助言者
曽祖父が亡くなった。
葬儀には大勢の参列者。
曽祖父は困っている人に素晴らしい助言をすることで有名だった。参列者たちは曽祖父の助言で人生を幸福にすることができた人たちだ。
「あんなにいい人はいない」
「大往生でしたねえ。最後は眠るようだったって」
「本当に、困った人を見過ごせない、素晴らしい人で」
昨日、わたしは遺品整理を手伝ったとき、小さなカセットテープを見つけた。ラベルには①1985年3月5日とあった。
カセットテープなんて見るのもさわるのも初めてだった。
なにか、特別なものが吹き込んであるのだろうか?
「ねえ、お母さん」
「なに?」
「これ、ひいじいちゃんの部屋から見つかった」
「あら。カセットテープ? また、古いわねえ」
「これってどうやったら、きけるんだろ?」
「ウォークマンがあったんじゃないの? お母さん、お客さんの相手しないといけないから、自分で探しなさい」
そう言って、喪服の親戚が集まる広間で母は筑前煮を置きに行った。
少し、祖父の部屋を探すと、カセットテープを再生するための機械が見つかった。なんていえばいいのかわからない、その機械を、ネットの動画サイトを見ながら、電池を入れて、テープを巻き戻し、A面どB面というものが何なのかもわからないわたしはやっとテープを再生することができた。
ガタン、ガチャ、という音がしてから、ひどく息を切らせた男の人の声がきこえてきた。
――あんたの言うとおりにした。そうしたら、くそったれ。あんたに相談なんかするんじゃなかった。こうなるってわかってたんだろ! わかってて、言ったんだろ! 面白がりやがって、クソ野郎! 呪ってやる。ろくな死に方はできないからな! ああ、くそ、美代子、ちくしょう。殺すつもりなんてなかったんだ、愛してたんだ。それを、あんたに言われた通りにしたら、くそくそくそっ!
バン!という大きな音。
電話が切れた、ツーツーツーという音。
「あんなにいい人はいない」
「大往生でしたねえ。最後は眠るようだったって」
「本当に、困った人を見過ごせない、素晴らしい人で」
わたしは知っている。
あれと同じテープが㊴まであることを――




