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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十一章 みぞれの城 ――フィオナ=ラクルテル編――
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第百九十五話 フィオナの計画

 フィオナ=ラクルテルはアルテミシア騎士団から特殊能力者協会へ出向している騎士だ。六歳の頃に入会し、任務で着実に結果を出して、A級ギフターとなった。現在は十六歳になり、AA級(ダブルエー)への昇級が確実視されている。


 A級ギフターになると、宿舎の高層階に入居可能で、フィオナの部屋は角部屋でガラス張りである。白を基調にした明るい雰囲気だ。氷川SCが一望できる贅沢な間取りであった。


 その日、フィオナは早朝から慌ただしかった。普段から部屋を奇麗にはしているが、隅々まで掃除をし、入念にチェックをした。毛、一本落ちていない。バスやトイレもピカピカに磨いた。それが一段落すると、今度は料理に取りかかる。


 フィオナは感情を表に出すタイプではないが、今日は違った。心なしか頬が緩み、銀色のボブヘアがふわふわ踊っているように見える。メイクに気を遣い、服はブランド物のワンピースである。


 料理の仕込みが終わり一段落すると、マイチューブの音楽を流した。後は待つのみ、である。時計を見ると朝の九時半を指していた。


「南はいつも三十分遅れるから……十時半に来るわね。それより遅くても十一時……大丈夫、計算どおりだわ」


 今日は休日で、これから黒川南がこの部屋に来る予定である。約束の時間は十時だが、フィオナは十一時にスタートできればいいと思っていた。


 特殊能力者協会の宿舎は性別で分かれていない。隣室が異性であることも珍しくない。南は一つ下の階に住んでいるので、徒歩五分といったところである。


「やり残したことはないかしら。食事とデザートは用意したし……DVDもあるし。あ、マナ結界張っておけばよかったかしら。副会長(ありさ)の千里眼で覗かれてしまうわ」


 副会長の亜梨沙は東北の冬岩へ出張している。しかし、彼女の<千里眼(クレヤボヤンス)>なら埼玉の東銀を視ることくらい容易であった。


「もう遅いわね……結界術士を呼ぶ時間はないわ。どうしようかしら、このミスが後々響くかもしれないわ」


――ポーンとインターホンが鳴った。フィオナはビクッと肩を震わせる。ポーカーフェイスだがしっかりと緊張していたのである。時間は十時半であった。


 フィオナは震える手で玄関を開けた。そこには南が立っている。


「来たけど……ふあ……」


 相変わらず眠そうな顔だ。黒のマッシュカットに寝癖が付いている。おそらく十分前まで寝ていたのだろう。服装はギフターの黒い制服である。服にはシワが寄っていて、脱ぎ散らかしていたものをそのまま着てきたように見えた。


「入って」


 フィオナは澄ましているが、内心ドキドキしながら南を迎え入れる。南はリビングに通され、窓際のソファーに座った。

【参照】

ギフターの寮について→ 第八十六話 刑事の来訪

亜梨沙の千里眼について→ 第百八話 魔女の千里眼

マナ結界について→ 第百三十話 ソフィアの訓練

冬岩について→第百三十一話 東龍倉庫

亜梨沙がいないうちに→第百五十九話 アルテミシアの三乙女

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