第49話 縁
未来からやって来た優と純が不死長老と話をしている頃、伸郎と騎士は資料室にいた。珍しく伸郎と騎士のコンビでの任務。出発時間まで時間があったので資料を読んでいたのだ。資料室は防音なため、未来から2人の子供が爆発音を立てて登場しても聞こえなかったのだ。
伸郎と騎士が資料室で真面目に資料を読んでいる時、ドアをノックし扉を開ける者達が居た。
「邪魔してすまんの。伸郎くんと騎士くんがまだ任務に行ってなくて良かった」
不死長老が入って来た。
「この2人も連れて行って欲しい」
不死長老の後ろに優と純が居て、会釈をする。
「未来から来ました。純です。よろしくお願いします」
「優です。よろしくお願いします」
不死長老と話し合った結果、2人の任務にお邪魔することになった。名前は名乗ったらまずいだろうと思う人が居るだろうが不死長老も純も
「大丈夫じゃないかのぉ」
「別に大丈夫でしょ。全く優は考え過ぎなんだから~」
と言われ、仕方なく名乗った。未来から過去へ来ることにパラドックスの問題があるかもしれないが、この漫画世界では何とかなる。気にしない、気にしない。
伸郎の運転する車に4人は乗る。騎士は口にも顔にも出さないが初めて会った2人のことを何となく他人じゃないような不思議な感覚があった。伸郎は優と言う綺麗な姉ちゃんを車に乗せれることに喜びつつ、姿が和夜に何か似ている気がして可愛いなと呑気に思っていた。そのため、2人に陽気に話し掛ける。
「未来で怪化薬打倒委員会に入っているなら、2人も幹部なのかい?」
「いえ、まだ・・・でも!いつかなりたいです!」
「そうかー。頑張れよ!未来はどんな感じなんだ?」
という感じに談笑しながら向かった。未来から来たことも不死長老を通して話をした。本来の目的は伏せて怪化薬打倒委員会が表に出て初代幹部リーダーを務める伸郎を生で見るために来たとか、騎士にも会ってみたかったとか、それっぽい適当な理由をつけた。いつものことだが、元々、高い伸郎の鼻が話を聞くと天狗の鼻になっていた。騎士は話の内容を聞きながら、2人に対して感じる感覚が何なのかが不思議でずっと黙って考えていた。まぁ、騎士は和夜以外には基本、興味がなく無口だから、おかしくはない。おかしくはないが少し興味を示しているのは珍しいだろう。
目的の場所に着き、4人は車を降りる。今回の敵はパーシスと言う科学者。どうやら人間を改造するという怪しい研究をしている科学者で居場所も頻繁に変わる厄介者。そして、今回やっと場所を突き止めることが出来たという訳だ。怪化薬について有力な情報を握っている可能性も高い。パーシスの実験は酷く、実験されて生きて帰れる者は居ない。過去には多くの罪もない人々を騙し、連れ去って実験台にしていた。最近はもっと強くなりたいと願う悪人から要望があると願いを叶えてあげているらしい。その要望した悪人達も姿を消しているそうだ。恐らく、好きなだけ実験材料にされ、亡くなっているだろう。
建物の中へ4人は入って行く。純と優は小さいリレーで使うバトンのような物を出して構える。すると、刃物が伸びる。
「おお、2人は刀を使うのか~」
「はい!」
「金色の刀は珍しいなぁ」
「純金で作った刀なんです。優の武器は純銀です」
4人は警戒をしながら建物内を歩く。奥で科学室を見つけたので扉を開け、中を見渡し、伸郎が言った。
「科学者だから、ここに居ると思ったが・・・もしかして逃げられたか?」
「いえ、椅子を触った感じ温かいので、まだ近くには居るはずです」
と騎士は答えた。科学室には色んな物があるが伸郎が水槽を見て固まる。
「おい・・・赤ん坊にもこんなことして、実験してんのかよ・・・」
伸郎が怒りを抑えながら言う。騎士は赤ん坊を見ても同じような不思議な感覚があった。目を閉じて眠っている赤ん坊の顔には酸素マスクが付けられ、水槽の中で浮かんでいる。科学室の外に居た純と優が科学室の扉から顔を覗かせる。
「向こうの部屋から音がします」
伸郎と騎士も科学室を出て向かった。
パーシスは実験室に居たのだ。パーシスにとって楽しい実験を行っていた。
「今回も失敗かな。君の脳は私がコントロール出来るようになっちゃたからね。私にとっては成功、君にとっては失敗で残念かな。くすくす」
パーシスは楽しそうに自分が改造した人間同士を戦わせて強さの確認をしていた。実験台にされた者は思考や理性がなくなるという末路を迎えていた。パーシスの実験材料にされた者達の末路だ。実験のためなら人の生死は勿論、相手の人生なんてどうでも良い。そういう男だ。
「うん。かなり強くなった」
「楽しそうだな。人の命を持て遊んで」
伸郎が声を掛ける。伸郎の隣には騎士、後ろには純と優が居る。実はパーシスは伸郎達が建物に入る前から気付いた。声を掛けられても驚く様子もなく4人の方へ首を向ける。緑の汚い長髪、清潔感はなく頬も痩せこけおり顔色も悪かった。心なしか誰かに似ている。
「こっちにも実験台に良さそうなのが・・・自分達から来てくれるなんて」
「いつもそうやって人間を使って実験をしているんだよな」
伸郎が質問をする。
「勿論。それが私の生きがいだからね。まぁ、逃げるために場所を移動するのが面倒だから、あまり関係のない人とか、最近は使ってないけどね」
「嘘をつくな。科学室に人間の赤ん坊が居たぞ。罪のない赤ん坊まで実験に使おうとして、何とも思わないのか?」
「ああ~あれか~クスクス」
気味の悪いパーシスの笑いが実験室に響いた。
「まぁ、でも良かった。コイツ等が完成した後に来てくれて・・・前に車で誰かに襲われたことはなかったかい?」
「・・・あった・・・誰が命令したのか分からずじまいだったが・・・もしかして、お前だったのか?」
「そうだよ。暴れたら面倒だから気絶した状態で連れてきて欲しい。そしたら金をやると言ったら、食いついてな」
パーシスはコントローラーを操作した。
「君の強い体・・・やっぱり本体が欲しいな」
実験台だった改造人間達がヒーロー4人を襲う。伸郎と騎士が構えるが2人の前に純と優が出る。
「パーシスの方をお願いします」
「ここは僕達に任せて下さい」
すると、2人は手が何本もある改造人間達を素早く切っていく。
「純度100%金の切れ味!ピュアゴールド!」
「純度100、ピュアシルバー・・・」
「僕の作った純度100%金と銀の刀を食らえ!」
純に強制的に必殺技を言わせられているが、本当は恥ずかしくて言いたくない。言わないと純が寂しそうな顔をするので優は仕方なく言っている。
伸郎と騎士は2人の強さを確認するとパーシスの方へ向かう。しかし、パーシスを守るように囲む改造人間がいる。
「・・・静電気かよ」
伸郎は電気がビリビリ全身にまとった男に一瞬ビビりつつもキックをする。電気は誰だって怖い物である。
「何だ。俺には電気を通さないな。見掛け倒しかよ」
自分には効かないと安心すると躊躇なく攻撃をし倒した。そもそも、この漫画世界の最強主人公にそんなちゃちな物は通用しない。ビリビリしたオーラ何てただの飾りにしかならないのだ。
「本当に実験で強くなったの?」
騎士はいつもの怪力で全身が岩のようになった男の拳を掴んで砕いた。4人が戦っている間にパーシスは高い所へ移動し高みの見物をしていた。騎士は純と優の方を見て確認する。純は何本も手があり、その手に刀を何本も握る改造人間に苦戦をしていた。
「くそっ、僕もまだまだだな」
敵からの刀攻撃に自分も1本の刀を使ってガードをするが限界が来て刀が当たりそうになった。そんなピンチに騎士が駆けつけ敵の刀を片手、というより指2本で押さえていた。軽く力を入れると砕かれて刀を使えないようにしたところをパンチをし倒した。
「・・・助かった・・・すみません。ありがとう、ございます」
「いいや・・・別に大丈夫」
騎士は直ぐに他の敵を倒しに行き、純も別の敵を切って行く。純の後ろに1人、敵が居た。
「ファインゴールド!・・・背後にも気を付けなさいよ!」
「ありがとう」
純の後ろに居た敵は優が倒す。
「よーし!ここからは金と銀の刀を持った僕達は無敵だ!金銀コンビ!いや、金銀双子!」
「また変なネーミングを・・・」
「僕達、金銀ツイン!」
「頭が痛くなりそうだわ・・・」
ここから2人はお互いがお互いの背中を守るようにして戦い出した。
「くっ」
パーシスは一瞬だけ悔しい声を出す。伸郎はパーシスを捕まえコントロールを奪い足で踏んで破壊した。すると、改造人間達の動きが止まる。その場で座って何もしなくなった。パーシスは力で伸郎に敵わないと分かっているので暴れることはなかった。高い所から落ちるギリギリの位置なため伸郎はパーシスの腕をガッチリ掴んでいる。
「あーあ、改造人間はまだ駄目だったか。くすくす」
こんな時でもパーシスは笑っていた。
「怪化薬について知っていることはあるか?」
「あったら私を生かしてくれるのかい?」
「そんな訳ないだろ。必要な情報を聞き出し用がなくなったら、お前は殺されるだろう」
「なーんだ。じゃあ、知っているふりしても駄目か」
「知らないんだな」
「ああ、噂は聞いてるけど興味もない。だから、詳しいことは知らない・・・」
「分かった。お前は一応、怪化薬打倒委員会まで来て貰う」
「面倒だな。どうせ、最後に殺される位なら自分から死ぬよ」
「お、おい!待て!」
パーシスは高い場所から飛び降り落ちた。かなりの高さから落ちたため即死した。伸郎が腕を掴んでいたのに、なぜ落ちたのか。パーシスの腕はフィギアのように外れたのだ。自分の体を腕や足等の体のパーツを取り外しが出来るように改造していたのだ。
伸郎は急いで高い所から飛び降りて着地し、動かなくなったパーシスの体を確認する。
「本当に死んだのか?・・・」
嫌な予感がしつつも、パーシスは完全に死んでしまっていたので任務は完了である。
強、リゼ、キンバと別れた和夜はケオケオに乗り今度こそ帰ろうと思っていた。念のため、お伝えします。イカ天も一緒に居るのをお忘れなく。
「ケオケオ、また違う方向に行ってる」
「行ってみよう」
伸郎達の居る所へ2人と1匹は着き、空から様子を見ていた。
「騎士くん達も任務が終わったところなのかな。あれ?朝に会った子達かな」
「そのようだね」
和夜はもしかして、あのモデルみたいな女の子が騎士くんの運命の相手なのかと予想をした。騎士に負けない位、整った綺麗な顔。モデルのような高身長でボン!キュッ!ボン!の和夜がなりたかった体型。自分とは正反対。嬉しい、喜ばしいことだが少しだけ寂しい気持ちが出て来る。だが、それ以上に安心の方が大きく、微笑ましく見守っていた。そこで、あることに気付きケオケオから飛び降りた。
伸郎達は外に出ると不死長老へ電話をし、パーシスが亡くなったこと、赤子が居たことの報告をしていた。優は落とし物をしたことに気付き辺りを必死に見回す。気付くと皆から離れていた。落とし物は親から貰ったお守りで幸い直ぐに見つけることが出来た。そのお守りは手作りマスコットで、どことなく誰かに似ている。
優を狙う者が居た。情報になかった1人の敵が外から見て潜んでいたのだ。それは黒葉に片思いをして、黒葉を苦しめ、和夜を殴る蹴る等した男。テントだった。懲りない奴だ。
「1人、お守りを見つけるためにアイツ等から離れたのが間違いだったな。まぁ!俺が拾って、狙いやすい所に置いたんだけどな」
伸郎達が車を降りた場面からテントは見ていた。理由はたまたまパーシスの居る建物から外に出ており、見慣れない車を見かけ身を潜めたからだ。そこで、知らない女性がお守りを落としていることに気付き、居なくなったことを確認してから拾ったのだ。その大切な物を利用した。
「1人の仲間が死んだら、アイツ等はどんな反応をするかな」
伸郎を倒そう、騎士を倒そう。そんな意思はどうでも良くなり、今はただ仲間を殺されたら嫌な気持ちにさせることが出来るということだけを考えていた。とにかく何かしら、やり返してやりたいという気持ちが抑えられなかった。
「パーシスに作って貰って正解だったな。親戚に頼もしい奴が居てラッキーだぜ・・・引き金を引けばマシンガンの様に針が対象のターゲットのみ集中して当たる。1人しか出来ないのが残念だけどな。まぁ良い、1人でも無惨に肉片となった死体が出来るなら・・・」
テントは引き金を引いた。パーシスは誰かに似ていると思ったら、テントに似ている。
何かが自分に向かって勢いよく飛んで来る。それに、優は気付いたが体が動かなかった。動けなくなってしまった優の前に和夜が颯爽と着地し構えた。守って貰えるのはお守りの効果だろうか。だが、和夜は無敵返しが間に合わなかった。優は助かったが和夜はテントの攻撃が諸に当たってしまう。
「きゃあああああああ」
優は悲鳴を上げる。他の者達も信じられない光景に言葉も出ず固まる。4人と1匹が絶望する中、イカ天1人は地上に降り立って笑っていた。
「ふふふ・・・1つ忘れてないかい?」
イカ天がフィンガースナップをすると、瞬時に肉片から和夜の体へと形を生成し元に戻った。
「焦ったー・・・」
心配している人達をよそに和夜は呑気に言った。そして、構え直して変身し
「黒葉ちゃんだけでなく、この子にも危害を加えようとする何て、しつこい奴だな・・・時間差!無敵返し!」
と言った。和夜が食らった攻撃が今度はテントに当たり、テントは勿論、細々とした肉片となる。全員、和夜の方へ駆け寄る。腰を抜かし座り込んでいる優の方へ振り返り、安心させるように笑顔で
「当たったのが私で良かった良かった。怪我がないし」
と胸に軽く手を当てながら和夜が言った。
「良くねぇよ!」
「和夜ちゃん!」
「ヒヒン!ヒヒン!」
「あっ・・・ごめんごめん」
伸郎と騎士へ和夜は苦笑いで謝る。ケオケオもグイグイ近づいて来たので優しく撫でる。さりげなく、和夜を後ろから軽く抱き締める騎士。その後ろから伸郎は黙って騎士を睨みつける。この野郎とでも思っているのだろう。その様子を黙って見ている優を純が心配し声を掛ける。
「大丈夫?」
「ええ・・・びっくりしただけよ」
純は優を支えて立たせる。未来人2人は見たことない変身をした元気な姿の和夜、そんな和夜を無事で良かったと安心した表情で抱き締める騎士の様子を見ている。
「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ!そんな謝られることじゃないよ。気にしないでね」
「本当にありがとうございました」
「僕達は先に車に乗ってます」
純が優を支えながら歩き、伸郎の車に乗った。
「じゃあ、ケオケオに乗って先に行ってるね」
和夜とイカ天は先に怪化薬打倒委員会の建物へ帰ろうとする。
「またね。和夜ちゃん、イカ天に注意してね」
「おう、ソイツには本当に気を付けろよ」
「ははははは・・・強ち間違ってはないな」
「君達、酷いな。私を何だと思っているんだい」
ちなみに和夜の体の再生と同時に服やアクセサリー等の身に付けている物も再生している。これはイカ天の力なのか、マンによる漫画世界の力なのか、それは分からない。とりあえず、便利な回復能力である。




