10話「死者への冒涜」
アルゴとライザ。
二人の竜は本来の姿に変化することが出来る。しかしそれは
レイザードの許可なしには使えない。その場合は最大限使える
力は半竜化。
「(レイザード様との連絡も出来なくなってしまった…)」
「これぐらいが丁度よいでしょう。何も全員で一斉攻撃をする必要など
ありません」
カーラがキッパリと言い張った。その言葉に周りは困惑している。
彼女はドロシーに目を向けてニコッと笑う。
私にやれって事っすか…。
「分かったよ。やる、やりますよ」
これならば聖属性の魔法で中和することが出来る。中和と同時に
敵を殲滅することも可能だ。人間だからこそ扱える属性がこれなのだ。
「―星空測図!」
「空間系の魔術ですか。珍しい、それなりの魔素を使うのでは」
ライザは段々と空間を広げることに集中するドロシーでは無く
カーラに聞いた。カーラは待ってましたと言わんばかりに解説を
入れる。
「空間を作ると言う事はそれだけの範囲に自身の魔素を広げて
具現化させると言う事です。それだけのことが出来る技量と
魔素量が無ければ扱えない。生まれつきの魔素量に左右されるのです!
つまりそれは~…?」
カーラがライザに目を向ける。
「ドロシー殿はそれだけの才能を持っていると言う事ですね」
「その通り。そこの阿呆とは違うわね」
「誰が阿呆だ、誰が」
アルゴに突っかかっていくカーラとそれに反発するアルゴ。
最早テンプレ化しているやり取りである。ライザは溜息を吐いた。
「だけど、どれだけ優れた魔法であっても完璧は無いのです」
夜空に亀裂が走り、砕けてしまった。
「テュポーン戦での疲れが溜まってたのかしら。ドロシー様、今日は
これから24時間お休みタイムです」
「えぇー…」
カーラの言葉に対してドロシーは少々嫌そうだな顔をした。
24時間お休みタイムって、一体…?
『なんて器用で、なんて繊細な空間魔法。だが、頑丈さに
問題アリですねぇ~』
カタカタと嗤う死霊魔術師。名をデルグリアと言うらしい。
この場に存在する全ての死霊を一人で操っている。さらにこの
魔術師、人すらも操れると豪語する。
「体が…!?」
カーラの体が一人で動き出し、銃を乱射する。
『さぁ、自らの手で主人を殺めるのデス~!!』
「器用だな。死霊魔術師でありながら心も操るのか?」
そこに駆け付けたのはリーベだった。デルグリアの術の
正体を彼は見破っている。
「俺たちと同じだな?」
『同じ?』
「死霊たちの心を惑わし操る。死霊魔術師に近い、て
ところじゃないのか?」
『…誰かと思えば魔導人形ではありませんか。こんなに
人間らしい人形は初めて見ましたぞ。それを操っているのは
その娘かナ』
死霊たちにドロシーを襲わせるつもりだ。だが何も起こらない。
何度も命令した。何度も命令した。しかし死霊たちは動かない。
それどころか彼らは操っているデルグリアを攻撃する。
「死者を操るということは彼等の怒りを買うんだよ。それに
どうやらその中には憎悪を持って死んだ者もいるようだね?
もしかして操るために殺しちゃったのかな?」
リーベはゆっくりと歩きだした。
『ヤメロ!私ではなイ!敵はあの娘ダ―!!』
「それはな、魔術師。生命の冒涜って言うんだぞ」