3 落ちこぼれのクラス
桜散る季節。
でかい(説明不要)
え、何のことかって、そりゃ学園の校舎のこと。
私の前に聳え立つのは、上里ダンジョン学園の本校舎。国内唯一のセカンド育成高等学校だ。
旧帝大のごとき威容を誇るこの高校の存在は、それだけこの世界でダンジョン対策に力が入れられている証拠だろう。まぁ実際滅びかけているからね、世界。
え、上里が何かって、知らん(威圧)、というか普通にハズイね。
「なに突っ立てるんだよ、さっさと入ろうぜ」
「君は、ドラドラ!」
「…人をダンジョンのモンスターみたいに呼ぶなし、ほれ、行くぞ」
「はーい」
というわけで、ドラドラ(実はほぼ使ってないあだ名)と一緒に学園の正門
をくぐる。いざ入学式へ。
「本学園は、英雄、上里天城氏を…」
校長の話が長いのは時代が変わってもそうなのねぇ。みんな眠そうだよ。
「にしても、英雄ねぇ」
「どうした、天城?」
「いやドラドラ、仮にも少年兵を英雄扱いはねぇ」
倫理観解とかないんかね?
「…でも実際英雄であることは揺るがないだろう?」
「ふーん」
まぁいいや、前世は前世、今の私はただの千歳天城だ。
「そういえばクラス分けってどうなっているの?」
「知らないのか、天城、例年通りならGIW持ちを各クラス一人配置して、3~4クラスになるとか因みに1クラスから順番に優秀な人材を振り分けるらしいぞ」
「…入学時から格付けされるのね」
「しょうがないだろう?ダンジョンには精鋭が求められるからな?この学園に落ちこぼれの居場所はないんだとよ」
「そう」
「おう、でもなんと今年度はGIW持ちが5人いるらしくてな?」
「へー、じゃあ、5クラスになるの?」
「いや4クラスらしいぞ、1クラスだけ、GIW持ちが二人になるとか」
「む、そうなるとtier3 GIWの私がどこかに放り込まれるのかな?」
「ああ、恐らくな、なんたって天城、お前、入試で手を抜いただろ」
「さあね」
「全く…こいつから感じる、そこはかとない自信はなんなのだろうな」
そんなこんな、雑談していたら入学式は終わっていた。
席を立とうとするとスマホが震えた。なんだろう?
とりま、ポケットから取り出してみてみる。
「…まじ」
「どうした」
私は生徒手帳代わりのスマホに送られてきたクラス割情報に眉を顰める。
「お、クラス分けか、む?天城、お前、4組のクラスリーダーじゃないか」
「むぅ、てっきりGIW持ち二人のクラスに放り込まれると思ったのに」
クラスリーダー、しかも推定劣等生クラスの、絶対めんどうくさいやつだ。
「で、俺は1組か」
「うん?隆二がクラスリーダー」
「いや、どうやら他の奴らしい」
「なるほど、当たりは隆二が引いたのね」
「そうみたいだな」
そうして隆二と別れて、私は自分の配属されたクラスへと向かった。
「諸君、私が君たち4組の担任を務める、新谷彩花だ、以後よろしく」
そう、スーツ姿の女性が言う、見た所、20代後半くらいかな?
「まず、クラスリーダー、上里天城、前へ出ろ」
…私?まあ取り敢えず…いくか
「はい、何でしょうか、先生」
席を立ちクラスメイトが見守る中、教壇の前に立つ。
その瞬間。
ドンッ
空気が破裂したような音。
蹴り、側頭部。
わーお。
「【ヘラクレス】起動」
それを寸前で受け止める、危ないねぇ、いきなり体罰ですか?
蹴りを放った犯人、担任の新谷彩花が足を戻しながら言う。
「なぜ?反撃をしない」
え、なぜって?
「別に、必要性を感じなかったので…」
どうせ、劣等生たちの見せしめにしたいとかそんな目的でしょう?
「…ふむ、確かに今の反応は素晴らしかった、GIWを瞬時に起動した判断は正しい、今の私の上段蹴りは、生身では受け止められない性質の攻撃だからな」
そんな危ない攻撃、不意打ちで放つなし…
「それはどうも、先生」
「だが、その後、すぐに反撃転じないのはよろしくない、千歳天城、それゆえに君はこの劣等クラスに押し込められたのだ」
劣等クラス、そう、先生は言い放ち、クラスがにわかに騒がしくなる。
「覚悟がない、やる気がない、そんな出来損ないも当然、無能に等しいのだ」
「随分、厳しい教育方針ですね」
「そしてそれ以外の者は、さらに能力すらない、新の無能だ」
…ふーむ、てっきり落ちこぼれクラスを鼓舞するかと思ったのに、むしろ反目しあうように仕向けるのか。過激だなぁ。
「私の仕事は、そんな無能共をせめて肉盾に役割ぐらいこなせるように仕上げることだ、以上、解散」
いや、ホントに過激というか、大丈夫?この国?てか世界?
「待ってください!」
すると一人の女子生徒が立ち上がる。
「なんだね、剣城美里」
「私は無能などではありません!」
「それは君が判断することではないよ」
ほーら、4クラスとは言え一応、エリートを自負している子供たちだからね?そのちっぽけなプライド黙ってないでしょ。
「では、証明します」
「ほう?どうやってだ?」
「そこの能力だけの無能とやらのクラスリーダーを潰して」
…
…え、私?というか、どいつもこいつも過激すぎない???
「いやなんで、わた」
「いいだろう」
why?
「これから千歳と剣城のクラスリーダーの座を掛け模擬試合を行う…存分に蹴り落としあい、這い上がってこい!時間は伊地知時間後!第二演習室で、だ、4クラスは全員見学必須とする!」
「…別に、クラスリーダーの座が欲しいなら」
「以上、解散!」
そう言い放って先生は教室を出ていた。
…ほーら、面倒なことになった。
「千歳天城!覚悟しなさい!」
そしてこのなんとか城さんは何で、こんな私に敵意を抱いているし…