表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第十章 渡り鳥と少女 ――多国籍異人組織・カラーズ編――
168/300

第百六十八話 ニコルです!

 密航船のブリッジの中にロウとスメラギはいた。スメラギはビールを片手に上機嫌である。


「良い天気だねぇ、ちょっとしたクルージングじゃん。あはは」


 そこからは甲板にいる密航者達が見える。私服だと怪しまれるので、乗組員の制服を着せていた。


 あの事件後、海に落ちたことで体調を崩し、更に一人が死んでいた。それから四日経過しているが、仲間割れは起こっていない。ロウがリーダーとなり他のメンバーはそれに服従している。


「なあ、ロウさんよ。百頭の奴等が報復に来るんじゃねぇかな。その前に海保にパクられるかもしれねーけど。どっちがマシかねぇ」


 スメラギはタバコを吹かしながら言った。そしてタバコケースをロウの方に向ける。


「……俺はいい……ごほっ」


「ふーん」


 咳き込むロウを見て、スメラギはタバコの火を消した。


「ん?」


 視線を感じて横を見ると、ブリッジの出入り口から純白のセーラー服を着た少女が顔を覗かせていた。彼女の名はニコルという。アジア系の難民である。


「あはは、元気? ニコルっち。制服似合ってんじゃん」


 スメラギは笑顔で手を振った。彼女が着ているのは倉庫にあった子ども用の水夫の服である。


「あ……りがとう……ございます。……助けて……くれて」


 ニコルは顔を赤くしながら礼を述べた。


「いやいや、何度も言ったけど、オレは見捨てようとしていたから! 助けたのはこっちの青髪のおじさん。怖い顔しているけど仲良くしてあげてねー」


 スメラギはロウを指差しながら可笑しそうに笑った。ニコルはじっとロウの顔を見ている。


「……余計なことは言わないでいい。俺が助けたのは気まぐれだ。次は捨てていく……覚悟しておけよ、クソガキ」


 ニコルはトトト……と小走りで駆け寄ると、ロウの腰にしがみついた。


「……おい!」


 ロウは険しい表情でニコルを見下ろした。一般人なら震え上がるほどの怒気を込めている。しかしニコルはロウを見上げると笑顔を見せた。


「ニコル! あたしはニコルですよ」


 ニコルはドヤ顔ではっきりと名乗った。


 ロウの鋭い視線で射貫かれてもニコルに怖がる様子はない。数秒の沈黙の後、先にロウが視線を逸らし、大きく溜息をついた。


「……」


「ぷっ! あははは!」


 二人を見てスメラギが爆笑する。


「おい、笑うな」


 苛立ったロウはスメラギの襟を掴んで睨むが、馬鹿笑いは止まない。


「……ちっ」


 腰にひっついているニコルを引き離そうと頭を掴むが離れようとしない。


「俺は青髪のロウだぞ……! くそ、どいつもこいつも馬鹿にしやがって……! ごほっごほっ!」


 船は大海原を進んでいく。冬岩港を目指して――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ