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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十一章 みぞれの城 ――フィオナ=ラクルテル編――
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第百九十一話 アルテミシア騎士団本部

 列車が田園風景の中を走っている。クートーとフィオナは一等車両の二階席に座っていた。座席は通路を挟んで二席と一席に分かれている。車内には浮かれた観光客の姿が目立った。フランス南部に向かって六時間ほどの旅である。


 クートーは窓際に座っているフィオナに話し掛けた。


「これからアルテミシア騎士団本部へ行く。疲れていたら寝ていても構わない」


「雪が少ないわね。同じフランスなのに不思議だわ」


「南仏は地中海性気候で温暖な地域だ。雨が少なく青天が多い。北ローヌの方からミストラルが吹くと気温が下がる。最近は異常気象で南仏でも大雪になることが多いな」


 車内はファミリーが多い。フィオナの表情は暗いが、異能が暴走する気配はない。決して幸せな生い立ちではない彼女にとって家族の愛は目に毒だった。


「クートー、私にしかできないことって何かしら」


「詳細は本部で話すが、これだけは言っておく。君のように強い異能を秘めた子供は希有な存在だ。我々は君を必要としている」


「……そう」


 列車はのどかな景色の中を走っていく。フィオナは物珍しげに車窓の外を眺めていた。


 南下していた鉄道でマルセイユまでは行かず、途中でバスに乗り換えた。そのまま大きな湖を左に見ながら東進し、街中へ入っていく。近代的な商業施設、集合住宅が続き、州警察署の前で降りた。そこから更にバスを乗り換え、旧市街の方へ進んでいく。


 南仏ということで青い海と白い砂浜をイメージしていたが、それらは全く見えなかった。中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みを眺めながらバスに揺られ、目的地に着いたのは午後三時であった。


 今朝まで雪に囲まれた古城にいたフィオナは別世界に降り立ち溜息をついた。クリスマスシーズンなので寒いことは寒いが、北部に比べると温暖である。何より雪が降っていなかった。


「行くぞ」


 クートーは一人歩いて行く。「まだ歩くのね」と呟きフィオナは後を追った。


 クリスマスカラーに彩られた飲食店が軒を連ねており、パン屋やスーパーマーケット、美容室の横を通り過ぎていく。古い街並みだがお洒落なブランドショップや無料Wi-Fiなどのアイキャッチが見え、田舎ではないことが伺えた。


 しかし、一本脇道に逸れるだけで人通りが少なくなり怪しい雰囲気を醸し出す。ヨーロッパの旧市街ならではの緊張感が漂っていた。


「もう着くぞ」


「……あ」


 細い道が突然拓け、巨大な大聖堂が姿を現した。

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