23.失ったもの sideカナタ
天涯孤独になってしまった私は施設に入った。私と同じ様な境遇の子たちが集まって暮らす狭い家。
父と母を失った傷は大きかった。お母さんにいつか褒められた歌を口ずさんだ。
貧しかったから……。お金持ちじゃなかったから、不幸になった。
「絶対に金持ちと結婚してやる……。貧乏だと幸せになれない。」
小さいながらの決断は大きかった。
可愛い作り笑いと面白い作り話。
噓で塗り固めまくった自分はたちまちクラスの人気者になった。歌がうまかったのも少なからず影響した。
カメレオンのように変わる自分。
「有栖さんっておしゃべりだよね。」
良いことだと思うわ―――担任の先生はそう言った。
先生も見分けられなかった。全部が噓だと。
まあ、もう自分でもわからなくなっていた。
「カナタさんって近寄りがたいよね……。」
頑張って勉強して入った大学のサークル仲間はそう言った。
有名大学の特待生。成績優秀、スポーツ万能。礼儀正しい自分は近寄りがたい存在だった。
彼女らは知らなかった。全て小さい頃の決断による演じられたものだと。
「カナタって天然だよなぁ。」
お金持ちの婚約者はそう言った。
当たり前だ、お前と結婚出来る様に演じたキャラなのだから……。
結婚式前日、偽りの自分に微笑む彼を見て何故だかむなしく感じた。
裸足で彼の部屋から逃げ出した。あんなに金持ちになりたかったというのに、どうしても考えてしまったのだ。
今まで失った物たちを。




