脾臓を食べる妖怪
高嶺の十善ほど行ったその先の、曲がりくねった沼地を猿肌と呼ぶ。猿肌には小さい集落がおり、沼地のドジョウや土壌で生活を営んであった。また、鉄や金も泥から多くとれた。
その集落は規模の割に子供が多くいた。おそらくは近親でのまぐわいがようように許されていたのだろう。ドジョウをまあ驚くほど突っ込んでいたのかもしれない。
その土地で生まれる子供にはある特徴があった。
小柄で肌の色が黄色かった。猿肌という地名もここから来たのだろう。
脾臓を食べる妖怪がおられる。名はヒダリハラと呼ばれておられた。名前の由来は、左の腹から脾臓をお食べになられるからであった。ヒルの様につんのめったお口はひんやり冷たくなさる。ヒダリハラ様には集落の子供は喜んで脾臓を捧げた。あら嬉しや。ありがとうござリ。グモ。祝には鉄の入った鉄くさい泥がゆじゃった。湯がくのに危険も多くて母親は嬉しい悲鳴じゃ。
その妖怪の噂を聞きつけたのは一人の武士様。彼の所属する組織は九十九宝具と呼ばれ、九十九もの武器の達人がおられた。その中でも特に強いだろうと噂めっぽうなのは槍の走馬と、自ら日本刀をおうちになる2代目神座、そして紙と筆で闘う《拙者の辞書には武器はない》大月であった。
槍の走馬は槍と重力を操った。重力で人は押しつぶされ、押しつぶされない人は槍で刺した。
「脾臓を食べるとは許せん。」
ヒダリハラは重力に押しつぶされてニャアと哭いた。
「猿肌の子供は血銭が血玉になっとる。脾を食べりゃあ困りゃにあ。」
「その様な口で人間の言葉をしゃべるとは、仏にもうしわけなかろうが、外道妖怪!お前が死ぬまで無飲食で殺し続けよう。殺しに集中じゃ。」
ヒダリハラ様が死んでからじゃ。子供は黄色になり、血が足りん血が足りん下さいと死んでいく。ヒダリハラ様の祟りじゃと息をハアハアさせて皆は言った。血銭が血玉になっとるのじゃ。
相馬は呑気に集落の若いオナゴと槍もうした。若くて美人が多いその女の身体やまことにハリハリしい。乳房は両の手より大きく良い匂いじゃけえ、子供もポンポン産まれた。集落に子供が多かったのはそのせいでは。
相馬は子供も女も自分の地へ連れ帰った。呪われし猿肌はサラバと響いた。
遺伝しないものは呪いと言わない。勘違いじゃろ気狂いが。
相馬の子供も猿のように黄色く腹を痛がった。簡単な怪我ですぐ死ぬは。
脾臓を食べさせるしかない。勘違いじゃ。気狂いじゃ。
相馬は子供の脾臓を食べさせるようになりたがったのだ。ヒダリハラとなったのだ。
遺伝性球状赤血球症
優性遺伝病であり、赤血球が異常な球状をしているため脾臓で破壊され貧血や黄疸を引き起こす。治療は脾臓摘出である。