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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十一章 みぞれの城 ――フィオナ=ラクルテル編――
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第百八十八話 フィオナ=ラクルテル

 銀髪の少女、フィオナ=ラクルテルは、突然の来訪者に表情を変えることはなかった。膝を抱えて座っていて、銀色の瞳は虚空を見据えていた。


 その部屋は簡素な個室になっていた。石造りの壁と天井に石畳の床。ベッドと学習机が置いてある。エアコンは点いておらず室温は外気温と変わらない。


 クートーが部屋に入った瞬間、まるで威嚇するようにフィオナのマナが<展開>された。瞬間的に突風が吹き荒れ、クートーの赤髪を激しく揺らす。卓上の書籍が宙を舞い、天井の電球がチカチカと点滅した。


 クートーもマナを展開し衝撃波を散らす。背後にいるエッダはクートーに守られていた。


「私はアルテミシア騎士団のクートー=インフェリアだ。フィオナ、君と話がしたくてここへ来た」


 フィオナは何も答えない。雪のように真っ白な肌と漆黒のワンピースとのコントラストが彼女の存在感を際立たせている。クートーは軽く咳払いをすると世間話から入った。


「ここの暮らしはどうだ?」


「……」


 無反応である。クートーは背後にいるエッダに視線を送った。彼女は首を横に振る。


(六歳といったが、知能は大人と変わらないだろう。無駄話は逆効果か……何より私が無駄を好まない)


 クートーがフィオナの前に立つと、頭痛を伴う耳鳴りがして、再びマナが振動を始めた。カタカタカタと石畳の床が揺れている。クートーは意に介さず話し掛けた。


「単刀直入に言おう、アルテミシア騎士団は優秀な人材を求めている。君の力を貸してほしい」


「……」


「現在フランスは異人研究で他国に大きく水をあけられている。これは国の存続に関わる危機的状況と言っていい。これからの時代は核の傘だけではなく、異人の傘による異能の抑止力が必要なんだ」


「……」


 フィオナの瞳に感情はない。黙ってクートーのブーツを見ていた。しかし話は聞いている、クートーはそう判断した。エッダは腰に手を当てて様子を見ている。


「フランスでは想像もつかないが、日本では異人保護の気運が高まっている。来年には特殊能力者保護法が施行され、特殊能力者協会が設立されるんだ。その協会には優秀な異人が所属し様々な任務をこなす。おそらくアメリカのFBIやイギリスのMI6以上の組織となるだろう」


「……」


「我々アルテミシア騎士団は特殊能力者協会と同盟を結ぶことにした。互いの組織に人員が行き来し、異人・マナの情報を共有する。既に水面下で協会員のスカウトが始まっている。私がここに来たのもそのためだ」


「……協会(にほん)の庇護を受けるのかしら」


 初めてフィオナが言葉を発した。鈴を転がすような声だった。

【参照】

特殊能力者協会について→第二十四話 特殊能力者協会

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