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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十四章 赤目の支配者 ――ターニングポイント――
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第二百五十七話 赤目の支配者は笑う

 ステージの上で神喰がマイクを手に取った。その後ろには高原左京と黒川残月が控えている。


『いやぁ、堅苦しい挨拶は苦手でねぇ。何を話そうかなぁ、自己紹介とか? 会長ですけどね! はっはっは』


 会場から笑いが起こった。


『会長ぉー、おふざけはそこまでにしてください』


 司会席から亜梨沙の突っ込みが入る。


『なになに、亜梨沙ちゃーん。イライラは美容の敵だよー? 分かった、ちゃんと喋るよ』


 神喰は咳払いをすると口を開いた。


協会(トクノー)が設立されて十年ちょっとかな。節目にこのような場を設けていただいて感謝します。皆さんのご支援ご協力があって協会はそれなりの組織になりました』


 神喰は一呼吸置いて会場を見渡す。


『協会が設立されるきっかけの一つとなったのは異人の双子の虐待動画でした。しかし、あれは氷山の一角に過ぎません。異人がその存在を認められて五十年以上経ちますが、法律で保護されてまだ十年ちょっとです。異人差別は根が深い。当時の双子が今どこで何をしているか分かりませんが、元気で暮らしていることを願うばかりです』


 ステージ上を歩きながら話す。


『異人の歴史を語るうえで忘れてはいけない出来事があります。もう二十年以上前になるのかな。東欧のアデルキリアで西洋連合と独裁国家の武力衝突がありました。どうにかしなければ世界大戦が勃発する危機であったと言われています。そんな時、異人傭兵部隊アドルガッサーベールが西洋連合に加担しました。戦闘行為の良否は置いておいて、私はその勇敢な行動に敬意を……』


『ウホン!』


 亜梨沙の咳が演説を中断させた。


『はいはい、今のところはカットでお願いしますね。協会は中立の立場を心掛け如何なるテロ行為も支持しません』


 神喰は肩をすくませた。そして自分の髪と瞳を指差した。


『この灰色の髪と赤い目は神喰家の血筋の中で異能が発現した者に現れます。太古の昔では支配者の証だったそうですが……私はこれが原因で苛められました。だからかな、子供の頃から思っていました。異人差別を無くしたいと。現状まだまだ差別は残っています。私の目指すゴールは遙か先です』


 神喰は手を頭上に掲げて宣言した。


『協会が願うのは世界平和です! 世界から差別を! 貧困を! テロや戦争を根絶する! 普通人と異人が手を取り合って目指すべきビジョンです! 希望に満ちあふれた未来のために結束しようじゃありませんか!』


 会場から拍手が起こった。神喰は満足げに頷くと会場を見渡した。亜梨沙は疲れた様子でうなだれている。


『遅れましたが、我が同志を紹介しましょう』


 神喰は後ろの二人を見た。


『協会設立にも関わった水門重工の高原左京さん! 皆さんはご存じでしょうね、経済界の寵児ですから! 彼の娘さんはメディアでも有名な雨夜ちゃんです! はい、拍手!』


 拍手は続いている。左京は鬱陶しそうに溜息をつくと軽く手を挙げて応えた。


『そして異能の名門、黒川家当主! 黒川残月さんです! 彼は協会に三人しかいないSS級(ダブルエス)ギフターの一人です。協会基準の序列、十大異人では二位にランクインしています。間違いなく最強の一角です』


 残月は気怠そうに虚空を見詰めている。その様子は誰かを彷彿とさせた。神喰は二人の肩を叩きながら笑う。


『崇高な目標達成のためには、優秀なギフターが必要です。実はつい先日、最年少記録を更新してAA級(ダブルエー)に昇級したギフターがいます。AA級は現在八名! そこに新しい名前が加わります』


 壇上の亜梨沙の表情が変わる。怒気を込めて神喰を睨んだ。


『なんと彼は、残月さんの息子なのです! いやぁ血は争えない! この場を借りて紹介しましょう! 黒川南くん、ステージに上がってください!』


 一際大きい拍手が沸き起こる。神喰は満面の笑みで南を見た。華恋やソフィアは嬉しそうに拍手をしている。南は冷めた目でステージ上の三人を見ていた。

【参照】

双子の動画とアデルキリアの武力衝突→第十二話 せっかく異人の友社に入社できたのに私の知能が低すぎる件【落合茉里咲】

十大異人→第百一話 あの男

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