
「いや、俺はそんな能力は持ってない。あれは怒りを増幅させる。
俺の友だちだ。同族の」
感情人形“怒”ラージュ。彼が姿を現した。
少し小柄な青年姿。そこは感情人形共通なのだろうか。
「そうだそうだ。覚えてる?俺たちの名前を考えたのはお前なんだよ
ドロシー。君が俺たちに名前をくれたんだ」
「え?全然記憶にないんだけど…」
「10年ぐらい前だから、記憶にないのは当たり前だろ。でも
証拠はあるよ。ほら―」
ラージュと目が合い、彼と記憶を共有する。
「パパ、出来た~?」
「出来たよ」
シュリンガーラ、ラウドラたちであろう人形がゆっくりと
目を覚ました。
「ドロシー、貴方が彼らにお名前を付けてあげたらどうかしら?」
「え、名前は無いの?」
「あるけど。きっとドロシーから貰った名前の方が喜ぶわ」
「じゃあねぇ~―」
すっぽりと抜けていた記憶。今、見ると少し恥ずかしい。
だが懐かしい幼い頃の記憶だ。
「ね?思い出してくれた?」
「うん。確かに名前を付けた気がする!」
ラージュは少しだけ不器用に笑った。
「これ…」
彼が突然、渡してきたのは手紙だった。
その中に入っていたものを見てドロシーは首を傾げる。
「ドロシーちゃんのお母さんは冒険家だったから、きっと
ドロシーちゃんの力を借りたい何かがあるんだと思う」
フィネストラ公国。冒険家たちが所属しているギルドの総本部が
存在している。ドロシーの母であるアウロラもかつては冒険家として
活動していたらしい。その話を知っている者から推薦されたようだ。
「ただ、これでも一応は国王だし国を空けて良いのかな…」
「何かあればグリンダが力を使うはずです」
グリンダ。未だに眠りについている魔導人形。彼女は国の守りに特化
している能力を持っているらしい。
「それにあまり舐めなくても良いのです。皆、力はある。
彼等が上手く立ち回るはずです」
確かに。ユベルたちは強い、それに個々で好き勝手に動くのではなく
周りと協力して事に立ち向かうことが出来る。
「この手紙、実は貴方にだけ届いているわけでは無いようですよ」
他にいる人間と言えばオルビスだ。拳聖は名乗っていないが、彼らに
相当する実力を持っている。彼にも同じような手紙は送られていた。
時は一週間後。これから準備することになった。
数日前になってフィネストラ公国の使いの者が馬車に乗ってやって来た。
「お迎えに上がりました。どうぞ」
その馬車に乗って国へ向かうのだ。




