異世界日雇い労働
「あー、大丈夫かお前?」
昨日の兵士とは、別の兵士
別の武装したマッチョが、なんとも言えない目で見ながら聞いてくる。
「は、はい、らいじょうぶ、です・・」
徹夜あけの、疲労と脱力としんどさの混じった感で磯部が答える。
早朝なのに、すでに疲労困憊である。
こんなんを商人ギルドに連れて行きたくないなぁ、
と内心は気の進まない、別のマッチョ
とはいえ、先輩兵士から、このヘンテコな恰好をしたオヤジを商人ギルドに連れて行くよう指示されたから、
やらなければならない。
・・・・くそめんどくせぇ・・・
そう思いながら、後輩マッチョは磯部を留置所から出して、商人ギルドの建物に連れていく。
商人ギルドの前では、手配師たちが日雇い労働者を募集していた。
日雇い労働者たちには、以下のような仕事がある。
・建設系・・・木材などの建築資材を運んだり、職人さんのお手伝いをする仕事
・農作業・・・野菜やコメなどの農作物の収穫のお手伝い
・軍事系・・・軍事物資の輸送や、要塞の修理などのお手伝い
・便利屋系・・・引っ越しの手伝い、庭木の手入れの手伝いなど
・冒険者系・・・冒険者たちの荷物持ち(食料品、装備品、予備品など)、薬草採取要員(冒険者は手を動かさない)など
みな、慣れた感じである。
トンカチやのこぎりなどの工具を持った連中が、手配師に連れられて移動している。
彼らは建設系だろう。
農業系の労働者たちは、荷馬車に乗せられて、移動したりしていた。
それをみて、磯部はグッドウィルでの日雇いバイトを思い出していた。
「こら、ぼーっとしてるんじゃない。さっさと仕事を決めないと!」
このオヤジ、ほんとどんな生き方をしてきたのだろうか・・
こんなにトロくさくて、いままでどうやって生きてきたのか、不思議に思いながらも後輩マッチョがせかしてくる。
「わわ、わかりました!」
「すいません、あの、仕事したいんですけど・・・」
磯部が近くにいる、ガタイのいい熊みたいな男に声をかけた。
「おう、うちは冒険者ギルドでな。薬草摘みのバイトを募集しているんだ。
日給は9000ギルと、高くないが誰でもできる仕事だ。」
「は、はぁ。」
磯部は困った顔で、後輩マッチョのほうを見る。
「あぁ、こいつは、ど田舎から出てきたカネのない食いつめものらしい。
とりあえず、このエスタミルでの生活ができそうにないから、ここに連れてきたんだ。
犯罪とかしなきゃなんでもいい。だから適当な仕事を紹介してやってくれ」
「そういうことか、わかった。理解した。」
「!?」
いやそれだけで、理解しちゃうのか!?
磯部は戸惑う。
磯部は知らないが、人間関係が固定された村社会では、
例えば村八分にされた人間などがどうしても発生するのである。
村がいくつかあれば、毎年一定数の人間が共同体から出ていき見知らぬ都市に流入する。
それは、東京や大阪など国内でも同じである。
実家暮らしの子供部屋おじさんの磯部には、いまいちピンとこなかったものの、冒険者ギルドの熊っぽいオヤジにはすぐに理解されたようである。
「おっさん、名前は?」
熊っぽいオヤジが聞いてくる。
「ぼ、僕は、磯部 真一といいます。 よよ、よろしくお願いします。。」
「イソベか、、なんか変わった名前だな。 おれはイシュメル、冒険者ギルドの職員だ。よろしくな。」
熊、ことイシュメルは、にこやかに手を差し出して、磯部と握手を交わす。
「それじゃ、俺は仕事に戻るわ~」
後輩マッチョは、もう用は済んだとその場からてくてく歩いてく。
「す、すいません。。 あ、ありがとうございました。」
磯部は慌てて、お礼を言う。
ひらひらと、手をあげてそれにこたえる後輩マッチョ。
彼にはウエッジという名前があったが、磯部がその名前を知ることがなかった。




