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異世界牛丼  作者: まさゆき
8/22

はじめての労働と格差社会 @異世界

冒険者ギルドに到着したら、あたりはすっかり暗くなっていた。


冒険者ギルドは、午前中と比べてにぎわっている。

武装した冒険者たちが、テーブルで談笑したり、掲示板をながめながら考えこんでたり、受付で話をしている。


「おっす、お疲れさまやったな!」

窓口にいたイシュメルが声をかけてくれる。


「カゴいっぱいの薬草だな。ミッション完了、これが約束の報酬 30万ギルだ」

イシュメルがエリスに札束をわたす。


「まいど~~(笑)」

エリスが明るく受け取る。


「お前さんには、約束の報酬 8000ギルだ」


「・・・あ、ありがとうございます。」


磯部は内心、冒険者たちとの格差に驚いていた。





確草をとってカゴに入れて運ぶという仕事は、比較的だれでもできる仕事である。

(命がけの仕事ではあるのだが・・・・)


一方で、冒険者たちは危険な魔物がウロウロする森を、魔物の脅威を排除しつつ、薬草が自生している場所までたどりつくことができる。


今回の”おつかい”では、2回 魔物に遭遇した。

一般人にとって、魔物に遭遇することは、一目散に逃げるべき危機なのだ。運が悪ければ、死ぬのである。

この”おつかい”は、一般人には到底無理なミッションだ。


だからこそ、エリスたちは磯部の10倍以上の報酬を得ているのである。





異世界に来ても、格差社会の洗礼を受けるとは・・・・・・


磯部は前世で常に感じていた無力感を、この異世界でも感じていた。



と同時に、違和感・・・・・・・・・・



・・・・違和感・・・・・・・・・・



磯部は、虚しさを感じると同時に、あれ?ワンチャン、いけんじゃね?

との、希望を感じ取った。




”お金”に関しては、以前いた世界と共通している?


世の中での需要と供給の法則はこの世界でも同じ?



難しい仕事の報酬は高く、簡単な仕事の報酬は安い。

もちろん、難しいけど報酬の安い仕事も存在する。

しかしながら、そのような仕事は常に人手不足だったり、洗脳的教育など人が逃げ出さないような仕組みが必要だったりする。



みたところ、この世界の文明レベルは産業革命前の中世だ。

であれば、かんたんな機械の技術を使うだけで生産性を爆発的に上げることができる。


異世界で現代知識無双して、このクソみたいな格差社会の階段を駆け上がればよい。





・・・・実は、磯部は難関国立大学を卒業した高学歴であった。

コミュ障もあいまって、いままでの人生で、中学高校と苦労して獲得した高学歴が活躍する場面はなかった。


それどころか、逆に高学歴なのに仕事ができないやつと、バカにされる要因になってしまった。


「え~、あの人○○大学なの~~ww」みたいに後ろ指をさされるのである。


磯部は、母親から、「勉強しなさい、勉強したら人生がうまくいくのよ」 といわれて育った。

おそらく、勉強したほうがよいというのは一般論として正しいのだろう。

残念なことに、磯部は一般論が通じない例外的存在だった。




・・・・・・・・・・・・・磯部は、ネガティブになりがちな思考を頭を振ってリセットした。




磯部は、この世界でなんとしてでも成り上がることを決意した。


自分は、人生どん詰まり、実質的・現実的に逆転の目がなかった中年男性であった。

残された人生は、家と職場の往復で、楽しみは家でアマゾンプライムのアニメをみることだけであった。


それが、目の前にすべてをひっくり返すチャンスがある。

人生を逆転してなお、十分おつりがくる大チャンスである。



やるべきだ!


やるしかない!


やれ!



磯部は決意した。




まずは、生活基盤を整えないといけない。





「イシュメルさん、自分、安い宿とかわからないのですが・・・・・」


磯部は イシュメルに宿を聞く。


それを聞きつけたエリスが、

「お前、今日の宿 ないのか?

 俺の部屋、二段ベッドで上が空いてるんだ。 泊めてやるよ」


少しでも節約をしたい磯部にとって、願ってもない申し出である。


「!?? いいんですか?」


「い~よ、 お前、ニッポン?て ど田舎から夜逃げ同然でエスタミルに出てきたんだろう?

 どうせ使ってないベッドだし、使っていいよ」


一瞬、エイチなことを期待した磯部だったが、どう考えてもエリスのほうが強いし、

いまの自分の立場とかもろもろを考えて、希望を捨てた。


「さぁ、そうと決まったら、メシ行こうぜ~」

エリスが肩をバシバシ叩きながら、磯部をせかす。


「おお~、じゃあな~ 元気でな~~」

イシュメルが明るく冒険者ギルドから送り出してくれた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



・・・




冒険者向けの高級宿(この世界で冒険者は高収入!なのである)の1Fが食堂になっていた。

食堂は、店主がその日の材料で作れるものをつくるという、日替わり定食的な感じであった。

本日の料理は、カレーとナンであった。


エリスたちは、ビールを頼んでいる。

磯部も、1杯だけビールをもらうことにした。


なお、磯部はおごってもらえるとの話を事前にエリスから聞いている。

(ほんと、エリスは気が利く)



「今日のミッション、お疲れ様でした!」

エリスが音頭をとって、一同で乾杯する。


雑談からわかったことだが、

ジャック、ミリアム、エリスの3人は、1年前の要人警護の依頼で一緒になった。

それきっかけでパーティを組んだらしい。



エリスは北方の村で一番の剣士であり、腕試しもかねて自然な流れで冒険者になった。

ミリアムは、魔術師に弟子入りしていたものの、何かトラブルを起こしてそのまま飛び出して冒険者になった。

ジャックは、冒険者になればカネが稼げるから、というシンプルな理由で冒険者になった。



エリスたちのパーティは、要人警護を引き受けるだけあって、冒険者ギルドでも一目置かれている。


今回のような薬草採取や、弱い魔物のせん滅など、小さい仕事をやりつつ

3か月に1回くらい、要人警護やダンジョンの攻略など、高難易度の仕事をこなすらしい。



1か月ほど前に大きな仕事を終えたばかりで、カネに余裕があるから、

しばらく冒険者ギルドで軽い依頼をこなしつつ、ゆっくりダラダラ暮するらしい。


なお、ダラダラ暮らすといっても、エリスはガチガチにトレーニングと剣術の稽古をしている様子




「じゃあ、俺らは先に寝るわ」

そうこうするうちに、ジャックとミリアムが引き上げていった。


部屋割りは、ジャックとミリアムで1部屋、エリスで1部屋 合計 2部屋である。


・・・・まぁ、そういうことですよね





「あんたさぁ、もうちょっと、シャキッとしなさいよ!」

エリスが酔っ払って、説教モードに入る。


磯部は、ちょっと嬉しそうに、エリスの説教を聞いている。

なにこれ、そういうプレイ?



「冒険者になるんだったら、もっと気概が必要なのよ!」

冒険者になるなんて、言ってないんだけど・・・とか思いながら磯部は傾聴する。



「い~い、魔物と対峙した時は背中を見せちゃダメ、目を離さずに相手が動いたタイミングで間合いを詰めるの! 逃げるとしたら前に逃げるの!」

なんだか、よくわからない話になってる・・・・



「・・・・・・・・・・・ケプ・・・・・・・・」

なんとなく、話をしつくして満足したっぽい。



「そろそろ、いくか~」

エリスが立ち上がるが、飲みすぎでふらふらしている。


ふらつくエリスに肩を貸しつつ、磯部はエリスの部屋まで移動した。

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