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第8話

「ルース。からだ、なんともない?」


『やあ、テイル。昨日は命を助けてもらった事、本当にありがとう。おかげで、エリーさんと右手…。いや何でもない、テイルがいてくれるなら、俺もこの先頑張っていけそうだよ。これからもよろしくね。』


「うん。えへへ。」


「二人とも揃った所で、本題に移ろうかしらあん。」



昨日はドタバタした挙句、俺が一晩寝込んでしまったせいで、皆が気にしていることが何も消化できていなかった。俺も自分が起こしたことについてしっかり受け止めなければならない。そうするには…。


「まずはこの鑑定石でルーちゃんのレベルを測定させてちょうだい。昨日はモンスター二匹の討伐ね。ルーちゃんの初期レベルは1080だったかしらん?」


『はい、その通りです教官。でもそれほど強くないモンスター2匹でどれくらい上がるものなんでしょう。』


「そうね。昨日見た限りだと、1匹目討伐時と2匹目討伐時点で、ルーちゃんから感じられた魔力は比べ物にならないくらい上がっていたわ。本来勇者と言えど、そんな上がり方をするの今まで見たことなかったわ。現最強の勇者でもデビュー戦で、ザコを1~5匹倒してレベルが1上がるくらいだったらしいわよん。それで1日で10近くレベルを上げ続けたらしいわん。とは言っても、それでも私たち凡人に比べたら信じられないスピードなのよぉ。私でさえ、レベルが1000を超えてからは死に物狂いでモンスターを狩り続けて、1日かけて1上げられれば御の字だったもの。」


「教官、すごい。それでも十分バケモノ。」


「いやん、テイルちゃん。こんなか弱いレディにバケモノだなんて、んもう。」


『まあまあ、とりあえず話は測定してからにしましょう。』


ぷくっと、頬を膨らませチョウチンアンコウのような形相になっている教官を宥めながら、鑑定石に手をかざす。



名前:ルース

レベル:11680

スキル:【成長加速∞】・【思考加速∞】new・【肉体強化】new



『え?なんだこれ?』


れ、レベルが10倍以上に上がっているぞ?それになんだ?知らないスキルが増えている。スキルっていくつも身につくものなのか?と、あんぐりしてしまったが、隣では教官があんぐりを通り越して青ざめている。テイルはこの状況を呑み込めずにきょとんとしている。かわいい。


「ちょ、ちょっとルーちゃんどういうことなの!

こんなのありえないどころじゃないわよ!ザコ2匹でどうして1万以上もレベルが上がっちゃうのよおん!最前線で戦う勇者のレベルじゃないの!

で、でも確かに最初の1匹目で5000以上レベルアップしたというなら、2匹目の出来事にも説明がつくわ。一線級の勇者が放出する魔力だったしぃ。まあ、無理やり考えればありえないことじゃないわよね。スキルの影響が大きいのだろうし…。


そうよ!ありえないのはスキルの方でしょう!なんで一人で3つも表示されてるのおお。

しかも見た限りこれまた強力そうなものを…。

もしかしたら、いえ、もしかしなくてもルーちゃんはいずれ世界最強の勇者として、この戦争に終止符を打つ存在になるはずよ!


そして今回の件については王国に報告して沙汰を待つしかないわん。

今後の動きは命令の後に決まるはず。十中八九、二人とも王都へ招集でしょう。

それにテイルちゃんの事も本来は大変なことなのよぉ!ルーちゃんがとんでもなさ過ぎて霞んでしまっているけどねええん。ああ、こんなに説明臭い台詞まくし立てて疲れちゃったわあん。あたし…ルーちゃんのひざ枕で癒された・い・ぞ?きゃるん。」


しかし、教官のいう通りなら戦争に終止符云々はともかく、一気にレベルが上がりすぎて、自分の放出するエネルギーに身体が追い付かず、負荷に耐えられなくなり腕が千切れたのだと納得できる。おそらく二匹目を倒した時点で【肉体強化∞】は手に入ったのだろう。

自分のエネルギーに身体が耐えられるのかどうか、またモンスター相手に試してみるしか方法はないと思う。したがってテイルの参加は必須である。また腕が千切れたらたまらない。


それともう一つのスキル【思考加速∞】だ。

確かにこうして色々な事を考えていると、それに使っている体感時間と実際に流れている時間に齟齬を感じる。

何というか、真剣に考えれば考えるほど、周りの動きや声がだんだんゆっくりに感じられるのだ

。時間の流れが止まっていくような感覚。

なるほど自分の思考が加速されることで、相対速度が変わるのか。

これは使えるぞ。

そう、戦闘中にも関わらず心の声長すぎないか?という、バトルものにありがちな違和感を解消するにはもってこいの帳尻合わせである。



「ルース、すごい!尊敬する。それと、お腹すいた。」


『テイルありがとう、しかし教官の話じゃ君もすごいらしいじゃないか。きっと二人とも王都に行くことになるんだろうね。故郷を離れるのはさみしいけど、テイルと一緒なら乗り越えていけそうだ。これからも俺が怪我をしたらよろしく頼むよ。それと、このお菓子を食べるといい。』


「えへへ。こちらこそ、よろしく。もぐもぐ」


紅茶味のマドレーヌを両手で頬張りながらテイルは、幸せそうにその黒髪を揺らしていた。

そんなこんなで、もう体調も回復した俺は、大事をとって今日一日休みにしてもらったので、テイルと一緒に町へと出かることにしたのだった。








王都を見下ろす丘に佇む、一人の女。

美しく輝くすみれ色に伸びた髪を、風になびかせている。

「…今、お傍にまいります…。待っていてください。……それにしても序盤の話、引っ張りすぎじゃないの?わたくしの出番が遅れるじゃない!ふんがー!!」

も、もう一人のヒロイン!?

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