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金色のウロボロス 電拳のシュウ  作者: 荒野悠
第九章 異人狩りからの脅迫状 ――滝本ココナ編――
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第百六十二話 秘密の花園

 ソフィアは学校内のコンビニで菓子パンを買った。今から食堂でアンナ達と落ち合うほど時間に余裕が無いからだ。


 協会の敷地内に緑が豊かな庭園がある。パイナップルミントやフレンチラベンダー、ローマンカモミールなど、様々なハーブが植えられている。噴水が涼やかな雰囲気を演出していた。庭園は一般にも公開されており、普通人の姿も見掛ける。


 ソフィアがベンチに座ってパンを食べているとクラスメイトに声を掛けられた。


「秘密の花園のヒロインみたいだね」


「あ、コニーくん」


 コニーはブラウンの癖毛とブルーの瞳、容姿端麗の爽やかな男子だ。異能の系統は念動力系、成績は優秀で女子に人気があった。


「あはは、ヒロインみたいかな」


 初等部の女子の制服は英国調のチェック柄ワンピースである。童話のヒロインに見えても不思議ではなかった。


「うん、かわいいよ」


 コニーは涼しい顔でさらっと褒めた。こういう性格が女子にモテるのだ。ソフィアは顔を赤くして照れている。


「さっきは大変だったね。ヴィオラは君を目の敵にしているから……」


「私……異能の成績は良くないし、あの子のライバルなんかじゃないんだけど、何故か嫌われちゃっているの」


 そよそよと風が吹き頬を撫で、ハーブの香りが空間を満たしていく。コニーはゆっくりと深呼吸をしてから言った。


「多分だけど、君がA級ギフターの先輩と一緒にいるのが気にくわないんじゃないかな。彼女は上昇志向が強いからね」


「南先輩のこと?」


「さっき噂のアイスキネシスを見たけど、親の七光りじゃないって分かったよ。【絶対零度(ニーズヘッグ)】の黒川南先輩……神話ラグナロクを生き延びた伝説の蛇の名を冠するだけはあるね。でも……だからこそ心配かな」


「何が?」


「ソフィアちゃん、疲れていない? 一部では黒川南がソフィアを連れ回しているって噂になっているよ」


 コニーが心配そうな表情をしている。


「そっかー」


 ソフィアは何と答えていいか分からずパックのジュースを飲んだ。


 色々噂をされているのは知っていたが、実際に聞くと何とも言えない感情が湧いてくるのを感じた。因みに女子視点の噂ではソフィアが南に付きまとっている、ということになっている。


「あまり悪いことは言いたくないんだけど……彼は人格にも問題があるって噂だよ。人の心が分からない、氷のような人だって。君は彼と一緒にいて嫌な気持ちになったりしないの?」


 コニーに他意はなく本気でソフィアを心配しているようだ。ソフィアはこれまでのことを思い出していた。そして思わず笑みがこぼれる。


「ソフィアちゃん?」


「ふふ、ごめんね。何でもないの。そうだね、偏屈だし子供っぽいし時間にルーズだし、何度泣かされたか分からない……でも肝心なところでは助けてくれるの」


 ソフィアは風に揺れるハーブを眺めていた。その横顔は大人びて見える。


「言われているほど悪い人ではないよ」


 その言葉にコニーは笑顔で頷いた。


「そっか、ソフィアちゃんがそう言うなら大丈夫だね」


「うん、心配してくれてありがとう! じゃ、先に行くね!」


 ソフィアは笑顔で手を振ると、軽い足取りで校舎に入っていった。


「ふーん……なるほどね」


 コニーはその背中を見送ると細く微笑んだ。

【参照】

ヴィオラについて→第百二十九話 ソフィアの学校生活

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