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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十一章 みぞれの城 ――フィオナ=ラクルテル編――
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第二百話 女騎士の恋愛事情

「てゆーか三乙女ってやめてほしいんだけど! 乙女=処女じゃん。一生、処女でいろっていうこと? どうすんの、この異名(なまえ)! 二十歳になっても乙女って……痛女(いたじょ)じゃん!」


 ブリュンヒルトの叫びにアリスが冷静に答えた。


「あなたは火盾(ラゲルタ)、フィオナさんは銀槍(ヴァルキリー)、私は光剣(ラピュセル)。異名から乙女を消せば済む話ですよ。ただ、加齢を理由に処女のまま改名するのは……誉れ高き騎士としていかがなものでしょうか。売れ残ったケーキみたいです」


 アルテミシアの三乙女は騎士団の広告塔として機能している。しかし手当てが付くわけではない。任務でいつ命を落とすか分からない本人たちにとって恋愛事情は深刻だ。男を知らぬまま死にたくない、そう思っている。


「三乙女の中で誰が先に非処女になるか……おそらくファンの間でも気になっていることだわ。私には南がいるからノープロブレムだけど、相手がいないあなた達はヤバいわね」


 フィオナの言葉にアリスとブリュンヒルトは冷たい視線を送る。


「南くんのお父さんは協会設立者の一人、お姉さんは副会長、いわゆるサラブレッドで将来協会の幹部入りは確実です。任務とは言え随分と優良物件を手に入れましたね。まあ、任務なんですけどね。公私混同、職務乱用ですよ」


「あんたはたまたまクートーに気に入られて黒川弟(このこ)の護衛に選ばれただけじゃん! あの時、騎士団本部に私がいたら私が選ばれたと思うし!」


「なに言っているの。彼は幼くて気まぐれでワガママなのよ。精神年齢は初等部から大した変化もないし。あなたみたいな短気な女じゃすぐに喧嘩して泣かすわ。南は私のお姫……王子様なんだから邪魔しないで」


 三人の睨み合いが続き、気まずい沈黙が流れている。もはや騎士ではなく女子学生のそれだ。映画は終わり、テレビの大画面は真っ黒になっていた。ブリュンヒルトが口を開いた。


「じゃあ、公平にシェアしようよ。今週はフィオナ、来週は私、再来週はアリス。このローテで回して先にモノにした方が勝ちってことで」


「あなた達、図々しいわよ。協会には他にも男がたくさんいるじゃない。稲葉とか羽生とか……邪魔すると殺すわよ。焦っているからって便乗しないでくれるかしら」


「あら、フィオナさん。十年も費やしたのに自信が無いんですか? 次の夜回りで良い成績を残した方が優先権を得ることにしましょう」


 再び議論に火が付きそうになった時、室内扉の向こうで玄関が開く音が聞こえた。何者かがリビングへ向かって歩いてくる。視線が扉へ集中した。

【参照】

三乙女について→第百五十九話 アルテミシアの三乙女

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