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第2話 転校

 高校へ転校する日の朝。正確には成人した社会人から高校生として転校をさせられる日の朝。鏡の前で和夜は悩んでいた。髪型である。おろしていくか、ハーフアップにするか、ポニーテールにするか。

「どうせ漫画の世界に来るなら見た目も可愛くして欲しかったな」

「心配しなくても和夜さんは可愛いぞ」

「親バカだな」

「どういう意味だ」

伸郎は光の玉を両手で掴み圧力をかけた。自称漫画家は余裕そうに笑い声を上げていたが簡単にヒビが入った。

「真ん中に真っすぐ線が・・・サイズも小さいし、何かのカプセルみたいで可愛い」

「なんだと!?」

「あっ、すみません!そう言えば漫画家さんで良いですか?呼び方は」

和夜は話を変えて誤魔化した。

「そうだな・・・うーん原作者、製作者、いや短く作者?この世界を作った者だしな。先生も良いな」

「漫画家だからマンガ先生、いやマン先生!・・・」

ボソッと和夜が思い付いたことを言った。

「いや、もっとこう、神秘的な名前に!っていうか漫画家のマン先生って、そのまんまだな!」

「良いじゃないかー」

笑いながら伸郎は賛成した。自称漫画家の白い玉の呼び名はマンとなった。そうこうしている内に美智子が台所から出て来た。

「学食とかあるわよね。お昼はそこで食べて来て。お金は・・・」

そうである。知らない漫画世界と言われる所へ急に連れて来られたため現金がない。

「安心しろ。最終回へ一刻も早く近づけるためだ。なるべく不自由がないように金銭などは確保してやる。だから早く漫画のストーリーを進めるんだな」

「助かった。学生時代、1人暮らしの時にした早朝の新聞配達アルバイトは回避できる」

伸郎はホッとした。


 和夜は髪をハーフアップにし、リュックを背負った。

「前髪が長いし邪魔にならないように横だけまとめて正解かな。行って来まーす」

「じゃあ行ってくるわ」

「はい、行ってらっしゃい」

「いや、お前は行かないのか!?」

マンは驚いた。美智子は家に居る気まんまんだからだ。

「だって主人公はあの人だし。問題なさそうなら私は家で家事をしてサポートするわ」

「そうか・・・まぁ良いだろう」

美智子を除いた高校生2人とマンと呼ばれる白い玉は学校へ向かった。

「パパは良いよね。目がパッチリしてるだけじゃなく長いまつ毛がくるんとしていて。私は細い一重だからなぁ。まつげは長いけどまつ毛パーマで上に上げないといけないし、ママみたいにマッサージで二重になるか細い目を脱却したいなぁ」

「パパはこんな目で嫌だ」

「プププ、うわっ!?やめろ!」

伸郎はまたマンを鷲掴みにした。


 学校へ到着後は職員室で先生に挨拶をし、それぞれの教室へ向かった。和夜は1年、伸郎は2年の教室へ入った。マンの命令で1歳差の兄弟として転校したのだ。マンはこっそり主人公である伸郎を見張るつもりだったが和夜に変更をした。和夜を見つめる男が居たからである。面白いことが起こる予感がして追った。


 「初めまして、松石和夜です。宜しくお願いします」

人見知りで人前に出ることが苦手な和夜だが無事に挨拶を終え席に着いた。まさかの番長席だったため私もバトルキャラになれるんじゃね?と興奮した。1時限目のチャイムが鳴ったが授業は始まらなかった。教科担任が風邪で休みらしい。転校早々、自習である。空を見て眠くなっていた所、

「初めまして。私はみなみ。宜しくね」

いかにも可愛いJK、洒落れた淡いピンク色のボブの女性が話し掛けてくれた。自分から話し掛けるのが苦手な和夜はとても嬉しかった。

「2つ結びのこの子は茅野、眼鏡をしている方はメガネって言うの」

「宜しくね」

「どうも、メガネです」

無事に和夜は友達が出来た。初めて会った気がしないのが不思議だったが打ち解けやすくて良かった。


 一方、伸郎の教室は数学の授業をしており主人公は寝ていた。机に伏せて寝ていた。彼は学生時代、授業の8割は寝ていたのでしょうがないのかもしれない。それでもテストの点数は90点を下回ることはなかった。


 昼休みになると和夜は新しく出来た友達と学食へ向かうために席を立った。彼女は少しショックを受けた。初めて出来た友達が自分より身長が高かったことにだ。メガネ以外は身長があまり高くない印象があり勝っている自信があったのだ。しかし、すぐに機嫌を取り戻した。念願の漫画世界に来たら1度は絶対に食べたい

「漫画肉!」

があったからだ。メガネと一緒に目を輝かせハイタッチをし肩を組み海賊のテンションで和夜は言った。

「さぁ行こう!我々のお宝、漫画肉を求めて」

「おー!」

和夜のテンションにメガネも乗っかる。肩を組むのを1度止め和夜が学食のおばちゃんに話し掛けようとしたところ不注意で何かにぶつかった。

「すみません!」

「てめー、何すんだよ。いてーじゃねぇか」

不良に絡まれた。昔ながらの王道スタンダード、随分古風な不良に絡まれた。テレビや漫画では笑って見ていられるが実際に自分が相手から見降ろされると怖く、うわー、やばい、やっちゃたー、これあかん、パパー、ヘルプミーと心の中で漫画世界の主人公である伸郎に助けを求めた。が、残念ながら学食にはまだ居なかった。3人の友達は和夜を助けようと必死だったが和夜が不良に囲まれている状態のため、どうしたら良いのか分からずパニックになっていた。そこへ爽やかに救世主、いや王子が現れた。

「まさか学校1のイケメン王子が来るとは、おめでとう。」

「ありがとう?でも、やり過ぎなようなぁ。王子?そういう名前なの?」

トラブルは解決した。不良はおとなしく倒れていた。王子がボコボコにしたのである。しかも顔に似合わずパワー系、力技で倒したのである。傷1つ付いていないどころか息切れもしていないのは驚きだ。この男のパンチは食らいたくないだろう。ちなみに和夜を見つめていた男である。

「怪我はない?」

「はい!ないです!ありがとうございます!」

「お昼、一緒に食べよう」

「はい!えっ?」

和夜が南を見たら頑張れよという感じでグッジョブサインをしていた。後から聞いたが王子は稲葉騎士いなばきしという名前で学校1のイケメンで有名らしい。黒髪マッシュで色黒、180cmを超える高身長だった。イケメンが気に食わないと喧嘩を申し出る輩も居るが適当に返り討ちにしているそうだ。当たり前のように女子にモテるが恋愛に興味はないのか彼女等は居ないそうだ。いわゆる無気力系男子なのだろうか?なんて恋愛漫画でよくありそうな設定だろう、と和夜は思った。和夜には勿体ないな、とこっそり覗くマンは思った。身長に関しては190cmになりたかったがなれず180cm手前で止まった伸郎が羨ましがりそうだ。


 和夜と騎士が隣同士で昼食を食べているのを3人の娘達は微笑ましそうに見ていた。ガッツリと向かいの席でだ。


 なぜ学食に伸郎が居ないのかというと昼休みに入った瞬間、クラスの不良に絡まれたのである。親子だからかほぼ同じタイミングで不良に絡まれていた。

「てめー、転校早々の授業で寝てたな」

「結構、格好良いからって調子に乗りやがって。ただでさえ騎士も気に食わねぇのに。」

「なんだ?俺、腹が減ってんだよ。そこに居られると学食を食いに行けないから、どいてくんね?」

早く学食へ行きたい伸郎は不良を避けようとするが囲まれて前を進めなくなってしまった。

「話なら飯の後にしてくれねぇか」

「逃がさねぇぞ。お前、女子に裏で格好良いって言われて調子に乗ってんだろ。言われねぇようにしてやる」

「俺はお前の太眉やパッチリした目より学校のボスの方が格好良いと思うけどな」

「何か俺、褒めれてる?僻みか?」

不良は伸郎に殴り掛かったが普通に片手で何食わぬ顔で受け止められてしまった。一斉に不良が攻撃を仕掛けたが不良の山が出来るだけだった。その中に学校のボスも然り気無く居た。伸郎は学生時代に鍛え上げた柔道技をメインに秒で片づけた。


 学食に辿り着いた伸郎はラーメンを注文し和夜を見つけ軽く手を振った。友達との時間を邪魔する訳にはいかないと思い軽い挨拶だけにするつもりだった。ある男が娘に近づき過ぎてなければ。その男を軽く睨む。先にコミュ力の高い南が口を開いた。

「和夜、その人は知り合い?」

「うん、パ・・・父、じゃなくて兄貴だよ。1つ上の兄さん。にいにだ。にいに」

「こんにちは。和夜の兄の伸郎です。宜しく。さっきからそこの男が和夜に絡んでるように見えたんだが」

「絡んでるって何よ。違うよ。実はさっき不良にぶつかって絡まれて困ってる時に助けて貰ったんだ」

先ほどの焦りから一変、笑いながら和夜は説明をした。

「そうか。チンピラじゃないなら良かった。すまんね。邪魔して」

「騎士と言います。よろしくお願いします。お兄さん」

爽やかに騎士が挨拶をした。無気力系男子みたいな雰囲気を打ち消すほど爽やかな笑顔だ。伸郎は複雑な気持ちだったがそもそも和夜の邪魔をするつもりはなかったので立ち去った。悪い奴ではなさそうで安心した。


 和夜に絡んだ不良は起き上がったが即、柔道技に苦しめられるのであった。

「やり過ぎなようなぁ。知らない、知らない」

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