4.事情 sideカリナ
「聞かなくていいのか?」
そうカナタに問うとカナタはにこにこしながら言う。
「何について?ヒカルちゃんの事情?」
こくんと頷く。
「んー。聞いてもいいんだけど、あの子はきっとつらい事情を抱えていると思うし……。まあ、つらい事情を抱えてなかったらここにいないけど……。あえて、傷つけてまで聞くことは無いわ。話したいと思えるようになるまで待つつもりよ。私たちがそうだったように……。あなたはまだ名前だけは教えてくれないけどね。」
(また、その話か……。)
「あんな名前よりも、カリナのほうが自分に合っている気がする。」
仮の名だからカリナ……。自分の名前が嫌いで、ずっと名乗れなかった自分をカナタはそう呼んだ。
名前を呼ばれることが、まるで自分の存在証明のようで嬉しかった。
「そう、それは付けたかいがあったわ!」
嬉しそうにころころ笑った。
まあ、かなり適当だけどね――――そう呟いた。
「それより、あの子の能力は何かしらね。まあ、何でもいいけど……自分を苦しめる能力でないといいわ。」
(そうだ。この人は優しすぎる。この仕事に合わない程に……。)
「明日も仕事だから早くねろ。おやすみ。」
そう言って、自分の部屋に入るとベッドに入った。