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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十五章 神威計画 ――中浦公園抗争編・神威vs異人狩り――
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第二百六十九話 雨夜と指切りげんまん

 雨夜は南の父親について話す。


「黒川家当主、黒川残月(くろかわざんげつ)さん。協会に三名しかいないSS級(ダブルエス)ギフターで、間違いなく最強の一角です。アルテミシア騎士団長と並ぶ強者ですね。残月さんは十大異人で二位。三位のランさんより上なのです」


「へー、師匠より強いのか。なるほどね、南は闇の御曹司(ぼっちゃん)ってとこか。水門の姫(おまえ)とは随分違うよな。仲良いのか?」


「……私は副会長の亜梨沙さんや南さんに嫌われていますよ。特に亜梨沙さんは、その時が来れば躊躇せずに私を殺すでしょう……仕方ありません。宿命というものです」


 雨夜が寂しそうに目を伏せた。しばらく沈黙が続く。そこで源が口を開いた。


「少々脱線しましたが、問題は高原家にアイス系の異能が発現したということです。その事実を本家に近しい者は看過できない。氷結能力(アイスキネシス)は呪われた血統ですから。氷雨様は表に立つことを許されませんでした。そして失踪してしまわれたのです」


 これまで雨夜の強すぎる使命感の理由が分からなかった。しかし今の話を聞いて得心がいった。雨夜は本家の期待を背負っているのだ。水門重工の令嬢として。そして異能の名門、高原家の跡取りとして。


「本家は氷雨様を表向きは勘当していますが、行方を追っています。社長……左京様は帝王学を学ばれた厳しいお方ですから、氷雨様を身内の恥だと考えているようです」


 源の言葉にシュウは嫌悪感を示す。


「実の娘が雪女だったから恥だって? アホか! 本家のやつら全員頭おかしいぞ。これだからエリート気取っているやつらはバカなんだよ! 姉ちゃんが可哀想だろ!」


 シュウの歯に衣着せぬ物言いに源は吹き出しそうになった。平姉弟も視線が泳いでいる。本家に忠誠を誓う身として、どう反応していいか分からないのだ。雨夜は大きい瞳を瞬かせた後、頬を赤く染めた。


「あ、あの……シュウさん。ファイブソウルズの件が一段落したらでいいのですが……」


 雨夜が上目遣いでシュウを見ている。


「なんだよ」


「わ、私と一緒に姉を捜していただけないでしょうか」


「別にいいよ、日本のどっかにいんだろ」


「ほ、本当ですか? 約束ですよ!」


「おう」


 雨夜は笑顔を浮かべると小指を差し出した。指切りげんまん。シュウと雨夜の小指が絡まる。雨夜の笑顔を見て平姉弟は驚いた表情を浮かべる。本家では決して笑わないからだ。


「ところで、なんで姉ちゃんのことを俺に話したんだ? 本家の連中にとっては隠したいことだろ」


 シュウの問いに雨夜は顔を赤くした。


「べ、別に深い意味はないのですが……これからもっと仲良くなる前に……その……知っておいてほしかったといいますか……」


 最後の方は聞き取れなかった。


「聞こえねーよ、なんだって?」


「な、なんでもありません! あ、あなたのことなんか好きでもなんでもありませんから!」


「そりゃそうだろ。お前、小学生(こども)だし」


「あなた、さっきの話聞いていました? 八歳差は普通です!」


 雨夜は顔を真っ赤にして叫んだ。源は苦笑しながら二人の様子を眺めていた。年相応の反応を示す雨夜を見ると、どこか安堵する自分を感じながら。

【参照】

ラン→第十八話 シュウの師匠

騎士団長→第五十七話 アルテミシア騎士団長

雨夜の強すぎる使命感→第九十九話 テロリスト

十大異人→第百話 異人喫茶の日常

失踪した氷雨→第二百四十五話 電拳のシュウの前で殺せ

雨夜を嫌う亜梨沙→第二百五十八話 あんなぬるい任務じゃ僕は死なない

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