表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第三章 ファイブソウルズ ――旧市街抗争編・龍尾vs龍王――
64/287

第六十四話 フィオナと稲葉

 フィオナ=ラクルテルと稲葉晃司(いなばこうじ)はA級ギフターだが、協会内のランキングで上位に位置しており、AA級への昇格が近いと噂されている。


 ギフターの等級のトップがSSS(トリプルエス)級で、その下はSS(ダブルエス)級、S級、AAA(トリプルエー)級、AA(ダブルエー)級と続くが、A級からが長いのである。特にAAA級から上になると、単純な力の差ではなくなっており、実力的には団子状態になっているのだ。


 現在、協会(トクノー)でトップクラスの実力を持つと言われている異人は、アルテミシア騎士団長のクートー=インフェリアである。もし、彼がはえぬきの協会員なら等級はS級よりも上かもしれなかった。


 フィオナと稲葉は東銀を巡回していた。フィオナは銀髪の少女で、稲葉はウェーブがかかった茶髪のイケメンである。


「おい、ラクルテル。お前、クートーさんから訓練受けているんだろ? どんな感じだよ」


 稲葉はフィオナより年上だが、同時期にA級に昇格している。いわゆる同期だ。彼は自分と同じサイコキネシスを使うクートーを尊敬していた。あわよくばS級の恩恵にあやかりたい思惑もある。


「……答える義務はないわ。そもそも……なんで南じゃなくて、あんたなんかと……。フェルディナンには断固抗議する……」


 隣を歩いているフィオナは素っ気なく答えた。腰にはレイピアを携えている。ギフターの特権により銃刀法違反にはならない。


「うるせぇな。言っておくが、歳は俺の方が上だからな。敬語使え! 敬語を!」


 稲葉とフィオナはサイコキネシスとテレキネシスを使う。同じ無属性能力であり、相性は悪くない。


「南と朱雀さんは難民キャンプね……。大丈夫かしら」


 フィオナは心ここにあらず、である。普段から感情を表に出さないクールな性格だが、今日はそれに拍車がかかっている。


「お前も朱雀も黒川に構い過ぎだろ。副会長の点数稼ぎか? あの人は弟好きで有名だから、逆効果だぞ?」


 稲葉は最近A級に昇格した黒川南を嫌っている。副会長の亜梨沙の弟であることも気に入らない。フィオナは稲葉を睨んで言った。


「……私は朱雀さんほど腹黒くないわ。別に私は既に副会長から嫌われているし。……南は、何か放っておけない……かわいい」


「かわいい? お前の美的センスどうなってんだ? クソガキだろ、あれは。お前等の感覚は理解できん。したくもねぇ」


「……南には私が必要なの」


「お前、それ! 典型的な駄目な関係だろ。意外とそういう女か? ダメ男に貢いでんじゃねぇぞ」


 二人で東銀を歩いて行くと、明らかにカタギではない男の姿が交差点の向こうに見えた。その男は黒髪のツーブロック、筋肉質で背が高い。黒いタンクトップから分厚い胸板が見えている。


「おい、ラクルテル。あれは龍王(ドラキン)の後藤じゃねぇか?」


「……そうね。異人喫茶の爆破事件で警察に捕まったって聞いたけれど……」


 後藤は【鬼火(フレイム)】の異名を持つストレンジャーである。ライターの火を自在に操る異能を使う。広い定義ではパイロ系のエレメンターに属する男だ。反社組織[龍王]の武闘派リーダーである。


 後藤はタバコを吸いながら、緑色の髪をした若者と会話している。若者は本革の黒いマスクを着けていていかにもヤンキーのような外見である。


「なんだぁ? あの緑アタマは。ラクルテル、後藤と話しているアホは誰だ? 龍王の構成員か?」


「……知らない。後藤と話しているんだから、そうなんじゃない?」


「ファイブソウルズだけでなく、龍王と龍尾の抗争も重要事項だったな。今、後藤に誰が張り付いてんだ? 羽生(はぶ)か? ブリュンヒルトか?」


 稲葉は態度が悪いが、仕事には誠実な男である。しかし、熱血漢で融通が利かない。フィオナは溜息をついた。


「……そんなの知らない。……ギフター同士だって情報を全て共有しているわけじゃないもの……本部に聞けば?」


 フィオナの返答に稲葉は苛ついている。舌打ちをすると後藤達の方へ歩き出した。


「そんな時間ないだろ。事件は起こってからでは遅いんだ。奴を尾行する。お前は勝手にしろ」


 稲葉はそう吐き捨てると振り返りもせずに行ってしまった。


「はぁ……猪突猛進男ちょとつもうしんおとこ


 フィオナは先走る稲葉の後を追った。稲葉は実力者だが、直情的に行動する。そこに隙がないとは言い切れない。交差点の向こうで後藤が裏道に入った。緑髪の男は後藤と別れて大通りの方へ歩いて行く。二人は後藤の方の尾行を開始したのであった。

【参照】

異人喫茶の事件→第三十話 鬼火の後藤

フェルディナンについて→第二十四話 ブラコンの副会長

ファイブソウルズについて→第五十二話 ファイブソウルズ

稲葉について→第五十六話 異能訓練校

クートーについて→第五十七話 アルテミシア騎士団長

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ