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第一話 絶望

ふと、人の感情や人間関係のいざこざを書いてみたくなったので書きました。もし良かったら読んでくれると有難いです。1話ずつの文字数は少ないのは短編にしようかなと思っているからです。ただ、気が向いたら書くようにしようかなと思っていますので、なるべく毎日投稿するようにはしますが、投稿が遅れる可能性がありますのでご了承ください。

 人生に絶望する瞬間は人それぞれだろう。

 強く信頼していた人に裏切られる、すべてがうまくいかなくなる、現状の状況に将来が見えなくなり、絶望する。

 中には、絶望など経験したことないという人もいる。けれどそんなものはこれまでに運がよかったか、そもそも目を背け続けたか、気づいていなかったかそのどれかだろう。

 また、人が幸福を感じる瞬間も多種多様だ。

 誰かにやさしくしてもらった、好きな食べ物をおなか一杯食べたなどの小さなことから、人生の目標をやり遂げた、幸せな家庭を築き上げたなど大きなものまである。

 結局何が言いたいかというと、人生とは『今を生きるこの瞬間の物語』を歩む、ということだ。



 僕は絶望していた。

 あの時こうしていれば、この時の行動を間違わなければ。そんな思考ばかり頭の中をぐるぐると廻っている。まるで、悪い虫が脳みそを駆け巡るかのように。

 僕は自分の部屋にずっとこもっている。いわゆる引きこもりだ。

 あれから、ずっと部屋から出ていない。幸いなことにもともと一人暮らしで両親からの仕送りもあって食べることに困ることはなく、邪魔をされることもなかった。

 ただ、それが同時に虚しくもあった。

 何度か、僕のアパートは3階だから飛び降りて自殺しようかと考えたこともあった。けれどそんなことをする勇気が僕にあるわけもなく、ただただ虚しさにさらされたまま一歩も動くことができなかった。

 何も考えずにいたら、腹が急に鳴った。

 僕は食物を食べる気力などないのに、生理現象のせいで空腹を感じた。それが妙に腹立たしくて一度ベッドを殴りつけた。

 けれどそんなことをしても無意味だとすぐに気づき、もしかしたら下の階の人に迷惑をかけたと思って、怒りは自己嫌悪に変わった。

 自己嫌悪はみるみる大きくなり、食べる気力はさらになくなった。

 とにかく、僕はもう何もしたくなくなった。

 考えることも、あらゆる生理現象すら、すべて無視したい。このまま、孤独死してもいいとさえ思った。

 そう思ったとき、無機質な音が鳴り響いた。けれどそれは僕には届かない。

 なのに、その後も、その音は何度もなった。まるで僕のことを急かしているようだった。あきらめて、僕はドアの前まで行く。その行為をするまでにおおよそ10分かかった。

 なのに、それなのに、音はやむことはなかった。

 だから無駄だと思いつつも怒りを抱いていた。

 それにどうせ大したことじゃないに決まっている。今更僕に用のあることなんてNHKの集金か宗教勧誘だ。

 だけど、そこにいたのは僕の予想とは大きく違った。

 可憐と表現するのがとても似合う、きれいな女子だった。素直な顔立ちで輪郭は丸く、童顔というのがまさにあっていた。制服を着ていて、そちらに目を向けると、なんと僕が自分はもう通わないと思っていた高校の制服だった。

 僕は驚き、その場に固まってしまう。もともと、人とは話さないタイプだから、自分から話をすることなどできるわけがない。

 それで、数十秒ほどお互いに見つめ合うと、いや、正確には僕が目をそらし続けたから一方的に見つめられると、彼女のほうから口を開いた。


「あの、先生からこれを渡してほしいって言われて、来ました」


 彼女は早口でそういうと手元の通学カバンから数枚ほどの紙を取り出した。いくつかのテキストが書かれていたので、きっと連絡用のプリントだろう。

 僕は何も言わずにそれを受け取った。

 けれど、彼女はまだ帰らない。

 僕は不審に思って、また数秒ほど、今度はしっかりと見つめあった。

 しばらくして、僕はこの時間の意味が分からずとても緊張してしまう。もともと彼女と話したことなど数えるほどしかない僕にとってこの時間は地獄のようだった。けれど逃げるようにこのまま去るのも気まずいので結局その場で挙動不審になってしまう。

 すると、ようやく彼女が口を開いた。


「あの、実は、本当は、あなたに用があってきたんです」


 僕は目を見開く。僕に用があってだって?そんなことありえるのか。それとも彼女がからかっているのか。

 そう思ってしまうほど僕にとって衝撃的な言葉だった。もう僕は誰にも必要とされていないと思っていたから。

 そして、彼女はその用とやらを話し始める。


「先生に君の様子を見て来いって言われて、その、別に大した用事じゃなくて」


 彼女はおどおどとした感じで話していたから緊張しているのが分かった。僕も知らない人と話すときはたとえ同じ学年、同じクラスであってもこんな感じになってしまうだろう。だから、少し安心した。彼女も同じ類だと思ったからだ。

 だから僕はその安心ゆえに口を開いた。


「…帰って」


 けれど、僕の口からこぼれ出た言葉はあまりにも棘のある口調の言葉だった。すぐに後悔が襲ってきたがもう遅かった。

 それほど、僕は他人に対して警戒していた。しすぎていた。


「…っ。ごめん、なさい」


 そう言って彼女は逃げるように去っていった。

 僕の心はまた嵐のように後悔と苦しみが吹き荒れた。

 どうして、こんなにも馬鹿なんだろう、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!!

 自己嫌悪は限界に達して、僕はその場に倒れこんだ。自らに吐き出す、数々の言葉は見事に僕の心をえぐり取った。

 もう何もしたくない。

 現実はこんなにもつらくて、なのに全く変われない僕はいらない。

 気づけば、目の前には数々の白い突起物が並んでいた。すぐにそれらは人間が自己防衛のために作ったものだと分かった。中には様々な人間がいる。今の僕にはそれらすべての人間が僕を嘲笑っているかのように思えた。

 頭の中ではそこから一歩踏み出すことだけを考えていた。

 小さくて、本当にちっぽけな一歩。

 なのに、体は動かなかった。動くことを拒んでいた。

 僕はこんなことすらできないのか。

 死ぬことも生きることもできない。本当の意味で何もできない。

 それから、何分経ったんだろう。いや、数秒かもしれないし、何時間も経っていたかもしれない。

 あれだけ、自己嫌悪に吹き荒れていた心は今は、不思議なほど穏やかだった。

 それから、おなかが減っていたことを思い出し、冷蔵庫を開けた。中には食べかけのハンバーガーが入っていた。

 それを一つ取り出し、電子レンジで温める。

 やがてチーンと音がして、僕はハンバーガーを取り出した。それをもって、ベッドに座る。

 もそっと、一口。食べた。

 何も味がしなかった。

 僕はハンバーガーを確認したけれど、いたって普通のハンバーガーだ。

 僕は食べる気をなくし、そのまま寝転がる。そして、深い深い眠りについた。

人間はとても複雑だと思うんです。この主人公も過去の後悔から、酷く落ち込んでいました。彼はこの後、どうなるのか。面白いと思ったら今後も読んでいただけると有難いです

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