プロローグ
朝起きて、歯を磨いて、朝食を食べてから学校に行く。
いつもの道のりといつもの風景。
いつもと同じ時間に学校に着き、いつもと違うHRが始まった。
「え~~皆さん。おはようございます。最近この近くで突然行方が分からなくなった人が数人います。皆さんも怪しい人を見かけたら直ぐに逃げるか警察に連絡するようにしましょう。」
「俺らもう高校生だぜセンセー」
「心配ねぇよな」「だな」
いつもと違うHRは俺の普通を壊してくれる。
そんな予感がした。
いつもと同じ様に授業が終わり、いつもと同じ様に家に帰る。
今日は何も起こらなかった。いつもと同じ。
いつもの様に布団に入り、いつもの様に眠ろうとした。
今日は、いつもと違い、なかなか寝付けなかった。
とりあえず目を開けるとそこは、いつもと違った場所だった。
『やぁ、こんばんは』
「うおっ!」
急に後ろから声をかけられた。
『羽音 甲蛾君だね?ボクは転移を司る神、ラノラインって言うんだ。さっそくなんだけどキミ?転移してみない?』
「……はぁ?」
子供が何か言っているがよく分からない。
『子供じゃないよ。これでもキミよりは長く生きているんだよ?』
こいつ、心が読めるのか!普通じゃないな
「どういう事だ?」
『おおっ、転移してくれるんだね?』
「ちげぇよ、とりあえず話だけでも聞いておこうと思っただけだ」
『うーん、しょうがないなぁ、まず君が転移する先だけどモチロン異世界だよ。キミにはアーディアルムって世界に行ってもらう。ここまでに質問は?』
異世界…アーディアルム…転移……
「特にない。続けてくれ」
『了解。んで、キミにはその世界で魔王をしてもらおうと思っている』
「ちょっと待て、魔王ってどう言うことだ?」
『ノンノン、話は最後まで聞いてよ、そこの世界って言うかどこの世界もそうなんだけど、善と悪はどちらも一定数がいてバランスをとっていないとダメなんだよ。でも、そこの世界は過去に勇者召喚が何度も行われてね、善の数が増え過ぎちゃったんだ。だから、キミには悪になってもらって世の中の善を減らしてほしいんだよ。頼めるかな?』
話が急に大きくなったな。
『あぁ、そうそう、そこは異世界だから普通じゃないものばかりで楽しいよ?それに、ボクも色々サポートするし、どう?』
「……俺がいなくなったら俺のことを知っているこっちの人はどうなる?」
『えーーとね、引っ越したって事になるよ』
「そうか……じゃあ行かせてもらう」
『ほんとに?じゃあ早速だけどスキルを三つあげるからどんなスキルがいいのか希望をどうぞ』
「……ステータスが上がるヤツはあるか?」
『あるよ最大で10倍だね』
「じゃあ2倍で」
『分かった、次は?』
「そうだな……ダンジョンを創るスキルは?」
『あるよ、制限が厳しいけどね』
「そうか、じゃあそれも」
『分かった。最後は?』
「蟲を従えるのはあるか?」
『あるよ、それでいい?』
「あぁ、ありがとな」
『うん、じゃあ送るね、楽しんできてねー』
「おう」
俺はラノラインに手を振り返した。
ここが異世界か。
ラノラインに送られた先は木々が生い茂る密林だった。
「……口癖を変えないといけないな」
俺が異世界で初めにすることは口癖を変えることだ