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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十三章 ダークマナの歌姫 ――ダーカー討伐編――
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第二百三十二話 ブリュンヒルトと稲葉

 ブリュンヒルトは協会内のカフェでランチをしていた。「よう、一人か?」声を掛けてくる茶髪の男がいた。冬岩へ出張していたA級ギフターの稲葉だ。手には定食が乗ったトレーを持っている。


「ダーカーを退治するなんてスゲーな。ネットや雑誌で取り上げられているぞ。協会と騎士団、ジャイの人気はうなぎ登りだぜ。こりゃ聖浄会が騒ぎ出すなぁ、死んだホームレスをネタに」


 稲葉は可笑しそうに語る。チャラいが異人の友社の専属モデルを務めるイケメンだ。稲葉は武器生成型の異人で剣を使う。ブリュンヒルトとは剣士同士気が合った。


「アリス=レスタンクールはジャイで報告会だったな、羽生はどうした?」


「羽生は温泉旅行だ。夜勤明けに休日返上で事後処理をして昨日から代休。缶ビール片手に新幹線に乗っていったよ。ほぼ手ブラだった」


「無欲な男だ。今回の功績でA級に上がるチャンスだったろうに」


「羽生がいなければ死者が出ていたと思う。あれは無能を装った有能な男だ」


「知っている。奴の生き方まで否定するつもりはないね、真似できないが。ラクルテルはどうした?」


「フィオナは電拳のシュウを監視している。アドルガッサーベールの雷神が接触してくる可能性があるからな。四六時中ってわけではないが、一応任務のローテには組み込まれているんだ」


 ブリュンヒルトは食事を終え紅茶を飲んでいる。その表情は冴えない。


「私は一頭しか狩れなかったよ」


 ダーカーの討伐数のことだ。アリスが二頭、フィオナが二頭、内一頭は南と共闘、ブリュンヒルトが一頭、南が五頭、内一頭はフィオナと共闘。稲葉は報告書を読んで結果を知っていた。心中を察して茶化さないで聞いている。場の雰囲気を読む男だ。頷きながら定食を食べている。


「これまでエレメンターで最強なのはパイロ系か派生型のエクスプロージョン系だと考えていた。人を倒すには火と爆発が有効だ。しかし、今回の夜回りではその攻撃力が仇となった。火事を警戒して窮屈に戦わざるを得なかった」


 稲葉は地形や天候に左右されない無属性(サイコキネシス)が最強だと思っているが口には出さなかった。


「最強は……アイス系かもしれないな。氷なら二次災害を起こさない。アクア系ほど脆くはないし、形状も自由自在だ。一酸化炭素のような毒も出ない」


 稲葉は味噌汁を啜りながら言う。


「アイス系はコスパが悪いぞ。熱を奪うのに大量のマナを使うし、反動で常に倦怠感が付きまとう。あいつがボーッとしている理由の一つだ」


「……」


「黒川弟……まだ目を覚まさないんだろう」


 夜回り以降、黒川南には会っていない。亜梨沙が出張から戻り、面会謝絶になっていた。亜梨沙の怒りは相当なもので、当分会いに行けそうもない。


「あいつAA級(ダブルエー)に上がるんだってな。つい最近までBBB級(トリプルビー)だったってのに。まだ半年やそこらだろ? 異例のスピード出世だぜ」


「ああ」


 ブリュンヒルトが頷く。どこか遠い目をしていた。

【参照】

異人の友社→第十二話 異人の友社の落合さん

アイス系→第四十五話 絶対零度

パイロ系→第六十二話 南の守護神

武器生成型の稲葉→第六十六話 ここに化け物がいる

電拳のシュウの監視→第七十六話 異能研

エクスプロージョン系→第百話 異人喫茶の日常

エレメンターの属性→第百二十二話 五大元素

聖浄会→第百五十二話 聖浄会の朝倉澪

冬岩に出張していた稲葉→第二百二話 亜梨沙と稲葉のすれ違い

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