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砂漠の真ん中で

 どうしても忘れたいことがあって私は街を飛び出し、行くあてもない旅を始めた。全国あちこち回った末に旅費も底をついて気がつけば、砂漠の真ん中を彷徨っている。


 この砂漠は、一体どこなのだろう。位置情報を知れる頼みの綱のスマホはとうの昔に壊れて、紙の地図も持ち歩いていなかった。ここはまるで、地獄だ。蒸し暑くて、水溜り一つ見当たらない。見える限りの景色が砂色だった。


 私は旅をしているうちに自分がどうして旅をしているのか、自分が何者なのかを忘れてしまった。なんで旅に出たんだっけ。私は何のために今ここに居るんだっけ。砂漠を歩いているうちに、自分が児童公園の砂場にいるちっぽけな蟻のような気がしてくる。世界はこんなにも広かったのかと今更ながらに思い知った。


 あてのない旅の果てに人間って大自然の前では無力だよなと生きることへの諦めを始め、私にとって大事な物を旅の中で捨ててしまった。だけど、生きていることが無意味だと思い詰めた結果、砂漠の真ん中にたどり着いて、そこで死にかけになって、言葉にできないけど、やっと生きている意味を見いだせたような気がした。でも、気がつくのが遅すぎた。私は砂漠の真ん中で死にかけている。誰かが助けに来てくれる見込みもなく、どうやらここが私の最期の場所となるようだった。


 今更気づいても遅かった。でも、死を前にしたからこそ気づいたのかもしれない。少なくとも最後を前にした私が気づいたことをこの手帳に記す。これで、私の気づいたことが誰かに伝わるといいな。


 私は今から砂漠の真ん中で眠ることにする。おやす


(砂漠の真ん中で 完)

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