第8話 計画
黒葉の話を黙って聞いていた和夜は
「それは大変でしたね。変な男に絡まれたせいで不安な生活に・・・」
と言った。内心それでも守ってくれる男が居るなら可愛い顔は羨ましいと少し思ってしまったが失礼になるので言わないのは勿論、顔にも出さないようにした。黒葉の話を聞き終わり悩んだ和夜は
「兄と騎士くんに一応また話してみます。説得は自信がないですが・・・兄が言っていたようにずっと一緒に居るのは無理でも何かあったら駆けつけると思うので!」
と言った。黒葉は
「こんなことをお願いしてごめんね。ありがとう」
と可愛い笑顔で言った。そして、急に外から騒がしい音が聞こえた。
恐ろしいことが起きた。2人の部屋の扉が急に開き最も会いたくない人が居た。
「テント?・・・どうして」
テントが居たのだ。2年前の姿のまま。その姿を見た瞬間、黒葉は恐怖で震え涙が出てきた。和夜も噂の男が話を聞き終わった瞬間に出てきて、悪いお約束フラグが立って鳥肌も立ちそうになった。テントは気味悪く笑いながら2人に歩いて近づいた。片手にはガンバの髪の毛を掴み引きずっていた。ガンバは気絶していた。ガンバ以外の黒葉親衛隊も気絶しその場で倒れていた。
テントは2年前にガンバに負けてから復讐をすることしか頭になかった。一刻でも早くやり返してしまいたかった。ただやり返すだけでは気が収まらない。ガンバの写真を貼り付けたサンドバックを殴りながら復讐を考える日々だった。モブみたいな奴に負け、好きな女を取られた悔しさだけでない。負けてから噂がすぐに広がり他の不良に馬鹿にされることが増えたからだ。忘れたくても忘れられなくなっていた。
サンドバックを殴り続けて1年以上が経過した。テントは耐えた。気合だけではガンバが勝てないように圧倒的に強くなろうとしていた。ムカつく奴に会いぶん殴った時に強くなったのは感じた。だが、まだ圧倒的に勝つには何か足りないように感じた。復讐の策もどのようにしようかと考え続けていた。そこにテントの友達がやって来た。何やら裏社会で流行っている薬らしく飲んだ者は強くなるらしい。
「1粒だけ余ったからやるよ」
と言われテントは直ぐに飲んだ。
飲んだ後、特別強くなったようには感じなかった。そんな時にまたムカつく奴を見つけた。人の体を静止させる能力があることに気付いた。理由はムカつく奴にガンを飛ばし睨み合った時、相手は焦った表情にすぐ変わった。体が動かなったのだ。誰かと目を合わせる時だけ相手を静止させることが出来ると分かった。笑いが止まらなかった。
負けてから合計2年近く経った時に復讐かつ一気に汚名返上の2つのチャンスが訪れた。駅前のレストランに黒葉と和夜が来るからである。しかも、貸し切り状態。黒葉の親衛隊を速攻で倒しガンバに圧倒的に勝ち黒葉を奪う。黒葉、ガンバ、和夜の3人を連れ去る。和夜の兄が負け知らずの強さを誇っているので和夜を人質に取れば誘き寄せて倒せる。もしかしたら伸郎だけではなく、イケメンで気に食わない騎士も来るかもしれない。それなら好都合だった。
その情報を仕入れることが出来た理由はレストランにテントの友達が受付アルバイトをしていたからである。その友達は表では見せないが裏ではテントと同じように悪いことをする奴で客の情報を平気でテントへ漏らした。だから、黒葉がそのレストランによく顔を出していることは前から知っていた。
黒葉達がレストランに入り料理を楽しんでいる頃にテントは裏口から侵入をした。表から入ると騎士に怪しまれる可能性があったからだ。そうなると面倒になる。そこまでリサーチ済みだった。
裏口から侵入したら従業員達から静かにさせるつもりだった。本来ならばそうするはずだったが必要はなくなった。客の情報を漏らしてくれた受付の友達が言っていた。レストランのオーナーや店長、料理人も金銭を渡せば見て見ぬふりをしてくれる人達だということ。そのため貸し切り状態で他に客も居ない状況を1日だけ作って貰った。無料にするから1度、同じ位の年の女性を連れて新作料理の味見をして欲しいと黒葉へ伝えて貰った。狙い通りの流れになった。高くついたが金銭を渡して良かったとテントは思い
「やっと、この時が来たな」
気味の悪い笑い声を上げながらテントは裏口から入った。黒葉親衛隊はテントやテントの仲間によって殴られ蹴られ倒された。ガンバは後でボコボコにして楽しむために目を合わせ静止させたら意識を失うように1発殴った。復讐したい相手の髪の毛を掴み引きずりながら黒葉の居る部屋へ入った。
テントは仲間と一緒に3人を連れ去った。勿論、裏口から出て行き、人気のない縄張りに向かった。そこに着き3人は腕を後ろに回され椅子と一緒にロープで縛られた。足も同じようにロープで縛られた。