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3.ねむり隊のヒツジ

 本部というだけあって、たくさんのひつじが出入りしている。大きなひつじ、小さなひつじ、新しいひつじ、古く色あせているひつじ。みんなぬいぐるみだ。


「いろんなひつじがいるもんだなあ」


 ぼくがみんなをながめていると、2号がやってきて隣に立った。


「ここには捨てられたひつじのぬいぐるみのほとんどが集まっているからね。世の中のぬいぐるみって、ひつじはそんなに多くないわよ。クマとかウサギとか、そんなのばっかり。だけど『ねむり隊』に入れるのはひつじだけなの」

「そうだよねえ。いろんな動物が跳んだら、数えるの大変だもの」

 ひつじが一匹、クマが一頭、ウサギが一羽……そんなの数えにくい。

「そういうこと。さ、訓練の時間よ。いきましょ」



      Ꮚ•ꈊ•Ꮚ



 出動までは訓練の時間だ。とっても広い部屋があって、隊ごとに訓練をしている。

 ぼくたちは一番奥のはしっこに柵を広げた。柵といっても本物じゃない。本物なんか出動するときに持っていけないからだ。使うのは、柵の絵が描かれた巻物みたいなやつだ。それを広げピンと張って、スタンドを起こして立たせる。


「整列!」


 隊長が叫ぶ。ぼくたちは隊長の前に横一列に並んだ。


「隊員1号」

「メェー」


「2号」

「メェー」


「3号」

「メェー」


「4号」

「メェー」


「よし、全員いるな。ではこれより訓練をはじめる。わしの後に続け。リズムを乱すなよ」


 柵はそれほど高いわけではないから、跳ぶのはむずかしくない。むずかしいのは、リズムよく跳ぶことだ。リズムが乱れると人はなかなか眠れない。ずっと同じリズムで跳ばなければならないのだ。隊の団結力が試される。


「はじめ!」


 隊長の合図を出すと同時に走りだした。ぼくたちは声を合わせて叫ぶ。


「ひつじが一匹」


 すると、隊長がぴょんと跳ぶ。


「ひつじが二匹」


 1号がぴょんと跳ぶ。


「ひつじが三匹」


 2号がぴょん。


「ひつじが四匹」


 3号がぴょん。


「ひつじが五匹」


 ぼくもぴょん。


「ひつじが六匹」


 隊長がぴょん。二週目だ。


 こうして順番に跳んでいく。人が眠るまで何回でも跳ぶ。たのしいけれど、大変な仕事だ。


 百匹を数えたところで、カランカランとベルがなった。出動の合図だ。

 隊長がブルルと体をふるわせて叫んだ。


「よし、みんな、出動だ! 今夜も訓練のようにリズミカルに跳んでくれ! いくぞ!」

「メェー!」


 ぼくたちはいっせいに夜空に飛び上がった。



      Ꮚ•ꈊ•Ꮚ



 目的地までは夜空を走っていく。道を走ったりしたらまだ起きている人に見つかるかもしれないからだ。見つかるとつかまってしまうかもしれない。それに、夜空を走るのは気持ちがいいし、なにより早かった。

 ただ、今日は向かい風が強くて、ぼくたちはなかなか前に進めないでいた。


「よし、わしが風よけになる。みんな、たてに並んでついてこい!」


 隊長の命令どおり、ぼくたちは行進するようにたて一列に並んだ。隊長、1号、2号、3号、4号のぼく、の順だ。直接風が当たらないから少し楽になった。


 そのときだった。ビューとひときわ強い風が吹いた。

 そして、その風でなにかが飛んできた。


「うへえ!」


 もこもこしたものがぼくの顔に張り付いている。はがそうにも意外と大きくてなかなかはがれない。


「なんだよ、これ! たすけて! 前が見えないよ!」

「どうした?」

「4号、だいじょうぶ?」


 ぼくの声をききつけてみんながもどってきた。


「な、なにか飛んできたんだ。うまくはがせないんだよ」


 すると、急にもこもこがはがされた。目の前にはもこもこをかかえた3号がいた。


「3号、ありがと……え? 3号? あれ? それって?」


 3号はぼくからはがしたもこもこをかかえたまま、出てきたばかりの本部にもどっていく。


「え? え? ええ? いまのって、3号……でしたよね?」


 そう確かめてしまうほど、いつもの3号と姿がちがったのだ。


「そうだな、3号だ」


 1号がひどくまじめな顔をしてこたえたけど、ぼくはやっぱりわからなかった。だって。


「だって、ヤギ、でしたよね?」

「そうね、ヤギね」


 2号がうなずく。


「え? ヤギなんですか?」


 ぼくは自分からヤギだといっておいて、またきいてしまった。


「え? でも、もこもこの毛皮は?」

「あれは、ユニフォームだ」


 隊長がこたえる。


「ユ、ユニフォーム?」

「そうだ、さっき4号にはりついたのがユニフォームだ。タンポポの綿毛を集めてつくったそうだ」

「いつもはそれを着ていたと? ヤギだけどひつじのかっこうをしていたということですか?」

「そうだ」


 なんということだ。メェーとなくから気づかなかった。


 みんなの話によると、ゴミ捨て場でメェメェないていたから、てっきりひつじだと思って連れ帰ってみたところ、じつはヤギだった、ということらしい。

 それでも3号はもう捨てられるのはいやだといって、それ以来ひつじとして《ねむり隊》に所属しているのだという。


 けっきょくその夜は3号をのぞく4匹で仕事を終えた。ぼくははじめての4匹体勢でふらふらになった。

 けど、ぼくが来る前は毎晩こんなだったんだ。

 とても大変だ。その大変な仕事をひつじのふりをしてまで続けてきた3号はすごいなと思った。3号がほんとうはヤギだとしっていてもひつじとして仲間でいるみんなもすごい。

 3号がひつじでいたいのなら、ぼくも、3号はひつじだと思うことにきめた。


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