第3話 帰宅
午後の退屈な授業も終え放課後になった。伸郎のスマホには和夜から友達と帰ると連絡があったため1人で帰ろうとした。するとクラスの奴に話し掛けられた。
「お前スゲーな。転校早々1日もしない内に学校のボスを倒すなんて。っていうか、ありがとな。アイツ等さ、カツアゲとかしてて困ってたんだよ」
「まぁな」
伸郎の鼻は高い方だが、いつも以上に高く見える。少々、天狗になっているのだろうか。
「そう言えばスマホの待ち受けに写ってるのって誰だ?」
「ああ、むす・・・妹だよ」
「妹!?成人式みたいな着物してるから姉さんかと」
「ははははは」
うっかり娘の成人式の写真と言いそうになって伸郎は焦った。
「もしかして噂の1個下の転校生が妹か?だったら気をつけろよ。アイツ等のことだから仕返しに使われるかもしれねぇ」
「おっ!?それって騎士と一緒に居る子か?」
もう1人のクラスメイトも話し掛け窓に指を指す。外の景色を見ると校門周辺がよく見え、和夜と騎士、3人の女友達が仲良く歩いていた。
「騎士が特定の女子とくっ付いてるなんて珍しいって噂になってるぜ。狙ってた女子が悲鳴を上げている。騎士の怪力は学校のボス以上に強いし妹は大丈夫だと思うぜ?」
ちなみにこのような形だと騎士はモテるため転校して早々イケメン王子とお近づきになれた和夜は女子から酷い扱いを受ける恐れがあった。が、優秀な3人の女友達に守られていたため物が無くなる等の嫌がらせをされることは決してなかった。持つべきものは友達である。
無事に2人が帰宅後、美智子が作ってくれた夕食を食べながら本日の出来事を話していた。
「そう言えば昼に絡まれた不良、学校のボスが混じっていたみたいだが、ソイツを倒せば最終回か?」
「ふん!そんなのただのウォーミングアップにしか過ぎん。しかも物語はまだ始まったばかり。転校1日目で物語が終わるわけないだろ」
「だよな。ラスボスにしては弱すぎる。というか適当に倒した後に学校のボスだと分かったしな」
「何!?もう倒したのか!?」
「らしい」
「マジか・・・一応、強キャラ設定のはずだったんだが・・・やはり最強キャラの主人公は違うのか」
「ここに長々と居る気はないんだ。早く最終回ってやつに辿り着かせて貰う。で、元の世界へ帰る」
「・・・一応、言っておくがまだ転校し転校先のボスを倒しただけに過ぎない。最強キャラ主人公だからって油断するなよ?」
マンは念のため釘を刺したが今までにない期待をしていた。
半ば強引に和夜を家まで送って帰った騎士は1人暮らしの家でシャワーを浴びていた。格好良いシャワーシーンでも想像して欲しい。シャワーを上がった後は昔から手放すことのないハムスターのぬいぐるみに微笑みながら頭を撫でた。そのぬいぐるみはどことなく和夜に似ていた。