冒険者たち
冒険者ギルドは、がらんとしていた。
聞けば、冒険者のような荒くれものは、夜遅くまで酒を飲んで騒いでいることが多いため、来るのは昼ごろになるそうだ。
磯部は、酒を飲む習慣がない。
コミュ障であるため、飲み会も苦手である。
冒険者のようなパリピは、なんだか苦手そうだなとか思いながら、イシュメルが淹れてくれたコーヒーを飲む。
イシュメルが本日同行する冒険者について、教えてくれた。
ジャック、エリス、ミリアムの3人パーティらしい。
エリスとミリアムは女性であり、珍しく女性比率が高いパーティとのこと。
ジャックとエリスは戦士、ミリアムは魔導士だ。
戦士は文字通り、剣や槍など近接武器で魔物を倒す。
魔導士は、魔術を使って魔物を倒す。
ファイヤーボールとかで炎を出したり、アイスボールとかで氷を出したりできるらしい。
なお、ミリアムは炎系の魔術を使うらしい。
(魔術があれば暖房いらず、冬はあったかくてよさそうだと磯部は思う。)
「なぜ冒険者たちが必要なのですか?」
磯部は、根本的なことを聞く。
「そりゃ、魔物がいるからさ」
何、当たり前のことをいってるんだと、イシュメルが応答する。
イシュメルは、最初は愛想よく応答してくれていたものの、
しばらくして、いい加減もうやめてくれ、お腹いっぱいだよと、げんなりとした表情になっていた。
磯部は、イシュメルとの会話を通して、この世界を少しだけ理解する。
この世界は、深い森に囲まれている。
森の中に村や町が点在している。
森では、薬草、ミスリルなどの金属、魔石など、多種多様な資源を採取することができる。
しかしながら、森には魔物と呼ばれる生き物が多数生息しており、人間を襲ってくる。
この森に入り、資源を採取してくるのが(あるいは資源がある場所を発見するのが)冒険者である。
基本的に魔物は人間を襲う。
小さい村であれば、ゴブリンの集団に襲われて全滅することもあるという。
だが、ゴブリンなど一部を例外として、魔物は集団行動ができないため、人間の村や町が全滅することはまれである。
魔物たちは、普通の人間より、個体としては強いにもかかわらず、人間たちに各個撃破されている。
冒険者たちは、散発的に襲ってくる魔物から村や町を防衛する役割も担っており、
この世界ではなくてはならない職業だ。
全人口の何割くらいが冒険者なのかとイシュメルに聞いてみたが、
「たくさんいる」との答えが返ってきた。
そもそも、人口の調査とかは行っていないようで、わりとその辺も適当そうである。
殺人事件があっても、魔物に襲われたのだか、犯人に襲われたのだかわからないから、名探偵の出る幕は限られそうだなぁ
と、磯部はよくわからないことを思う。
ガチャ!
「よう!邪魔するぜ!」
そうこうしているうちに、大柄な甲冑を身に着けた女が入ってきた。
大柄な女に続いて、長髪のイケメンと、パツキンの美女が入ってくる。
「ご安全に! まってたぜ!」
イシュメルが元気よく返事をする。
「紹介するわ。 今日の薬草採取を手伝ってくれるイソベだ。」
「あぁ、よろしくな。 俺はエリス。」
大柄な女が、これまた元気にあいさつしてくれる。
「い、イソベです。 よろしくお願いします m(__)m」
若干丁寧すぎるあいさつをする。
「こいつが、ジャック、この女がミリアムだ」
ついでに、他の二人も紹介してくれる。
「今日は、薬草拾いだからピクニックみたいなもんだ~ 気楽に行こうぜ!」
エリスは明るい。
磯部は、イシュメルから、背中に背負う大きなカゴをもらって装備する。
不安な磯部を置き去りにして、エリスとイシュメルで手早く話がまとまる。
「じゃあな! 気をつけて行って来いよ~」
イシュメルに送り出された磯部は、冒険者3人組の後をてくてく歩く。
磯部は、思う。
自分は、ずっと人のあとをついて歩く人生であった。
ひとりで歩くときを除けば、先頭に立って歩くことなどほぼなかった。
なぜなんだろう、自分はいつも人の後ろを歩いている。
この世界でも人のあとをついていってる。
いつか、自分が先頭を歩くことは、あるのだろうか・・・・




