同僚からのメッセージ
それから一週間が過ぎると警察から約束の寄付が届いた。
この寄付金は、私達の働きを称賛して送られたもの、と表向きはそうなっている。なのでボーナスときて今月の給料にプラスされる。
そのことを発表した、月曜日のミーティングで従業員が湧いた。しかし、その中で一人不服そうな顔をしている人がいた。
その人は、風川だ。それもそうだ。風川は、一億円を3等分できると思っていたからだ。だが、実際は従業30人近くいる従業員と分ける。もらえるお金も相当少ないだろう。
私はそのことに安堵を感じていた。これで、みんな共犯者だ。私だけじゃないと思うと気が少しばかり軽くなった。
ミンティーング が終わり、開店までのしばらくの休み時間に入ると風川に呼ばれた。立場上、風川が上司なのでどんなに嫌でも応えなければならない。私は呼び出された屋上に行くとそこには、風川とかおりがいた。
かおりは風川に怯えている様子だったが何もされていない。そのことに少し安堵した。風川が私が来たのに気づき見ていた景色から私達に視線を移した。風川はなにか考えるように、私達をじっくり1分間見つめ、こう言った。「君たちは政府に疑問を抱かないのかい?」
私は言葉の意味が理解できず、少しの間フリーズした。風川そんな私を横目に話し続ける。
「こんな場所に半強制的につれてこられて、挙げ句には軟禁状態。君たちは当たり前にように受け入れているけど、たとえ、国であっても僕たちの自由を奪う権利はあるのかな?」
私は風川の言葉に、全身に電気が走ったような衝撃を受ける。幼い頃から、「国が滅びないために、身を粉にして働きなさい」と言われ続けていた。私はそれが正しいと信じて、国からの命令なら多少理不尽であっても受け入れていた。
そのことに一切の疑問を抱かなかった。周りがしているように国のために働き、税を納めていた。たとえ、生活費を削っても・・・
風川は、私達に考える時間を与えるように少しの間を開けて、再び口を開いた。
「僕も国が両親を殺すまでは疑問を抱かなかった。あれは、15年前僕が10歳の頃、国は僕の両親を殺した。僕の親は、働き者だった。朝、日が登る前に家を出て、帰って来るのは僕が深い眠りについているときだった。ほとんど会えなかったけど働き者の親が誇らしかった。」一息つき、再び話し始めた。