第41話 命の行方
和夜と騎士が2人だけの感動的なムードに入る中、気配を消して忍び寄る影があった。小さいイカだ。2人は気付いていない。イカイケメンが伸郎に見つからないように小さいイカになって逃げたのだ。2人に近づき和夜の足元まで来ると人間の姿になる。2人は急にイカイケメンが現れると思わず、声が出ない程に驚く。騎士は和夜を守らなければと強く、隠すように抱き締める。
「騎士くん、逃げないで。和夜ちゃんに危害を加えに来た訳じゃないから・・・」
イカイケメンはボロボロだった。
「君のお父さんは、本当に強いね。不老不死の私も、もう死ぬだろう。お父さんの一撃で」
「何しに来たの?」
騎士はイカイケメンを睨む。そりゃ大切な人に酷いことをした相手が目の前に居るのだからそうだろう。
「私は死ぬけど、和夜ちゃんには生きてて欲しい。だから、心臓を返しに来た」
イカイケメンの手には丁寧に綺麗なケースに入った和夜の心臓が握られており、差し出した。
「えっ、心臓を返してくれるの?それでも、生きれるの?」
「うん。今、私が死ぬ前に君に心臓を返せば大丈夫」
イカイケメンが和夜へ心臓を返すために動こうとしたところ、和夜が声を掛ける。
「私は良いから・・・イカイケメン、いや、ヒドラさんは生きてよ」
その場で和夜の言葉を聞いた者は驚く。
「和夜ちゃん、どうして、そんなこと言うの?・・・」
「自分よりも私に生きてなんて、どうして」
騎士とイカイケメンは聞く。
「私は罪のないヒーローに手を出しちゃった罪がある。ヒドラさんが私にしたことは恨みたいけど、私の心が醜いことが原因で起きたこと。これからも同じことをしてしまうかもしれないし、ヒドラさんに引き出されなくても今日みたいなことはしていた可能性はある。ヒドラさん自身は善人に酷いことはしてない。なんなら私以上にヒーローしてた。悪い奴を倒して認められてる。私が生きても、もうヒーローは名乗れないし、委員会にも居られない。私は必要がなくなったから無理に生きる必要もない。だから、ヒドラさんに私の代わりとして委員会の目的とする、怪化薬の黒幕を追って欲しい」
2人が何かを言う前に口が開いた者が居た。
「もう!いい!どっちも生きろ!俺からの命令だ!どっちも生きろ!まだ間に合う!和夜!生きろ!」
「えっ、マン先生・・・パパもいつの間に」
「だいぶ前から居たぞ」
3人は気付かなかった。まさか、マンと伸郎が最初から居たことに。誰よりも早く口を開いたマンは和夜に至近距離で近づいて言う。
「あん時!俺がお前に言ったことは嘘だ!嘘!冗談だ!」
「胸を貫かれる前に言った。私は必要がな」
「そうだよ!それだよ!全部!嘘だよ!生きろ!そして、ヒーローやれ!」
「えっ」
「えっじゃない!俺が言ってるんだから聞け!生きろ!」
「わっ」
マンは和夜のおでこにくっつき、ぐいぐい来る。マンの圧、勢い、泣きながら言っているのが分かる声で全員は驚いていた。さっきから、マンには謎に水がこぼれ落ちている。イカイケメンは何この玉、と思っていた。今日が初対面だからしょうがない。
「マンの言う通りだ。まぁ、イカ野郎は始末したいと思っているが・・・和夜さんはまだ生きることが出来るはずなのに、俺達が目の前に居るのに、親より先に死のうとするなんて親不孝だぞ。和夜さんを必要としている人が1人は絶対に居る。和夜さんには俺達が居る。和夜さんの目の前に居る俺達が見えないのか?俺達を残して行って良いと思っているのか?・・・そんな訳ないだろ?」
「俺もイカは始末して良いと思うけど、和夜ちゃんが死ぬのは駄目、俺も認めない。和夜ちゃんこそ、必要だよ。俺が1番そう思っている自信がある」
いつになく落ち着いた優しい声で優しい言葉を掛けられた。マンが少し離れたので、感動する嬉しい言葉を耳に感じながら和夜は全員の顔を見ていた。生きろの圧をとても強く感じる。
「・・・そうだな。こんな終わり方するのも違うよな・・・生きるよ」
「絶対!絶対だぞ!約束だからな!二言はないからな!指切りげんまん!ハリセンボン!」
「分かってますよ!」
マンはまた和夜に至近距離で確認をした。
「よし!親より長生きしろよ。絶対にな」
「俺、和夜ちゃんの支えになれるようにもっと頑張る。一緒に居てくれて、生きてくれてありがとう」
「ありがとうは私の方だよ。皆、ごめん・・・ありがとう」
全員、笑顔になった。
良いムードから空気が一気に変わる。
「じゃあ、そこのイカ。覚悟は出来てるよな?早く和夜へ心臓を返せ。そしたら、お望み通り殺してやる」
「そうだよ。早くしてよ」
「おいおい、そちらの方になったら切替が早いな」
和夜は苦笑いでツッコんだ。2人の変わりようにイカイケメンは軽くビビっていた。冷静になったマンは落ち着いた声で言う。
「ソイツの生死は考え直そう」
「何を言ってんだ」
「さっき必死に和夜ちゃん生きてって言ってたのに。和夜ちゃんを殺しかけた、酷いことをした人を生かすのはおかしくない?」
「まぁ、落ち着け。ソイツは殺したかと思ったら殺してなかっただろ?結局はな。さっきも自分は死んでも生きて欲しいからって心臓を渡してたし、殺されかけた本人も生きてって言ってる」
「そうだね。何なら一緒に活動でも・・・」
「こいつ・・・和夜の言う通りだ」
2人は納得が行かないがイカイケメンはとりあえず生かすことにした。
「というかマン先生からスゲー水が出てるけど、お漏らし?涙?」
「どっちも違うわ!」
「うわ!?かかるから止めて!」
不死長老、黒葉、他の幹部にも事情を話す。イカイケメンが真っ当にこれからも善人を守るために活動をするなら、と認めれた。戦闘力の高さ、今までの実績から幹部として入る。一応、最初なため仮ではある。




