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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十一章 みぞれの城 ――フィオナ=ラクルテル編――
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第百九十八話 フィオナの誘惑

 部屋を薄暗くして映画を観ていた。八十六インチの大画面である。南は隣に座ったフィオナを警戒していたが、次第に映画へ没頭していった。


「火の魔法……この規模だと排マナはどれくらいかな」


 主人公が敵に魔法を放つシーンを観て、南は真剣な顔で呟いている。


「魔法って術者に反動がないのか……異能との違いはそこかもしれない」


 どうやら映画を違う角度から楽しんでいるらしい。その姿は完全に無防備であった。


 激しい戦闘のシーンが終わると、主人公とヒロインの恋愛要素が色濃く出てきた。家族向けのファンタジー映画だが、珍しくラブシーンがある。これには賛否両論あったが、映画ファンには比較的受け入れられていた。当然、これはフィオナの計画の内だ。


「……」


 南は無言でそのシーンを観ている。フィオナは深呼吸をすると口を開いた。


「一つ確認していいかしら?」


「……?」


「あなたっていつも亜梨沙と一緒にいるけれど……シスコンなの?」


「違うよ」


 フィオナは南のすぐ隣に座り直した。そして南の膝に手を置く。間接照明と映画の演出で官能的な空間になっていた。


「いくつか質問するわ。一つでもノーって答えたらやめるわね」


 南は戸惑いながら首を縦に振った。居心地の悪さが態度に表われている。しかしフィオナはこのチャンスを逃がすつもりはなかった。


「あなた、女の子みたいな顔しているけれど、女に興味がないわけではないのよね?」


「……別に」


「私ってこれでもモテるのだけれど。……あなた、私のこと嫌いなわけではないのよね?」


「……別に」


 南は否定も肯定もしないが、明確に「ノー」と言わないため、フィオナは追求を続けた。


「私たちはもう高等部(おとな)なんだし……そろそろ先に進んでもいいと思うの」


 フィオナはゆっくりと南を押し倒し、ふわっと覆い被さる。南は完全にフリーズしていた。


「シスコンではなく、女の子に興味があって、私のことは嫌いではない……私を拒否する理由は……ないんじゃないかしら」


 南の頬に両手を添えて、じっとその瞳を見詰める。


「大丈夫、動画で勉強したの……私に任せてくれていいのよ」


「僕やっぱり(かえ)……」


 フィオナは逃げ出そうとする南をサイコキネシスで縛り付ける。強力な念力(マナ)で身動きが取れない。そもそも騎士であるフィオナに腕力で勝ち目はなかった。フィオナが南の服のボタンに手を伸ばした時――。


――ヴーヴーヴー……!


 突然、フィオナのスマートフォンが振動した。フィオナは息がかかる距離まで顔を近づけたが、その動きが止まる。一瞬スマホの方を見たがそれ以上は気にせず南の口元を撫でた。しかし、振動は鳴り止まない。場の雰囲気を台無しにしていた。


「電話出ないの?」


「……無視よ」


 するとスマホの着信は止み、その直後にショートメッセージが届いた。フィオナのスマホがチカチカと点滅している。フィオナはスマホを横目で見る。だが、南を押し倒したまま退こうとはしない。


 その時、ポーンとインターホンが鳴った。


「フィオナ……誰か来たよ」


 フィオナは小さく舌打ちをすると身体を起こした。珍しく怒っている。切れ長の鋭い目でインターホンのモニターを睨んだ。

【参照】

排マナとは→ 第百六十話 ソフィアとヴィオラ

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