第11話 入院生活
迅速に救急車を呼び怪我人は運ばれた。勿論、和夜とテントとその手下、3人全員入院生活だ。3人が同じ病院のリスクがあったが黒葉の親が病院を経営しているらしく和夜のみそこへ移動した。そこの病院では入院部屋が数多くあり、黒葉は親に和夜が体を張って守ってくれたことを話したところ何と
「特別室なんて申し訳ないな」
特別室だったのだ。和夜はベットに安静に寝た状態で黒葉に感謝をした。黒葉は泣きながら
「助けてくれてありがとう」
と言った。その光景を見て伸郎が美智子へ声を掛けた。
「リンゴでも切ってやれ」
「そうね」
「あっ良ければ私が!」
と黒葉が言った。それに負けじと騎士が言った。
「いえ、俺が切りますよ。和夜ちゃん、ハムスター型にするね」
「ちょっと騎士、入って来ないでよ」
「落ち着いてくれ。というかウサギじゃなくてハムスターなのすごいな」
黒葉と騎士が和夜の取り合いで争い和夜が声を掛けた。2人が争っている間に料理上手のメガネがリンゴを切り和夜の口へ詰めるだけ詰め込んでいた。南と茅野が詰め込み過ぎとツッコミを入れる。ガンバと黒葉親衛隊も会話へ入って来た。
「和夜さん!何度も言うが黒葉様を守ってくれて本当にありがとう!俺も一緒に居たのに怪我をさせてしまってごめん!」
「黒葉様を体を張って守って頂き誠にありがとうございます!」
「良ければ是非!我々の親衛隊に!」
「oh・・・しんへんたいにははひらないかな」
とリンゴをもぐもぐさせながら和夜が答えた。黒葉達に騎士が言った。
「また怪我させる気?止めてよ」
「そんなことはもうさせないわよ!」
「お前!いちいち黒葉様に盾突くな!」
また喧嘩になってしまった。リンゴを呑み込んだ和夜は
「ちょっとー、ここ病院ー、平和にー」
と言い頭を抱えそうになる。
伸郎と美智子は友達が多く集まった状況のため
「俺達はそろそろ行くわ。明日もまた来る。その時に必要なのがあれば言ってくれ」
「分かった。また明日ね」
という会話をして帰宅した。
南と茅野、メガネはお互いの顔を見て頷き合い、代表して南が声を出した。
「はい、皆そろそろ帰ろうね。和夜が休みたくても休めなくなるから」
と言って全員を追い出した。部屋の外に出た後に黒葉が
「じゃあね、皆!ここの病院は24時間付き添いOK。それも私の親の病院だから私が和夜に付き添うわ」
と言い騎士に勝ち誇った顔をしていた。それを見た茅野が言った。
「うわぁ・・・2人の間に稲妻が見える。」
「ライバルが出来たか・・・」
と言った南は良いことを思い付き黒葉に話し掛けた。
「黒葉さん。こんなお願いするのは申し訳ないのですが・・・騎士も付き添いさせてあげれないでしょうか?」
「えっ!?」
「騎士はいつも和夜と一緒に居るし、和夜も居た方が安心できると思うんです」
「そう・・・そうね」
黒葉は和夜に感謝していた。自分が殴られてまで守ってくれる女性に感動した。仲良くなりたいと思っていた。しかし、自分は最近会って話したばかりの人だと言うことを思い冷静になり適度にお見舞いしようと思い直した。
「でも和夜は黒葉さんも一緒に居て欲しいと思うので顔は出してあげて下さい!和夜をお願いします!」
「ええ」
と南が言ったことに黒葉は笑顔で頷いた。そんなことが勝手に決まっているとは知らずに和夜はテレビを見ていた。テレビを見ているが実は頭の中でずっと自分の奥義のことを考えていた。
和夜の所へ騎士と黒葉、南が部屋に入って来た。扉から茅野とメガネが顔を覗かせ様子を見ている。すぐに戻って来たことを不思議に思い聞いた。
「どうしたの?」
「騎士が24時間付き添いしてくれるってさ」
「・・・はい?」
南が答えたことに和夜は呆気に取られた。そして、黒葉も話し出した。
「ここの病院は付き添い人が来ても大丈夫なようにお風呂やベットとか色々、整ってて24時間付き添いしても良いのよ。私も来るようにするからね」
「・・・それは・・・良かった・・・いやでも申し訳ないし」
和夜は不安でしかなかったので断ろうと言いかけた時に騎士は言った。
「もし、また変な奴が来た時に守りたい。何かあれば俺に言ってね」
「あっ・・・うん」
和夜は何か圧を感じたので断るのは諦めた。
幸いなのか不幸なのか長期休みに突入したため和夜の入院に毎日ずっと騎士は傍に居た。全身が痛むため身動きが取れない和夜の為に騎士はご飯を食べさせていた。これは一見、微笑ましく見える人もいるかもしれないが和夜からすると堪ったもんじゃない。付き合ってもないイケメンかつ未成年からご飯を食べさせて貰うことに謎の罪の意識を感じていた。それでも騎士の圧に負け断れずにいた。
騎士が和夜のために一生懸命に世話をしている様子を南、茅野、メガネは青春を感じながら見ていた。
「上手く行っているようで良かったよ」
「止めてくれー」
南のからかいに和夜は反応に困るのであった。
3人が帰った後はまた2人きり、夕食を食べた後に少し談笑し眠りについた。和夜は珍しく夢を見た。テントが出てくる夢だ。悪夢である。殴られ蹴られのトラウマが再現された映像だったからだ。そのため夜中に目が覚めてしまった。目がビッショリ濡れていた。左奥を見ると騎士が電気スタンドを照らしながら何やら真剣に本を読んでいた。和夜の視線に直ぐ騎士が気づいた。
「ごめん、もしかして眩しかった?」
「いや大丈夫だよ。光はここまで来ないし、何か目が覚めちゃっただけだから」
騎士は部屋の電気を付け和夜へ近づき、また気づいてしまった。右手を和夜の顔に当て
「目が濡れてるけど・・・」
と心配そうに聞いた。和夜はあくびで誤魔化そうか迷ったが無理だと思い笑いながら
「いやぁ、何か嫌な夢を見ちゃってさ~。涙で手を汚しちゃってごめんね」
と恥ずかしそうに言った。
「汚れてないよ」
騎士は爽やかな笑顔で答えた。和夜の夢に関して何かを悟ったのか、それ以上は聞かなかった。和夜は窓を見ながら言った。
「もう少しで月が真ん丸になるね」
「そうだね」
「何回か言っちゃているけど、せっかくの長期休みなのにごめんね。ありがとう」
「俺が和夜ちゃんを守りたくてやっていることだから大丈夫だよ。あの時、俺がもっと早く気付いて駆けつけていれば良かったんだけど・・・ごめん」
「いや、騎士くんが謝ることじゃ。でも、そんな風に気を使ってくれてありがとう」
真剣な表情の騎士に和夜が笑顔で答える。すると、騎士は自分の荷物からある物を取り出した。それは和夜にどことなく似ているハムスターのぬいぐるみで和夜の枕元に置き言った。
「ここに置いても良い?」
「えっ、良いの?」
「うん」
和夜はぬいぐるみと騎士、どちらのお陰か分からないが不思議と直ぐに安眠が出来た。テントが騎士にボコボコに成敗され、上から大きなハムスターが落ちてテントを潰す面白い夢を見ていた。
騎士は和夜が眠りにつくと本を読むのを再開した。読んでいる本は柔道、空手、ボクシング等の格闘技に関するものばかりだった。今まで格闘技なんて学んだことはなかった。不良に絡まれた時には自慢のパワー、力の強さでパンチやキックをして普通に自己防衛をして生活することが出来ていたからである。テントに連れ去られた和夜の元へ走り邪魔な敵を蹴散らす時もそうだった。一緒に居た伸郎は騎士を見てパワーは自分以上なのではないかと思った。そのため和夜を救出し入院が一段落した後に話し掛けた。
「お前、今まで力だけでどうにかしてただろ。何か1つでも格闘技をやって、技を身につけておいた方が良い」
伸郎は騎士へアドバイスをした。騎士はすぐに様々な格闘技の本を読んだり動画を見たり勉強を始めたのだ。
「今度は・・・絶対に守る・・・」
眠りに付く和夜を見て誓っていた。




