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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第二十五章 サイレントキラー ――氷川四中抗争編――
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第三百七十八話 中学生の密売ネットワーク

 シンユーはフェイントを入れながら殴りかかった。我流のシュウとは異なり中国武術の基礎ができていて、その拳は最短距離を走る。


 しかし、ソジュンは冷静に視ていた。最小限の動きで頭部をずらす。パシッ――前髪の数本を掠って拳が空を切り、足をかけられた。「うわっ!」シンユーの軸足が地面を失い激しく転倒する。


「硬気功ですか。拳を硬化することに意識を集中しすぎています。自慢の拳速が落ちていますよ」


 シュウは悔しそうにうずくまるシンユーを見た。敵のはずだが、やられた姿を見ると何故か腹が立った。


「きみはどうしますか?」


 ソジュンの目が金色のマナで覆われていた。


鷹眼(ようがん)>――俯瞰的な視野を得る眼術だが動体視力も向上する。


(シンユーなんてどうでもいいんだが、なんかムカつくな)


 改めてソジュンを視る。淀みなく流れるマナ。天性を感じさせるマナ・コントロール。引くが正解だろうがシュウはそうしなかった。


「ぶっ倒す!」


発電(エレクトリ)


 電気のマナで身体能力を向上させ、電光石火の踏み込みで肉薄する。ソジュンは呼応するように右手で印を切った。するとシュウの足元に小規模のマナ壁が生成される。


「げっ!」


 シュウは無理に避けようとして体勢を崩す。その背中をトンッと押されて派手に転がった。一回転して視界に空が入る。ソジュンはにこやかに言った。


「きみは真っ直ぐすぎます。速くても読みやすい。それでは(エレキ)の持ち腐れです」


「く、くそ」


「おや?」


 妙な気配(マナ)を感じて振り向いた。少し先の茂みにリンが立っている。ソジュンの視線が意味することに気が付いてシュウは慌てて立ち上がった。


「あ、あいつは俺の妹だ! 抗争には関係ねーよ! やるなら俺をやれ!」


「あはは、勘違いしないでください。龍尾は中学生の抗争に興味はありません。先輩の命令でサイレントキラーの調査をしていただけです。よければ龍尾に新卒として就職してほしいなぁーと。それでは」


 ソジュンは笑顔で会釈をすると去っていった。最後まで爽やかで反社の男には見えなかった。リンは小走りで駆け寄ると俯きながらシュウの袖を掴んだ。



 ◆



 氷川西中学校の体育館裏に不良グループが集まっている。朝礼をサボってタバコを吸っていた。リーダーの秋野は髪をブルーに染めて、濃紺のロング丈セーラー服を着ている。


「てゆーか、お前らはいつ南中を落とすんだよ! あぁん?」


 秋野は念動力系(サイコキネシス)の異人で西中のトップに立っていた。学ランの不良達に囲まれて女王のように振る舞っている。舎弟の一人が怯えながら答えた。


「いやいや、姐さん。南中のシュウが強すぎるんすよ。最初はスタンガンを隠し持ってやがるなぁと思っていたんだけど、ありゃエレキ系のマナでした。速いし怪力だし、手がつけられないっす」


 目の上に青アザをこしらえている。シュウにやられたらしく既に戦意を喪失していた。秋野は溜息と一緒にタバコの煙を吐いた。


「あんまり情けねぇとカイスの旦那に殴られんぞ?」


 カイスは虎爪(バグナク)の構成員である。ヒョロッと背が高く目つきが鋭い男だ。秋野が窓口となりドラグラムで連絡を取り合っている。


「ねえ、姐御ぉー。前から思ってたんすけど、何でガキの喧嘩に半グレが口出しするんすかぁ?」


 納得できないという風にぼやく。秋野は天の邪鬼のように笑うと右手を筒状にして口元へ持っていった。


「コレだろ?」


「ヤ、ヤクっすか……」


「西中が異人街を仕切れば、アタシ等がヤク密売のネットワークになるのさ。虎爪はそれが欲しいんだ」


「そりゃマズイっす! トカゲの尻尾切りに遭いますよ! シクって捕まるのは俺達だ!」


「あは。中学生が捕まったって少年法で余裕だし、協会や警察のマークも甘いからねぇ」


 秋野はタバコを地面に投げるとグリグリ踏み潰した。


「リスク込みの報酬は貰っている。既にいくつか捌いたよ。アタシが最近お前らにメシを奢っているのは稼いでいるからなんだ。南中を絞めればもっと派手にやれるぜ。毎日焼き肉でも食うか?」


 表情を曇らせる不良達を見て秋野は言った。


「アタシ達は異人さ。進学してもクソみてーな人生になることは目に見えている。異能なんて反社の戦闘員にしか需要ねーんだ。分かるか? これは就活の一環なのさ。お前らもアタシに続きな。出世したら面倒みてやんよ」


 秋野は屈折した笑みを浮かべている。尖ったガラス細工のような少女だった。環境が違えば目を引く美人だったかもしれない。


「そう言えばさぁ。シュウには可愛い妹がいたっけねぇ」


 二本目のタバコに火を点けながら呟いた。

【参照】

鷹眼→第九十六話 鷹眼のソジュン

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